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8 クリスのひとりごと①

 七森さん、遅いなー。


 きっと1人で寂しく帰るに違いないから、校門で待っているんだけど中々見つからない。


 せっかく楽しくアニメ談義をできる人が見つかったのにな。今の小学生と話してみたけど、全然何を話しているのかわからない。コードギアスもデスノートも涼宮ハルヒも知らないってどういうこと? 一体どんな教育を受けているのだろうか。親の顔が見てみたい。


 でも、勉強は面白い。特にプログラミング。コンピューターに命令を出して実行させるのは面白い。こんな田舎でプログラミングなんてものがあるのも驚いたけど。極めればシュタゲのダルとか神メモのアリスみたいになれるかもって思うとワクワクする。


 私は暇すぎてランドセルの中身を物色していると、気になるものがあった。ノートだ。授業で使った覚えはないけど、何のノートだろうか。


 ページを開くと日付ごとに文章が綴られていることから日記だとわかった。


 あの子が何を書いているのか気になる。私みたいに特技妄想趣味妄想な女の子にはなってしまうのだろうか。嬉しいような恥ずかしいような気持ちで文字を追う。




4月1日

 新学期が始まった。2年ごとにクラス替えがあるから4年生の私にはない。去年は人見知りで友達を作るのが苦手だったけど自己紹介は頑張った。ハルヒの真似をしたけど誰も話しかけてくれなかった。




 ハルヒの真似をしても盛り上がらないなんて不勉強なクラスメイトだな。そいつらが悪いからいさなは気にしなくていいぞ。




4月15日

 4年生になって授業も難しくなった。特に私は算数が苦手だから教科書の内容を理解するだけでせいいっぱい。




 私は教科書の内容も理解できていなかった。まあ、私にとっての本当の教科書、大切なことを教えてくれたのは漫画やアニメだが。




4月26日

 相変わらずおばあちゃんの稽古は厳しくて怖い。踊りや歌の練習は好きだけどおばおばあちゃんが怖い。でもその後にお母さんがこっそりアニメや漫画を見せてくれるからがんばれる。




 あのばばあはマジでうざい。漫画やアニメを見ると頭が悪くなると思ってる古臭い人間。




5月3日

 今日から家族で旅行。行き先は京都。聖地巡礼が目的みたい。けいおん、るろうに剣心、ぬらりひょんの孫、有頂天家族……いろいろあって覚えてない。




 キョウトに家族旅行か。桐原公にでも挨拶しに行くか。




5月17日

 お母さんが仕事の都合でしばらく家を離れることになった。おばあちゃんとお父さんはいるけど寂しい。


 


 そうなんだ。いさなと会えないなんて寂しいな。




6月10日

 テストで100点が取れた。うれしかった。なんかよくわからないけど、テストで出る問題が一週間くらい前に視えた気がする。そこを勉強した。


 偉いと褒めてあげたいところだけど気になることも書かれている。とりあえず読み進めよう。




6月16日

 前日に車が通って水たまりの水が自分にかかる映像が視えた気がする。私は友達が車道側に立つように歩くと、友達に水がかかってしまった。友達に申し訳ないけどラッキーだった。




 明らかに龍守家に発現する能力が出てきた。能力がある人とない人両方いるけどいさなはある側だった。




6月20日

 3日前、隣のクラスでいじめられている子が上履きを隠されて、上履きが体育倉庫で見つかる映像が視えた気がする。その子が上履きを探しているのが見えたから、体育倉庫に行くと上履きがあった。私が上履きを渡すと「ありがとう」と言われたけど、疑われた気もする。でも、誰かの助けになれてうれしかった。




 自分の能力を善意で他者のために使い続けるのは悪いことではない。けど必ずトラブルになる。




7月10日

 色々視えるようになった。抜き打ちテストや持ち物チェックのタイミング、班決めで誰がどこのグループに入るのかとかを友達に共有してみんなに喜んでもらえた。




 他の人に見えた未来を共有するのはよくない。




7月14日

 最近みんなと距離を置かれている気がする。もっとみんなの役に立たないと。もっと視えるように頑張らないと。




 まずいかもしれない。




7月20日

 真美ちゃんが智くんへの告白に成功することとか裕也くんが万引きすることとか担任の岸田先生が音楽の葉山先生とデートするとか視えたことを話した。女の子はこんなうわさ話が好きだと思った。本当はうわさじゃなくて視えた未来だけど。

 でも、反対にみんなは私を避けるようになった。一番仲良しだった沙織ちゃんには気味が悪いって言われた。




 ウワサ話は女子が好きだけど、それが全部本当になったら気味悪がられてもしょうがない。


 


7月22日

 退屈になった。視えてしまうから出来事へのワクワクもドキドキもない。ネタバレされた映画を見てるみたい。視えたことを共有しても気持ち悪がられるだけ。

 お母さんに相談したいけど、今はいない。早く相談したい。




 未来が消えてしまった原因は私にもありそうだ。


 


7月25日

 何もかもが1度見たように思えて、つまらない。




 龍守家(たつもりけ)で能力持ちになった人間の典型だ。おそらくまだ制御しきれていないから見たくもない未来が視えてしまうのだろう。




7月31日

 最近、いいことが何もない。悪い未来が視えて避けるように行動したはずなのに、その後同じ嫌な出来事が起こった。視えても変えられないことがある。その事実は私を絶望させた。もし、自分が交通事故とかで死ぬ未来が視えて変えられないとしたら。




 未来が視えたとしても結果を変えられない場合もあるのか。




8月1日

 私は部屋を出なくなった。家から出なければ嫌なことは起こらないし、死ぬことはない。




 病んでくる人も能力持ちには多くいる。けどそれを乗り越えないといけない。




8月3日

 お父さんが心配して部屋に入ってきた。何があったのか聞かれた。自分が未来予知をできることを言った。この家の人間は未来に関する能力を得る人間が生まれることがあると伝えられた。「今はびっくりしているかもしれないけど、いつかその力を人の役に立てるように使えるようになろう」と励ましてくれた。すごく私のことを気遣ってくれた。頭をなでてくれた。お母さんと違ってお父さんは私と少し距離を置いていたから意外だった。

 でも、お父さんが部屋から出た瞬間、未来が視えた。神社にたくさんの人がいてお父さんに(ひざまず)いていた。お父さんの横には私と思える人がいた。何が起こっているのかはわからないけど、何かに操られているみたいで異様な光景で怖かった。

 いつの未来を見たのかはわからないけど何かを企んでいるのは間違いないみたいだ。私の役目はこれに関係しているかもしれない。




8月4日

 ますます部屋から出るのが怖くなった。

 お父さんがご飯を持ってきた。そのときに「怖がらなくていい、少しずつなれていこう」と安心させるようなそれでいて本心が見えない笑顔で言った。

 もしかしたらお父さんは私を利用しようとしている。このご飯にも毒が入っているかもしれない。馬鹿げた発想だと思いながらも否定できなかった。

 私はすぐに部屋を出て走り出した。どうすればいいかわからなかったけど、どこにいるかわからないお母さんを探しに行った。


 無我夢中で走ると、市役所の前にいた。走り疲れた私は涼しそうな市役所の中に入った。

 エントランスのような場所の壁に展示されていたこの町のお祭りの写真に目を奪われた。お祭りの楽しい空気とか温度感がこの一枚だけで伝わってきた。

 そのとき、閃いた。視てしまった嫌な未来を変える方法を。

 お父さんよりも人を集められるようになる。

 あのとき見た未来で集まった人はきっとお父さんが集めた。なら私はそれに対抗できるくらい多くの人に影響を与えられる人になる。なんでもいい。とにかく私が目立てばお父さんの行動を阻害できる。人の視線を集めれば動きにくくなるはず。


 声優になる。アイドル、ユーチューバー、政治家……人気者になれる仕事はたくさんあるけど、声優に私はなる。アニメは好きだし、お母さんも好きだからなれたらきっと喜んでくれる。そしてこの写真を撮った人みたいに上手なカメラマンにとって撮ってもらえればきっと私の存在は広まる。


 このカメラマンさんの名前は七森叡人さん。




 能力のせいでふさぎ込んでいたようだが立ち直ってくれてよかった。そのきっかけが七森さん。1人の人間の人生を変えるなんて……。


 ただ、いさなのの夢が実現するかは不可能かもしれない。能力が発現した者はそれが外に出回らないように管理される。つまり、声優なんて目立つ仕事できない。




8月6日

 明日からお祭りが始まる。いつもなら何か見えてしまうのにお祭りのことに関しては1度も見ないのはどうして?




 読んでいると色々な思考が駆け巡る。が、それは後ろにいる気配に中断された。


「うわぁ! 誰⁉」


 頭の中で整理を終えると後ろに気配を感じた。


「七森さんか、驚かさないでよ」


「日記でも読んでるのか?」


「み、見たの?」


 この内容を見られたらまずい。龍守家の能力のことがバレることもそうだし、何か何か悪いことに巻き込んでしまう可能性もある。


「何を?」


「ノート」


「日記っぽいように見えたが、具体的な内容は全く見れていない」


 良かった見られていないようなら安心だ。


 とりあえず話を逸らそう。


読んでいただきありがとうございます!


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『ないーーーーーよ! 高評価しかないーーーーーーよ!!』



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