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47 未来少女クリス

 目を開けると真っ暗な部屋だった。見慣れた構造からすぐにいさなの部屋だとわかった。時間を確認すると夜の11時。日付は7月31日。いさなが1人でいるベストなタイミングだ。


 懐中電灯を持って早速書庫に向かう。


「気味悪いなぁ」


 夜の神社なんて絶対お化けが出るシチュエーション。先が見えない黒い闇へと続く長い廊下に少女が1人。ホラー展開にしてくださいと言ってるも同義。


 ただ、小さいころは夜トイレに行くときこの廊下は怖かったが1度も怪奇現象に遭遇していないことから、幽霊やお化けについて恐れることはなくなった。


「夜の神社に現れないならどこにいるんだって話だよ。むしろ出てきてほしかったくらい」


 方囲! 定礎! 結! 滅! 天穴!


 人差し指と中指を立てて心の中で唱えた。


 足音や人の気配に注意しながら歩き、1番奥にある書庫の前まで辿りついたが鍵付きの南京錠がかかっていた。


「そりゃそうだよね」


 私はガムテープを用意して外に出た。


 書庫の窓の鍵のセキュリティは意外と甘い。古いクレセント錠でハンドルを下げるだけで開けられる。そもそも能力を持つ人間がいるということすら知られたくなさそうな家だから、あからさまにセキュリティを強化できないのかもしれない。


 ガムテープを張り付け、エルボーする。音や破片の飛び散りを最小限に抑え、割った部分に手を通しハンドルを下げて窓を開けた。


「GTOの知識が役に立ったぜ」


 書庫にはきれいに整理整頓された大量の書籍が詰まっていた。天井まで届きそうなほどの本棚が所狭しと並んでいる。背表紙が擦り切れていて何について書かれたものかわからないものも多くある。


 紙の本が詰まっている独特の匂いはあるがかび臭さや埃っぽさはない。


 いくつか手に取って内容を見てみる。神社の歴史や行事の作法などについて書かれていた。


「能力って隠さなきゃいけないものだから正攻法で見つかるところには置いていないはず」


 ここの神社には当然龍守の血を引いていない人間もいる。龍守の家系はなぜか子どもは女しか生まれないから外部から跡取りの婿養子を迎えている。さすがに龍守神社の跡取りになる人は事前に能力のことは知っている。逆に言えば、能力のことを知った時点で龍守家の婿養子にならなければいけないとも言える。


 神職以外の事務職や清掃業務を行ってくれる人もいるし、そういう人に書類を取ってくるように頼むこともある。その人たちにたまたま見つけられでもしたら大問題になる。だから普通では見つからないところに置かなきゃいけない。


「それなのに私は清正に能力のことをベラベラ話してしまったわけだが。ま、私はこの窮屈な家が大嫌いだから決まりなんてどうでもいい。最終的には清正も婿養子になったから問題はない」


 本棚をどかしたり、床のタイルを剥がしたりして隠し部屋が見つかるというのが定番だ。


 手当たり次第に本棚や壁、床に触れて押したり引いたりしたが違和感はなかった。


 打つ手がなくなり、本棚の本を懐中電灯の光で照らしながらしらみ潰しにタイトルを確認する。上の方は身長が足りないこともあって良く見えない。


 脚立を運び上段の本も見ていく。


 きれいに整理整頓されている。タイトルが見えないものは中を開いてみる。ページも色あせていてよく見えない。


「さすがに読めないものに龍守家の能力について書かれているとは思えない」


 閉じて戻す。本棚から本を出して内容を確認する作業をしている中で思った。


「少しきれいすぎる」


 書庫に入った時は単にちゃんと管理されているだけだと思ったけど、脚立に上り本棚のてっぺんを見ても埃があまり積もっていない。


「ここまで掃除するものなの?」


 大事な本が多くあるのはわかるが本棚の上まで脚立を使って掃除するのか? 取り出しやすい位置にあるわけではないから、頻繁に見る本ではないはず。


 脚立から本棚の上に移動し天井を真上に押した。すると天井は浮き上がり、隠し部屋が見えた。


 「なるほどね。埃で足跡がついたりしないように掃除をしているってことか」


 天井裏の隠し部屋に行くと何冊か分厚い本があった。


 近くにあった本を取りページを適当にめくると能力の一覧や説明、該当する人物の名前が書かれている。


 他のページには龍守家の人間の名簿と能力の有無が記載された箇所があった。


 私のお母さんの龍守沢女(たつもりさわめ)の能力は『無効化』。ちなみに私の名前の横には記入日と『能力なし』とお母さんの筆跡で書かれていた。


 ゆっくり読みたいがそんな時間もないから、参考になりそうなページをいさなの携帯で写真を撮る。部屋に戻って内容を見てから消せば証拠は残らない。


 天井裏から出て書庫に戻る。


 このまま外から出て自分の部屋に戻ればいいのだが気になることもある。天井や脚立は元に戻せるが割れた窓は戻せない。この場合、過去に戻り同じ時間になった窓はどうなるのだろうか。元の時代に戻りまた窓を割った日以後に飛んだとき、この窓は割れたままなのだろうか。もし割れているのであれば過去から来て未来を変えられる証明になる。割れていなければ未来を変えられないということになる。


 資料の内容を見たらそれも確かめてみよう。


◆◆◆


 自分の部屋に戻りスマホで撮った写真から文章を読む。


 どんな能力が存在するか、能力の発現時期、私的な利用の禁止等私がお母さんから聞いた話も書いてあった。


 まず知りたいのは予知した未来は変えることができるのか。


 それが記述されていそうな箇所を流し見る。


『予知された未来は変えられる』


 その記述に私は拳を突き上げてガッツポーズをした。その先を読み進める。


『未来は変えられるが難しい場合もある。

 未来の自分が突然の大雨に打たれて風邪を引いたとして、その日に傘を持っていき濡れるのを回避する。自分1人の行動だけで済むものは簡単に変えられる。

 が、大勢の人間が関わった結果の行動や強い意志によってもたらされた未来は簡単には変わらない。また変えられない場合もある』


 清正の計画はかなり前から進んでいる。多くの人間が関わっているだろうし清正の意志も強いはずだから、未来を変えるのは簡単じゃない。


 もしくは自分が元の時代に戻って清正の計画を止めるっていうのはどう? それができたらいさなが未来予知をして清正の計画を知ることもなくなる。


 できない。元の時代だと生まれたばかりのいさなの面倒を見なければならず清正のやっていることに介入する余裕はない。


 やはり私の能力でみんなが眠る時間にいさなに成り代わって行動するしかない。


 次に気になっていたのは未来に行って戻ってまた未来に行った時、前の未来で変えたことは継続されているのか。


『1度変えた未来は他者の介入が入っていなければ変えた状態が継続する』


 つまり窓ガラスを割った状態は継続するってわけね。


 思考の途中ではっとする。今は考えるのではなく情報収集をしなければいけない。なるべく早めに証拠を隠滅したい。


 意識を情報収集だけに切り替える。


◆◆◆


 大体わかった。


 写真に残した全ての文面に目を通してそして削除した。


 あとはお祭りで七森さんが殺されないようにしよう。


 殺された原因は私が急に姿を消してしまったことで心配をかけたことだ。だから今回は攫われることが確定しているから先に七森さんに彩音さんと2人きりにすると言っておこう。そうすれば姿がなくなっても心配をかけさせずにすむ。


 後の行動は前回をなぞる。色々行動を変えて知らない展開になっても困る。


読んでいただきありがとうございます!


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『足手まといなのは力のない者ではない、高評価をしない者だ』

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