表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/60

4 やはり間違っている

「ただいまー」


 返事をする人なんているわけないのだが、家に帰ると言ってしまう。


 自転車で走り回って、足が限界になり、僕はベッドに仰向けに倒れる。眠ってしまう前に自己紹介を再確認だ。クリスに無難な自己紹介を説いた手前、失敗する訳にはいかない。出身、名前、転校してきた理由、趣味、特技、閉め締めの挨拶。完璧だ。話し過ぎず、話さな過ぎず、いい塩梅だ。


 誰もいない静かな家にいると明日から始まる新しい学校生活への不安が頭によぎる。


 友達、彼女、勉強、部活、先生……これまでとは大きく違う環境だからどう対応していけばいいだろうか。


 中でも不安なのは自分のことを知っている人がいるかどうかだ。嫌な記憶がフラッシュバックする。


『お前が撮った写真全部目の前で燃やしてやるよ。首に掛けてるカメラもな』


 やめろ。


『パクリとか信じられない。そこまでして人気者になりたかったの?』


やめろやめろ。


『真剣にやってる人に謝れよ』


 やめろやめろやめろ。


『自称写真家(笑)』


 やめろやめろやめろやめろ。


『この写真私写ってるんだけどー、盗撮じゃん。写真家よりも盗撮魔のほうが向いてるよ』


 やめろやめろやめろやめろやめろ。


『この恥さらしが。俺の顔にまで泥を塗る気か!』


 違う違う違う違うんだよ、父さ―


 苦くて酸っぱい味が口に広がる。僕はトイレに駆け込んで吐いた。


「はぁはぁ……」


◆◆◆


 不快な味が張り付いた口をゆすいでぬるい麦茶を胃に流し込む。


 あれだけ動き回ったからからお腹は空いているはずなのに食欲は一気に失せた。


 もう寝よう。


◆◆◆


 昨夜は最悪な気分だったが、それでも朝は来る。


 学校に行かなければならない。


 大丈夫、僕のことは誰も知らない。雑誌とかネットの記事には顔写真を出したことはあるけど、テレビに出たことはない。大丈夫、絶対に誰も知らない。


 僕は登校中、顔を1度も上げずに学校に行った。


読んでいただきありがとうございます!


作品が面白いと思った方は☆5、つまらないと思った方は☆1の評価をお願いします!


評価やブックマーク、作者の他作品を読んでいただけると大変うれしいです!


『低評価とは嘘であり悪である』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ