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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

はい、異世界統轄局です

異世界ものを良く読むし、書いているので、こんな職業があってもおかしくないなぁ〜と。

やっぱり問題は、起きる前に解決できたら1番良いと思う!


……連載が滞っているのに、ちょっと脱線したくなったんです。スミマセン。


 『異世界転生』『異世界転移』『異世界召喚』とは、元の世界で一般人だった人が異世界へ訪れることである。一般的に『異世界転生』『異世界転移』の場合、元の世界で病死だったり、トラックに轢かれたりなどの事故死だったり、稀に大往生だったりする。


『異世界召喚』は滅多にないが、だいぶ前の案件で説明すると、瘴気に飲み込まれそうになったある国の王族が自国の危機を救うべく王宮魔術師を総動員で召喚したという事例が残っている。その際は、召喚された人間が瘴気を吸い込み浄化する魔道具を作ったとされ、国の危機は去った。

 国民は召喚された人間に感謝をし、帰還希望の有無を確認したところ、もう社畜に戻りたくないということだったので、そのままその国に留まり色んな魔道具を開発した。その人間が老衰で亡くなった後も発明王の名前は未だに各国に残っている。


 このように異世界人が、元の世界での知識や常識を活用することで、この世界を変えていく。それにより危機を回避できたり、逆に危機に瀕する場合もある。そこで異世界人が、世界の均衡を崩さないため管理、取締をする組織がある。


 それが、異世界統轄局(Another World Control Division)。通称、A.W.C.D。

 

 A.W.C.Dの仕事は多岐に渡る。

・転生者、転移者の存在確認。

(この国の法として、発見次第報告の義務。報告は、本人でも親族、または無関係のない者でも可)


・転生者、転移者の保護、生活支援、仕事の斡旋。

(必要であれば、保護、生活支援、仕事の斡旋をする)


・異世界の技術、文化の研究。

(転生者、転移者の元の世界の技術や文化についての研究をする)


・召喚申請の受付、審査、立会。

(召喚する場合は、申請をし審査を受ける。審査で許可が出なければ召喚を行えない。また許可がおり召喚する場合は、A.W.C.Dの職員の立会が必要となる)



 上記等の活動にて保護され、A.W.C.Dに所属している転生者、転移者もいる。

 A.W.C.Dに所属する場合は、能力検査、座学、護身術、実務研修が必須となる。能力検査では、スキルや魔術の有無、基礎学力検査を行う。座学では、この国における転生者、転移者の立場や法、必要事項を学ぶ。護身術は、希望者に最低限の戦闘訓練を行う。実務研修では、希望する就職先に必要な技能を習得する。またA.W.C.Dとして活動する場合は、元の世界の名前で活動するものとする。


 保護ではなく検挙された場合の転生者、転移者もいる。検挙理由としては……

・転生者、転移者としての自覚があるにも関わらず、報告を怠った場合。

・この世界の法の上での犯罪、または犯罪になると自覚したにも関わらず行動した場合。

・この世界に存在しないアイテムを無申請、および許可なく製造、売買した場合。

 

 上記の事例で検挙された場合、厳正なる審査の上、罪にあったペナルティを科せられる。ペナルティは、厳重注意、罰金、懲役、禁錮、異世界の記憶抹消、そして一番重いものでは存在抹消がある。


 そして、A.W.C.Dは日々活動をしている。

 



***ヒロイン案件***




 プルルルルル、プルルルルル……。


「ーーはい、異世界統轄局 窓口の山口です。転生ですか? 転移ですか?」


 窓口の仕事とは、発明王が作った魔道具フォンでお客様からの話を聞き取り、迅速に判断し各部署への連絡すること。ここにくる話の内容は似たようなものが多く、対応にはマニュアルがある。私もそれに則って、お客様から内容を聞き出し必要事項用紙に記入していく。


「転生ですね……はい、はい。名前が……トルマリン男爵三男の御息女でアリス様で元平民。……なるほど、ピンクの髪の毛で、光属性。この春から、王立学園に通う……と。え? 独り言で『ヒロイン』……あー、確かにあり得ますね。では、後ほど担当の者から連絡致します。では、失礼致します」


 私はお客様との通話を終え、自分の記入した必要事項用紙を確認して魔道具フォンの短縮番号を押すと、2回のコール音で担当部署に繋がった。


《ーーーはい、転生部ゲーム課 大江っす》

「あ、お疲れ。窓口の山口です。『ヒロイン案件』なんだけど、今、誰か空いてる?」

《おー、ぐっさん、お疲れ。今ねー、みんな出払ってんだよねぇ。何? 急ぐ感じ?》

「あー、今春に学園入学の自称ヒロインなんだ。なる早希望かな」

《あー、もしかしてピンク元平民的な?》

「正解! とりあえず誰か相手先に連絡取れない? 詳細はメールしてる」

《ーーん、これか? 光属性のピンク元平民、光属性で自称ヒロイン……。今春は……あー第二王子と側近達とタメか。連絡先は……先代のトルマリン男爵家当主ね。了解、やっとくわ》

「よろー」


 それから一ヶ月後、私直通の魔道具フォンが鳴っている。今回は内線の呼出音なので、他部署から調査報告だろう。今、取り掛かっている業務を一旦中断して、通話ボタンを押す。


「はい、窓口の山口です」

《あー、ぐっさん? お疲れ、大江だけど》

「あ、大江君。お疲れー。この前は、忙しいのにありがとね」

《いいの、いいの。で、この前の自称ヒロインなんだけどさーー》


 大江君からの報告によると、やはり自称ヒロインは転生者だった。

 自称ヒロインの両親は、成人後、平民となったトルマリン男爵三男と平民の女性。先月、事故で二人とも帰らぬ人となった。それで、不憫に思った先代のトルマリン男爵がアリスを引き取った。引き取ってしばらくしてアリスは発熱。二日後解熱したが言動などが変わっていた。そして自分のことをヒロインだと呟いているのを男爵家の侍女が目撃し、先代男爵に報告。先代男爵が連絡をして来た。


 大江君が先代男爵と連絡をとり、アリスの自室に録画機能付き隠しカメラを設置。二日後、カメラを回収して確認したところ、やはり転生者だと確認が取れた。ゲーム課の調査班が過去の事例と比較した結果、乙女ゲーム『セカンディーパラダイス(通称セカパラ)』だと判明。

 セカパラは、ヒロインに対して攻略対象者は、第二王子、宰相の次男、騎士団長の次男、魔術師団長の次男、大商会の次男。ヒロインのライバルは、攻略対象者の婚約者達。ライバルの執拗な嫌がらせにも屈せず、ヒロインは学園に通う。それを見ていた攻略対象者は、婚約者達から守るようにアリスを側に置く。そしてヒロインは攻略対象者と様々なイベントを乗り越えて結ばれる。ちなみに逆ハーレムはない。


《ーーでね、そのアリスって子に、睡眠調査をした結果、逆ハーをやろうとしてたみたいでさー》

「なんて無謀な……」

《でしょう? 一緒にいた調査班の術師も顔顰めてたよ》

「だろうね」


 各部署の調査班には、優秀な魔術師が在籍しており転生者などが睡眠後、術をかけると何を考え今後どう行動したいかが夢となり、それを見ることが出来るらしい。一度、飲み会で普段口下手な魔術師がいきいきと説明してきたけど、難しくてよく覚えてない。私だけじゃなく同僚の女の子達もドン引きしてて、トイレで「ヲタキモ」と言い合った。


「んで、結局その子は?」

《あー、先代男爵から記憶抹消の依頼があったから、その場で前世部分のみ抹消済み》

「記憶抹消って、五年保証だっけ?」

《そうそう。だから、とりあえず学園に行っている間は大丈夫っしょ》


 『記憶抹消』には全抹消と部分抹消がある。部分抹消は、術師が指定した部分だけを抹消出来る。でも、記憶を完全抹消すると人格破壊に繋がる場合があるので、一定時間の抹消になる。その為に、保証期間が設けられており、もしその期間に記憶を思い出したら何度でも抹消を無料でしてもらえる。ちなみに、記憶抹消も睡眠時に行っているので本人の自覚がないまま前世の記憶だけが消えている。


 翌朝、起床したアリスは前世を思い出す前の純粋無垢な子に戻っていたそうだ。安堵して涙を溢した先代男爵夫妻を見て、オロオロしていたアリスはとても可愛いらしく家令や侍女達が微笑んで見ていたそうだ。

 そして、それから二週間後の王立学園の入学式では攻略対象者とのイベントもなく、アリスは下位貴族の友達も出来て毎日楽しそうに学園に行っているそうだ。これで、この一件は解決済み。


「良かった。入学前に解決出来て」

《それな。今回は、先代男爵夫妻や使用人達が協力的だったから。なんでも先代男爵の学生時代に似たような案件があったらしく、まさか自分の孫が!? って焦ったらしいよ》

「あー、目撃経験ありだったんだ。そりゃ、孫がそうなったら焦るよねー」

《なー。ところで、ラノベ課の西川君が調査終えて帰って来たみたいで、飲みに行かないか? って》

「マジで、行く行く。ケンちゃん、今回は長かったねー。『勇者案件』だっけ?」

《そう、それ。転移なのに自称勇者で、冒険者登録もなく至る所で勝手に魔物討伐しちゃってたらしいよ》

「うわー。今の時代、許可なく魔物討伐はダメなのに。しかも自称勇者とかってウケる」

《西川君、すっげーやつれてたよ。色んな所で、頭下げたんだろうな》

「マジかぁ。今日は朝まで、愚痴コースだね」

《ってことで、終業後いつもの所で》

「りょーかーい」


 一般の窓口担当としては、担当部署に引き継いだ段階でその案件についてはノータッチになるが、A.W.C.Dに所属して五年目で窓口業務主任になった私は全ての案件を把握しておかなければならない。

 基本的にメールで報告を受けるが、先程のように同期や仲の良い先輩、後輩からは気分転換がてらに口頭での報告を受ける。ちなみに大江君は、数少ない同期だ。


 報告を改めてメールで確認後、未解決ボックスから先程の案件についての必要事項用紙を探し、『済』印をポンと押す。そして背面にあるキャビネットにある『済ファイル』にファイリングする。

 

 その間も、ずっと魔道具フォンが鳴っている。見回しても、一般の窓口スタッフは既に対応中。はぁーとため息をつき、今日もまた通話ボタンを押す。


「ーーはい、異世界統轄局 窓口の山口です。転生ですか? 転移ですか?」




最後まで、読んで頂きありがとうございます!

また他の案件、他部署について書けたらなぁ〜なんて思ってます。

目指せ、初のシリーズ化!


ここからは、お知らせ⭐︎


*『享年82歳の異世界転生!?〜ハズレ属性でも気にしない、スキルだけで無双します〜』(マッグガーデンより)

書籍:第1巻(重版)

コミックス:第1巻


どちらも好評販売中です!

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