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凍結惑星シェフィル  作者: 彼岸花
第四章 侵略的祖先種
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侵略的祖先種03

 冬が明けてから時間が経ち、トゲトゲボーが森を形成した頃。この星は『危険性』を大きく増す。

 その危険とは、多くの獲物を糧にして増えた捕食者の事である……が、それだけではない。森を形作るトゲトゲボー自体も極めて危険だ。この生物の体表面にある棘は鋭く、柔らかな肌の生物であれば簡単に切り裂いてしまう。惑星シェフィルに生息する生物の場合、柔らかな身体を持つ種の大半は地中生活か(トゲトゲボーの棘と棘の間に身を潜ませられるぐらいの)小型種。大型生物の大部分は丈夫な甲殻や毛皮、耐刺性に優れる表皮で身を覆い、トゲトゲボーから身を守っている。

 ところが人間であるシェフィルは、身体が大きい癖に甲殻を持たず、毛にも覆われてない。皮膚に特殊な性能もなく、地下を動き回る事も不可能。

 こんな状態でトゲトゲボーの中を歩けば、全身が傷だらけとなるだろう。傷の再生には資源とエネルギーが必要であり、例え致命傷には程遠いものであろうとも、積み重なれば命を脅かす。感染症や毒の侵入などのリスクも増えるため、可能ならば小さくとも怪我は避けたい。

 しかし今や大地の隅々までトゲトゲボーだらけ。トゲトゲボー同士の間隔は精々十数センチしかなく、人間の身体ではすり抜ける事など不可能。回避どころか、触れるのを嫌がっては家から出る事も儘ならない。

 よって取るべき行動は、触れても怪我を少なくするための対策だ。着込んでいる毛皮の服もそうした対策の一つ。ただ、これだけでは不十分でもある。もう一つ、追加の対策はしておきたい。


「よいしょっと。ほりほりー」


 狩りに向かうと決心したシェフィルは、まずは住処である洞窟入口付近の地面を掘り始める。

 掘ればこの星で最も繁栄した種族・ウゾウゾが次々と出てくる。彼等なりに一生懸命逃げているが、シェフィルから見ればあまりに遅い動き。手を伸ばせば簡単に捕まえられる。

 これを今回の『食事』にしてしまうのも一つの方法だろう。トゲトゲボーに触れなければ、怪我対策云々は必要ないのだから。だが今の時期のウゾウゾは非常に栄養分が少ない。天敵となる生物が増加した事に対応し、活発な繁殖を行っている(栄養消費をしている)からだ。身は痩せ衰え極めており、食べても腹が重くなるだけでカロリーにはならない。焼いて食べれば少しは吸収効率が良くなるかも知れないが、劇的な改善は期待しない方が良いだろう。

 おまけにトゲトゲボーが繁茂した後のウゾウゾは、毒性を強めている。ウゾウゾの餌は主に土壌有機物であるが、その有機物とは具体的に言えば他生物の残骸や糞の事。トゲトゲボーが大繁殖すれば、その分トゲトゲボーの残骸や、トゲトゲボーを食べた生物の糞も増える。

 これらにはトゲトゲボーに含まれている毒成分が、僅かだが残っている。ウゾウゾは積極的に毒を溜め込む性質などは有していないが、分解前の毒や、分解したものの未排泄の弱毒性成分は液状体組織に残留している。

 一匹二匹食べたところで、腹を壊すような事はない。だが、ずっと食べ続けると毒素が蓄積し、臓器も同じ場所だけがダメージを受け続けて、やがて体調を崩す。もっと色々な種類の獲物を食べ、毒素と内臓ダメージの分散をしておかねばならない。

 よって今回、ウゾウゾは横に捨てていく。探すのは他の生き物。

 無数の白いウゾウゾ達の中に紛れるように存在している、赤いウゾウゾだ。体長は十二センチと一般的なウゾウゾよりも小さく、肉質は柔らかを通り越してゼリー質。動きはウゾウゾよりも更に鈍い。


「よっと、アカウゾを捕まえましたー」


 シェフィルは自身が『アカウゾ』と名付けたその生物を、片手で掴んで捕まえた。


「アカウゾ? ……赤いウゾウゾにしか見えないけど」


 傍でその一連の流れを見ていたアイシャから、至極尤もな質問が飛んでくる。「そうですよ?」とシェフィルが答えた通り、アカウゾは分類上ウゾウゾと同じグループに位置する生物だ。母曰く、『単肉目ウゾウゾ科』の一種らしい。

 ウゾウゾと同じように土中の有機物や、降り積もった雪(固体となった二酸化炭素や窒素など)を食べて生きている。食性がウゾウゾと被っているが、彼等の方がウゾウゾよりも繁殖力と身体能力は弱い。

 生き方が同じ場合、より多くの子孫を残せる個体群……適応した種だけが生き残る。何故なら自然界において資源は有限であり、生きていける生物の総数は決まっているため。一つの種が数を増やせば、その分だけ他の種の個体数が減るのは必然である。そして増え続ければ、やがて一つの種が資源を独占し、他の種の個体数はゼロ――――絶滅となる。

 これが生存競争の本質だ。

 では何故繁殖力も身体能力も低いアカウゾは、ウゾウゾとの生存競争に負けず今も生き残っているのか。その理由は、身体の内側を満たす液状体組織にある。

 アカウゾの体組織には、特殊な毒素が含まれているのだ。この毒は致死性という意味では殆どないのだが、代わりにごく少量でも全身を麻痺させる性質を持つ。一口でも食べればたちまち動けない状態となり、恐ろしい天敵が近付いても逃げる事さえ儘ならない。直接的な死は招かずとも、間接的には確実な死を呼ぶ恐るべき毒だ。

 よって大抵の捕食者はアカウゾを食べたがらない。天敵からの捕食が避けられるという事は、言い換えれば天敵だらけの場所では有利に生きていけるという事。このためアカウゾ達はトゲトゲボーが繁殖し、捕食者となる生物が多数現れるこの時期に繁栄する。ウゾウゾとの競争でも有利になり、餌の豊富な地表面付近で優位に生きていける。

 対してウゾウゾはより天敵が比較的少ない地下深くへと潜り、アカウゾとは棲み分けをする……それでも個体数が膨大なので、地表付近も相変わらずウゾウゾだらけではあるが。そして冬が迫って天敵の数が減ってくると、アカウゾは一足先に地下深くへと潜り、ウゾウゾは冬が訪れるギリギリまで地表面で繁殖を行う。両者の繁栄は、季節と共に移り変わる。

 アカウゾはその毒性により生き残った種族だ。シェフィルにも食べる事は出来ない。選別する手間が掛かる点も考慮すれば、厄介で面倒な奴と言うべきか。

 しかし完全な『邪魔者』とも言い切れない。食べる以外の用途がアカウゾにはあるからだ。


「ていっ」


 それは握り潰し、絞り出した体液を身体に塗る事。シェフィルは捕まえたアカウゾを片手で念入りに握り潰して、真っ赤な液状体組織を絞り出す。

 次いで、このアカウゾの体組織を自分の身体に塗りたくる。

 アカウゾの体組織は有毒であるが、これは経口摂取した場合に限る。肌に塗る分には無害で、ちょっとピリピリする以外身体に悪影響が生じる事はない。

 そして得られる利点は二つある。

 一つは虫除け。吸血性小型種()にもアカウゾの体液は毒性を発揮するため、塗っておけば虫達を遠ざける事が可能だ。吸血されるのは血の損失という意味でも厄介だが、病原体の媒介という命に関わる危機も運んでくる。これを避けられるのは、肌のピリピリ感を差し引いても十分メリットが大きい。

 そしてもう一つの利点は潤滑油。体液を身体に塗っておけば、トゲトゲボーの棘が触れても、アカウゾの粘液により滑り傷が付かないのだ。流石に強く肌を押し当てたり、走って勢いよく掠めれば傷も出来るが、普通に歩く分には怪我をしなくて済む。


「はい、アイシャ。こいつの汁を身体に塗ればトゲトゲボーの棘で怪我し難くなりますよ。ただ、勢いがあると流石に防ぎ切れないので、そこは承知してくださいね」


 勿論自分だけがこの守りを纏うつもりなんてない。シェフィルは注意事項を伝えつつ、まだ潰していないアカウゾをアイシャに差し出す。

 アイシャの反応は、思いっきり顔を引き攣らせるというものだった。


「……あー、うん。そうなのね。うん、信じるわよ。長年この星で生きてきた人の知恵は尊重しないとね。でも、食べるなら兎も角潰したものを身体に塗るのは些か非文明的というか」


「? これを塗らないでトゲトゲボーの中を進んだら怪我をしますよ? ワガママ言う暇があるならさっさと塗ってください」


「待って待ってせめて覚悟する時間をごわあぁあぁあああ!?」


 躊躇う、と言うより嫌がるアイシャを捕まえ、シェフィルは潰したアカウゾをアイシャの肌に塗っていく。無理矢理やるのはシェフィルとしても気が進まないが、やらねばアイシャの身体が傷だらけになってしまう。それは、シェフィルとしては嫌な事だった。

 アカウゾの体組織が持つ『刺傷耐性』は、薄く塗っても十分な効果が得られる。それでいてアカウゾの液状体組織はかなり粘性が低く、塗り拡げるのにも大した苦労は必要ない。また目的は怪我の防止なので、トゲトゲボーが触れる部分……服から出ている顔や手足にだけ塗れば十分。一体潰すだけで量は足りる。

 抵抗もあって少し時間は掛かったが、五分ほどでアイシャの身体をアカウゾ塗れにする事が出来た。ふんすー、と自慢気な鼻息を吐くシェフィルの前で、アイシャは項垂れる。


「うう……原始生活でこんな辱めを受けるなんて……」


「はずかしめ、ってなんです? そんなに落ち込む事ですか?」


「落ち込むわよ! 他人に、こう、ぬるぬるしたものを手足どころか顔にも塗られるとかどんな羞恥プ……だし! というかこんなの塗らなくても、あのトゲトゲボーを切り倒しながら進めば良いでしょ!」


 ギャーギャーと騒ぐアイシャの怒りの矛先が、大地を埋め尽くすトゲトゲボーに向かう。

 確かに、一理ある話にも聞こえる。

 トゲトゲボーは棘と毒があるため、食べる事も出来ない生物だ。アカウゾと違って、有用な利用手段も特にない。だったら容赦なく切り倒し、安全な領域を作るというのは一つの手だろう。育ちきったトゲトゲボーは高さニメートルを超え、こうなるとシェフィルの力でも折るのは一苦労だが……やってやれない事はない。折るのが面倒でも、根本から踏み倒すやり方を使えば、棘に刺されながら進むよりは安全だろう。

 それぐらいはシェフィルも分かっている。

 だがシェフィルはこの方法を選ばない。何故ならこのやり方は、短期的には安全を確保出来ても、長期的にはあまり好ましくないからである。


「確かに倒せますけど、オススメはしません。物凄く疲れるから苦労に見合いませんし、何より私達の安全が脅かされます」


「安全は現在進行系で脅かされてるでしょ! 乙女の柔肌が傷付くのよ!」


「別に肌が傷付くぐらい、良くはないですけど、大した問題じゃないでしょう。アレと比べれば」


 シェフィルはそう言って外を指差す。アイシャはシェフィルの指先を追うように視線を動かし、直後、まるで凍り付いたように固まった。

 二人の視線が向いた先には、一体の『イモムシ』がいる。

 イモムシと称したが、全体的なフォルムがそう見えるというだけの事。その身体は分厚く頑強な甲殻に覆われている。甲殻表面には産毛のように細く、尚且つ針の如く鋭い白い体毛がびっしりと生えており、迂闊に触ればそれだけで肌は傷だらけになるたろう。体節ごとに甲殻は分かれているため、多少の制限はあるとしても、柔軟に身体を動かす事も可能だ。

 脚は身体の下側から六本生えているが、前脚二本が極端に発達。体長の半分近い長さを持つ。この長い前脚の先には鋭い爪が四本生えているが、いずれも人間の指のように繊細かつ俊敏に動く。獲物を切り裂き、爪で突き刺して掴むための構造をしていた。

 頭部も発達しており、口器は大きくて巨大な、左右に開く四つの顎で出来ている。目は巨大な複眼が左右に一つずつあり、無機質な『瞳』で辺りを見ていた。複眼の近くには幅広い触角が二本あり、これもまた周囲を探るように忙しなく動く。

 外観からして、如何にも凶悪な生物。実際この生き物は肉食性で、自分よりも小さな生き物であれば大抵なんでも喰らう生態を持つ。

 そしてその体長は一・三メートルほど。シェフィルよりも小さいが……この時期の奴等はまだ()()()()。これからどんどん大きくなる事を、シェフィルは知っていた。


「アイツはムシャシャと言います。冬の間は卵で休眠していて、春になってしばらく経ったこの時期に孵化します」


「ふ、孵化って、つまりアレって……」


「はい。誕生したばかりの、文字通り赤ん坊です。まぁ、誕生直後の幼体があそこまで大きいのは今の時期だけで、他の時期に生む卵はもっと小さいのですが」


 ムシャシャは冬が迫ると、真っ先に姿を消す生物種の筆頭だ。獰猛な捕食者であるこの一族は、生きていくために大量の獲物を必要とする。獲物が姿を消す前に、自分達の方が先に休眠する事で飢えを凌ぐという戦略だ。

 冬越し時のやり方は卵の状態で休眠するというもの。成体は冬越しをせず、全てのエネルギーを卵に注いで死ぬ。春になったばかりの頃は成体を養えるほど獲物がいないので、次世代の卵に全エネルギーを費やした方が合理的である。

 冬越しをする卵は、普段の三倍近い大きさを誇る。過酷な冬を越すには体力が必要であり、その身体を作るためにたくさんの栄養が不可欠だからだ。また冬越し後の第一世代は、縄張りの確保や餌場探しなどやる事が多い。安定した狩りが出来るまでの蓄えも必要なため、身体が大きい方が生存には好都合なのである。

 対してもっと後の、獲物が十分に増えてきた時期にはどんどん子孫を残す方が好都合。このため小さな(というよりこちらが通常の大きさの)卵をたくさん生む。

 このため生まれたての幼体がこれほど大きいのは今の時期だけだが……成体の大きさは、春を乗り越えた個体も、冬の訪れで死ぬ個体も大差ない。


「成体の大きさは、大体四メートルになります。もしも襲われたら私では一溜まりもありません」


 体長一・五メートル程度しかない、ちっぽけな自分達ではどうにもならない強敵だ。

 アイシャもムシャムシャが勝ち目のない、自分達の天敵となり得る存在だというのは理解したようで、顔を青くして震える。


「そ、そんなヤバい奴、ど、どうしたら……い、今のうちに退治するとか……」


「無理です。連中、生まれた瞬間からふつーに強いので、あの大きさの幼虫相手でも戦うべきではありません。ですから基本、隠れるのが一番です」


「隠れる……あっ」


 ここでようやくアイシャも、シェフィルの言いたい事を理解したのか。ハッとしたように目を見開き、真剣に頷く。

 成体となったムシャシャとまともに戦うのは自殺行為である。幼体相手でも、正直分が悪い。

 しかしそもそも、敵だからといって倒さねばならない訳でもない。むしろ野生の世界において、勝てない敵から逃げるのは当然の行動であり、一番『楽』なやり方でもある。要は危険から逃れられれば良いのだ。

 トゲトゲボーは種にもよるが、最大で二〜三メートルほどの大きさになる。この中にいれば、それだけでシェフィル達は身を隠す事が可能だ。ムシャシャは発達した複眼からも分かるように、主に視力で獲物を探している。このため何かに隠れるというのは極めて効果的な防御策となる。

 脅威となる存在はムシャシャだけではない。獲物となる生き物達が増えた事で、様々な捕食者が本格的に活動を始めた。中にはムシャシャさえ好んで食べるような生物もいる。そんな危険生物と戦うなど自殺行為でしかないが、トゲトゲボーがなければ隠れ場所がなく、勝ち目のない戦いに挑まなければならない。

 長期的に見れば、トゲトゲボーを押し倒したり、伐採したりするのは自殺行為と言えよう。


「あと短期的に見ても、トゲトゲボーは生えている方が良いですよ。基本的にこの時期の生き物はトゲトゲボーを餌とか住処にしてますから」


「……あ、そっか。トゲトゲボーを切ったら住処も餌もなくなって、生き物がいなくなっちゃうのか。で、獲物がいる場所に踏み込まないといけないから」


「結局トゲトゲボーの中に入るしかありませんから、切り倒しても意味ないんですよ」


 シェフィルは『自然破壊』に罪悪感などない。周りの『不適応』な環境を、自分にとって住心地の良いものに作り変えるのは生存戦略の一つに過ぎないのだから。

 しかし刹那的な、それも感情的な安全を求めて後々損をするのは生存上不適応である。それなりに長い目で見れば一時の、肌が傷付く程度の僅かな危険は許容した方が得と言えよう。

 そしてこの許容すべき僅かな危険をどうにかするのが、人間が持つ知恵と技術の強みである。アカウゾの体組織を塗りたくる事で、トゲトゲボーのリスクを抑えつつ安全と食料のメリットを頂くのだ。


「やるべき事が分かったところで、狩りに出発するとしましょうか」


「えっ!? で、でもまだあの大きい虫が……」


「あの大きさのムシャシャなら私達を襲う事なんて滅多にありませんよ。確かに今の時点であっちの方が私よりも強いですけど、それでも多分勝率は六割弱です。三割以上の確率で死ぬのに得られるものが一回分の食事では、割に合いませんからね」


 合理的に思考するのは、シェフィルだけではない。

 ムシャシャは貪欲で凶暴な捕食者であるが、あくまでもその振る舞いがムシャムシャという種にとって『有利』だからしているのだ。たった一回の食事のために死ぬかも知れない死闘をするより、一方的に嬲り殺せる獲物を襲う方が合理的である。余程空腹なら兎も角、余裕があるなら確実に無視してくれる。

 この星に暮らすモノは、どんな生き物であっても合理的。そうでなければ生き残れないが故に。

 だからこそ正しい対応をすれば……必ずとは言えなくとも、案外なんとでも出来るものだ。


「さぁ、行きましょう!」


「わ、わわぁーっ!?」


 力強く引っ張り、躊躇うアイシャと共にシェフィルは危険な外へ意気揚々と跳び出す。日々の糧を得てこれからも生きるために。

 ――――シェフィルの決断は、決して誤りではない。彼女が知る限りの知識において、今は外を出歩いて良い状況だった。

 しかしシェフィルは世界の全てを知らない。当然の事であり、致し方ない事でもあるが……もしも『全て』を知っていたなら決して外には出なかっただろう。

 今この地にはシェフィルが知らない、そして生態系の誰にも制御出来ない『異物』が紛れ込んでいるのだから。

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