絶対凍結気候11
身体に食い込む、強烈な打撃。
先手を取られたと理解したシェフィルは、今更守りを固めようとは思わない。既に攻撃は受けているのだ。ならばここですべきは反撃の一手のみ。
シェフィルは素早く手を伸ばし、相手の身体を掴む。ごわごわとした毛皮に覆われた身体はとても掴みやすい。
お陰で、渾身の力でぶん投げる事が出来た。
「……!」
『そいつ』はごろごろと雪上を転がり、シェフィルから離れていく。シェフィルはその間に体勢を立て直し、攻撃してきた生物と向き合う。
「ぐぅ……やっぱりいましたか……警戒しても気付けないのは辛いですねぇ」
ついでにぼやきもした。
惑星シェフィルのエネルギー吸収の影響で周辺に電磁波がなく、投げた時の手応えからして恐らく五メートルほど離れた相手の姿は殆ど見えない。しかしシェフィルは、その生物がどんな姿をしているか知っている。
成体の体長は二〜三メートル。頭と胴体と尻尾はほぼ同じ太さ(直径五十〜六十五センチほど)をしていて、長くて寸胴な体躯をしている。先程掴んだ際の感覚からして、シェフィルの目の前にいるのはざっと二メートルの小柄な成体か。
体表面は白くてごわごわした毛に覆われている。頭の先から尾の末端まで、隙間なくびっしりと。脚は六本生えているが、頭の先から三十〜六十センチの、かなり前方寄りに纏まった生え方をしている。シェフィルは知らない事であるが、アイシャであれば「クマみたいな毛に覆われた大きいガの幼虫」とこの生物の形態を例えたであろう。
しかし顔付きはイモムシと異なる。口の構造は筒状であり、内側にびしりと細かな歯が生えていた。齧り付いた肉を削り取るための構造をしている。頭には目玉も複眼もなく、代わりとばかりに長さ二十センチ超えの幅広い触角が四本生え、忙しなく蠢く。
「モージャ……ほんと、会いたくはなかったのですがね」
暗闇の中に潜む存在に対し、自身が与えた名をシェフィルは独りごちる。
モージャ。体表面を覆う毛がもしゃもしゃしている事と、肉食故の凶暴性から濁音を付けて名付けた……シェフィルのネーミングセンスは大体こんなものだ。あと、どうせ言葉にするなら少し可愛い響きが良いという好みも反映されている。
そんな可愛らしい名前(シェフィル的感想)であるが、生態に可愛らしさはない。
モージャは所謂『死肉食生物』である。厳密には死んでいようがいまいが、動けない相手なら大体なんでも襲う。難なら空腹の時には動いていても襲う。極めて攻撃的な性質を持ち合わせていた。
更に恐るべきはその繁殖方法。
彼等はある程度大きな生物の身体に、直に卵を産み付ける。生まれた幼体はその生物の身体を貪り食いながら成長し、五十センチほどまで育つと皮膚を食い破って出てくるのだ。出てきた幼体はその場で蛹になると、すぐに成体へと羽化。宿主の身体が残っていれば食べ、そうでなければ獲物を求めて探し回る。
そして対象が死んでいない、ただの休眠状態でも彼等はお構いなしに卵を産む。というより嵐などで地上に出てきた生物は、大半がただの休眠状態だ。シェフィルが食べたウゾウゾ達も、冬が終われば普通に活動を再開しただろう。
つまり、基本的に幼体は生きた相手の中身を喰らうのだ。ちなみに脱出後食べていた相手が覚醒・反撃してくる事を防ぐため、中枢神経周辺が無事なら脱出前に噛み荒らしていく。
……野生生物に残酷だのなんだのと批難したところで、なんの意味もない。生き残り、繁栄する事が全て。モージャ達の『独特』な繁殖方法は、彼等の種(厳密には『自分』の遺伝子)が栄える上で適したやり方というだけの事。この星で長く暮らしてきたシェフィルもそれは分かっていて、故にモージャの繁殖方法にあれこれ言うつもりはない。
それでもモージャと出会いたくなかった理由は、二つ。
一つはシェフィルの身体の大きさは、モージャが卵を産むには十分な大きさである事。つまり余程ご機嫌が良くない限り、モージャは子孫を残すためシェフィルに襲い掛かってくる可能性が高い。
もう一つの理由は、冬の間しか地上に出てこないコイツらと、よりにもよって冬に戦うのは自殺行為だからだ。
「(出来れば戦いたくはないのですが……)」
仮に今シェフィルを襲ったモージャがこれからダラダラに産卵予定、或いは食事をするつもりであるなら、対処は難しくない。一時的にでも、ダラダラからちょっと離れるだけで良い。
モージャは凶暴な生物だが、残虐ではなく、そして極めて合理的だ。目の前に動かないダラダラがある時に、動き回るシェフィルを襲う意味はない。むしろ抵抗するシェフィルとあれこれやっているうちに、こっそりやってきた同種に大きな獲物を奪われてしまう可能性もある。ダラダラは十分大きいのだから、あれもこれもと欲を出さない方が『得』だ。
よって先の攻撃は獲物を奪おうとする不埒者への威嚇であり、こちらから手を引けば、向こうも追撃はしない筈。それどころか遠目に眺めてチャンスを窺えば、おこぼれをもらえる可能性もゼロではない。
しかし、もしもこのモージャがダラダラへの産卵を既に終えていたなら……このダラダラは最早食べ物ではない。モージャは次の産卵のための獲物を求めるだろう。より多くの子孫を残すため、積極的に狩りをするのがモージャの本能だ。その時は、手頃な大きさをしているシェフィルに襲い掛かってくるだろう。
果たしてこのモージャはどちらか? 見極めようとするシェフィルであるが、直感的な思考は一つの答えを出している。
シェフィルはここまでの道のりで、たくさん食べ物を得た。それは『幸運』だ。
なら、そろそろ『不幸』もあるだろう。
「――――ッ!」
極めて非合理的な思考だったが、モージャの静かな咆哮が、その正しさを物語っていた。
「くっ!」
ぞわりと身体に走る悪寒。反射的にシェフィルは両腕を胸の前で構える。
直後、殴られたような衝撃がシェフィルの腕に走った。
モージャの攻撃だ。暗闇の中一気にこちらの間合いまで迫るや、長い身体を力いっぱい振るい、鈍器のように叩き付けてきたのである。
モージャの身体は決して硬いものではなく、むしろごわごわの毛がクッションの役割を果たすため、打撃に向いた肉体という訳ではない。しかし太く大きい身体は重い。体長二メートルの個体でも二百五十キロはあるだろう。これを時速数百キロの速さで振り回すのだから、相応に重たい一撃だ。
シェフィルの身体も衝撃で大きく後退。体勢も僅かに崩れて仰け反る。
「ッ!」
その隙を逃さず、モージャは頭から突っ込んできた。
シェフィルの構えていた腕にモージャの頭が激突。同時に、モージャは筒のような口を大きく開き、シェフィルの腕を噛む。
ぞりぞりと肉を抉られる。悪意に満ちた攻撃にも思えるが、これはモージャの口器がそういう構造というだけ。何より抉られた肉は腕の表面部分のみと浅い。筒のような作りの口では深く傷を付けたり、ましてや食い千切ったりは出来ない。
そしてこの程度の痛みに怯むほど、シェフィルは軟ではない。骨をへし折られる事や、腸が外に出るような怪我に比べればこんなのは掠り傷のようなもの。
むしろ腕を噛んだ状態は、暗くて相手の姿が見難い今はありがたいぐらいだ。慎重に狙いを付ける必要がない。
渾身の力を込めて蹴りを放つシェフィル。その一撃はモージャの胴体を打つ。一発目でモージャは口を離し、立て続けに放った二発目の蹴りでモージャの身体は大きく仰け反った。
「――!」
されどモージャもただではやられず。仰け反った反動で再び身体を振るい、シェフィルに打撃を与えようとしてくる。
だが、この攻撃は読めている。
シェフィルは敢えて身体を前に傾け、モージャが放った打撃を正面から受けた。重たい一撃ではあるが、しかし『強烈』な攻撃ではない。しっかりと踏ん張れば、モージャの打撃を受け止める事は可能だ。
衝突により運動エネルギーがゼロとなったモージャの下半身は、シェフィルの前で無防備に静止している。引っ込められる前にシェフィルはこれを両腕で掴み、脇に抱えて固定。身体をぐるんと回し、遠くに放り投げる!
空中に浮かんだモージャは、体勢を立て直せずに墜落。ごろごろと転がり、数メートル離れた位置でようやく止まった。やはり姿は殆ど見えないが、微かにだがびりびりと身体に響く『咆哮』をシェフィルは感じ取る。
電磁波がほぼ吸い尽くされている今の惑星シェフィルで、ここまで届く声を発せられる。それはモージャが元気いっぱいで、吸い尽くせないぐらい大きな咆哮を上げる力がある事を示していた。まだまだ元気な訳だが、ふっ飛ばされた状態では負け惜しみのようにも聞こえる。
「(やはり、強くはないですね。普段なら問題なく勝てる相手です)」
幾度となく交わした攻防で、シェフィルは相手の強さを確信。『勝機』はあると判断する。
そう、モージャは大して強くない。何しろイモムシ的な体躯なので、激しく動き回るのは不得意なのだ。おまけに口は深く噛めない構造であるし、六本の足は小さくて殴る蹴るも出来ない代物。体毛でごわごわの身体は折角繰り出した打撃の衝撃を和らげてしまうため、全体重を乗せた突進を食らわせても必殺の一撃となり難い。
こんな身体で誰彼構わず喧嘩を売れば、あっという間に殺されてしまうだろう。実際凶暴で好戦的なのは冬の間だけ。冬以外の時期は地下深くに潜っており、万一天敵に追われたなどの理由で地上に出てしまったら、大慌てで地下に逃げ込む。彼等自身、冬以外の自分達が如何にへなちょこであるかを本能的に自覚しているのだ。
シェフィルも冬以外の時期にモージャと出会い、戦い、仕留めた経験はある。そして冬だからといって、モージャの身体が強くなる訳ではない。単に冬ならほぼ全ての生物が休眠中か凍結しているので、誰にケンカを売っても反撃される事がないから強気なだけ。だから単純な身体能力だけで言えば、今でもシェフィルの方に分があった。
それでも、シェフィルは今の状況が極めて不味いと思う。
「(私はあと、どれだけ戦えますかね……五分か、十分か)」
まず、身体の中のエネルギーが足りていない。落ちていた生き物達を拾い食いして多少回復しているが、未だ満タンには程遠い状況だ。活動可能なぐらい回復したからと、アイシャのための食料探しに行動を切り替えたのが裏目に出た。
ただ生きているだけでも長くは持たないのに、戦闘という激しい動きをすれば更に消費が激しくなる。戦闘可能な時間はそう長くない。
だというのに、モージャは防御力に優れる生物だ。ごわごわの体毛が和らげるものは、自身が繰り出した打撃だけではない。敵からの攻撃も緩和する効果を持つ。しかも皮膚の下には分厚い脂肪があり、これもまた打撃の衝撃を和らげてしまう。シェフィルは何度も蹴りを入れたが、モージャには殆どダメージとなっていないだろう。
更にモージャの身体は比較的単純な作りをしている。発達した筋肉や硬質化した表皮もない。だからこそ身体能力は高くないが、それは細胞一つ当たりのコストが極めて低いのと同義。このためモージャは非常に優秀な再生能力を持つ。また運動や情報処理を担う中枢神経も未発達なので、前に戦ったガルルと違い、中枢神経に打撃を与えても殆ど怯む事はない。骨もないため、骨折させて動きを鈍らせる戦術も不可能だ。
兎にも角にもしぶといのがモージャの強み。身体のエネルギーが残り少なく、短期決戦が好ましい時には最悪の相手と言えよう。
そしてシェフィルが置かれている、もう一つの好ましくない状況は――――冬の環境だ。
「(それに……ああクソッ! 見失いましたか! ほんと見え辛いですね!)」
シェフィルはモージャを見失った。とはいえそれは、モージャが特別な力を使ったからではない。
冬の特徴であるエネルギー吸収により、モージャが放つ電磁波の殆どが失われたからだ。全くシェフィルに届いていない訳ではないが、『ノイズ』程度の弱さでは正確な観測は難しい。力強く発した咆哮は聞こえるが、モージャも馬鹿ではないので、動き回りながら鳴いて居場所を教えてくれる事もない。
確かに、シェフィルはこの気候の中でダラダラを見付けた。しかしそれが可能だったのは、ダラダラが大きくて、力の強い生物だったからだ。死骸になろうとも失わない、巨大な存在感あっての話である。
モージャは身体能力だけで言えば割としょうもない生物。そんな生命体が発する力を、活発に動き回っているとしても濃密な暗闇の中で感じ取れるのか?
否だ。モージャ自身、それを強味として本能的に理解している。
「――――ッ!」
故に側面からこっそり突撃してきたモージャに、シェフィルは直前まで気付かない。
「ごぁっ!? ぐ、ぬぅっ!」
防御も出来ず、脇腹にモージャの頭突きを受けてしまう。どうにか踏ん張ろうとするが……ここでも冬の環境がシェフィルを苦しめる。
冬の嵐により、地面が脆くなっているのだ。
場所によっては、砂でも踏んでいるのかと思うほど柔らかい。これではいくら踏ん張っても力が入らず、打撃で崩れた体勢を立て直すのは困難。深く足を突き立て、踏み締める面積を広げねば衝撃を受け止めきれない。
かといって全てが砂のように柔らかい訳ではない。砂のつもりで踏んだら硬い地面という事もある。これは強く踏むと反動があって却って体勢が崩れるので、静かにどっしり構える必要がある。砂とは真逆のやり方だ。無論、この中間ぐらいの硬さという事も十分あり得る。
的確かつ素早い判断を求められ、失敗すれば今のシェフィルのように軽い打撃でも突き飛ばされてしまう。
しかしモージャは違う。
素早く動き回るのに向いていない、ずんぐりとしたイモムシ体型は、不安定な大地の上では抜群の安定性を発揮する。地面が砂だろうが岩盤だろうが関係ない。シェフィルに頭突きをお見舞いし、その反動があったにも拘らずモージャは未だ大地をしかと踏み締めていた。
そして体勢が保てているなら、次の攻撃を繰り出すのは訳ない。
「ッ!」
転んだ体勢のシェフィルに向けて、モージャは自らの下半身を振るう。
これで方角や距離感が出鱈目ならば、シェフィルにとっては有り難い事だが……モージャはそのようなミスを犯さない。何故ならモージャには、電磁波が届かない冬の中でもシェフィルの姿が見えているのだから。
その秘密は全身を覆う体毛。モージャはこの体毛に触れているもの、主に地面の『物理的振動』を捉える事で周囲の情報を感知している。大きく発達した四つの触角も、振動を検出するのに特化したものだ。
平時であれば、ハッキリ言って優秀とは言い難い感覚器である。例えばシェフィル達が感知している電磁波は、光速である秒速三十万キロで伝わるため、至近距離であればほぼリアルタイムの情報と言えるだろう。また電磁波は空間自体に沿って飛ぶため、真空中でも地中でも問題なく伝達していき、何処でも検知可能である。
対してモージャが感知している振動は、まず遅い。精々秒速数百メートルと、電磁波の百万分の一にも満たない速さだ。密着するほどの超至近距離なら問題ないが、数メートルも離れると『遅延』が生じ、情報の正確性が失われていく。また物質がないと伝達しないため、真空中では検知出来ない弱点もある。あらゆる元素が凍り付いている、惑星シェフィルの地表面では著しく情報量が制限されるのだ。
ここまで得られる情報の質と量に差があっては、まともな戦いにならない。冬以外の時期にモージャが地中に潜んでいるのも、少しでも振動感知が活かせる(全方位から感知出来る)環境にいるため。それでも電磁波を感知してくる生物に襲われたら、反応の遅さ、精度の不正確さから、モージャに勝ち目はないだろう。
だが、冬ならば話は違う。
電磁波が全く飛ばない暗闇の世界でも、振動は地面などの固体を通じて比較的遠くまで伝わる。大きな触角は移動で舞い上がった微かな雪などを検知し、正確に相手の居場所を読み解く。秒速数百メートルという伝達速度の遅さも、電磁波という競争相手がいなければ十分速い。電磁波に頼る生物達が盲目になる中、モージャだけが一方的に相手を把握出来る。
見えないシェフィルに、見えているモージャの攻撃は避けられない。
「がっ!?」
振るわれたモージャの胴体を頭に受け、吹き飛ばされるシェフィル。転がりながらなんとか立ち上がろうとするが、一回目は失敗してまた転倒してしまう。
エネルギー不足で手足に力が入らない。二回目の踏ん張りでどうにか止まれたものの、最後まで力が持たず。シェフィルは一瞬、力尽きるように倒れ伏してしまう。
「は、はあっ! はぁ、ぐっ……!」
すぐに起き上がったものの、息が切れる。真空であるこの星に適応しているシェフィルにとって、呼吸行為そのものに意味はない。しかし大気のある環境で進化してきた人間の本能として、疲労が蓄積した時は息を吸いたくなる。
「……………」
対するモージャは身を揺らす事さえしない。シェフィルの位置をあらゆる振動から把握するだけで、焦りを見せる事もしない。「とことんやろうじゃないか」と言わんばかりに。
これもまたモージャの強み。モージャは、冬の間は疲れを知らない。
モージャ達も冬のエネルギー吸収を受け、急激に体温を低下させている。体温低下に対抗するため膨大な熱を発生させ、その分エネルギーを消費している事もシェフィル達と変わりない。では何が違うかと言えば、蓄えの量が違う。
モージャは冬以外の季節の間、ずっとエネルギーを溜め続けているのだ。人間の暦に換算すれば数百から一千日もの間、身体が成熟しても一切繁殖を行わず、延々と冬に備える。
そして冬になったら、貯め続けた全エネルギーを使う。数百日を費やして蓄積したエネルギーは膨大で、ちょっとやそっとの事では使い切れない。冬の間休みなしに暴れ続けても、モージャは問題なく生きていける。
身体能力、身体の構造、用いる感覚器――――モージャの肉体を形作る要素は、平時であれば彼等がへなちょこな原因である。されど冬であれば、その全てが強さに変わる。
冬のモージャは『無敵』だ。真正面はおろか、策を弄したところで勝てるような相手ではない。
「(さぁ、どうしましょうかねぇ……)」
それをシェフィルは知っている。知っているが、退く気はない。
ここで退いたら、アイシャが死ぬ。
ダラダラの死体なんて大物、近くにもう一体転がっているとは到底思えない。仮にいたとしても、また卵を産み終えたモージャがいるかも知れない。逃げた先に希望は、恐らくないのだ。
アイシャを助けるためには、ここでダラダラの肉を持ち帰らなければならない。どれだけ危険だろうと、他に手がない以上やるしかない。
アイシャを死なせたくない。その一心だけでシェフィルはこの場に踏み止まり、モージャと向き合う。
逃げない不合理な獲物を怪訝に思う事もなく、モージャは再びシェフィルに襲い掛かってきた。