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37 クリス様は告らせたい

「次に会うのはお祭りですね」


 僕とクリスは方向が同じだけど葉月先輩は家が別方向になるからお別れだ。


「うん、お祭り楽しもうね~」


「彩音さん、耳貸してください」


 葉月先輩はしゃがんでクリスの高さに合わせる。


 なんて言っているのかは聞き取れないが、葉月先輩は「えっ」と目を丸くしながら僕のことを見た。少しうなった末に頷いた。


「それじゃ、当日は楽しみにしていますね!」


「よろしくね~。叡人君もバイバイ~」


「お疲れ様です」


 手を振って挨拶する先輩に僕も手を振り返す。


「葉月先輩と何の話をしていたんだ?」


「それ言ったら内緒話にした意味ないじゃないですか」


「それもそうだな」


 当日僕に何かどっきりでも仕掛けられるのだろうか。引っかかってやるのはいいけど面白いリアクションができる自信がない。


 2人が話していたことを推測しているとクリスが話題を切り替えた。


「実はお祭りには言い伝えがあるんです」


「言い伝え?」


「はい。このお祭りで結ばれたカップルは一生幸せになれるっていう言い伝えがあるんですよ」


 厳かな声で話し始めるから何事かと思えばよく聞くジンクスだった。


「そういうジンクスみたいなものって田舎も都会も関係なくあるんだな」


 歩きながらそう答えた。


「七森さんこっち向いてください」


「何?」


 クリスは真剣な表情だった。


「告白しましょう」


「は?」


 何を言い出すのかと思ったらこいつは何を言い出したんだ?


 コクハク? 酷薄か。


「葉月先輩に残酷で薄情なことなんてできないよ」


「酷薄じゃないですよ。告白です」


「よくそんな難しい言葉を小学生が知ってるな。飴ちゃんあげるよ」


「いらないです。ていうか私彩音さんの名前なんて1文字出してないのになんで出てくるんですか?」


 クリスは嵌めてやったぜというしたり顔をしている。すごいムカつく。誘導尋問じゃん。


「これは罠だ!」


「粉バナナ☆?」


「空耳だよ!」


「2人とも息ピッタリだね。人間って面白ー(彩音さんと同じ反応してるよ)」


「バカにしやがって。クリスとなんて一緒にいられるか! 僕は1人で先に帰らしてもらうからな!」


 ホラー映画とかデスゲームで1番最初に死ぬ人間みたいなセリフを残して僕は早足で歩き出した。


「もう1回、こっち向いて」


 クリスが再び真剣な声で呼び止めた。イラっとしているけど無視するのもためらわれるからとりあえず振り向いた。


「僕は変態王子なのか?」


「いえ、王子抜きの変態です」


「それはただの変態だろ!」


 クリスは居住まいを正して僕の目をじっくり見て言った。


「彩音さんに告白しましょう。デートをして徐々に好感度を上げ、一緒に廃部の危機を乗り越えるという一大イベントもクリアしました。後はお祭りの雰囲気に任せて気持ちを伝えるだけです」


 いやいやさっきも言われて考えたけど早計すぎるだろ。まだ会って2か月も経ってないのに告白? 一般的な告白をするタイミングってわからないけど早いだろ。


「もうちょっと仲を深めてからのほうがよくないか?」


「もうちょっとってどのくらいですか? 

 この先お祭り以外にイベントはあっても文化祭とか体育祭ですよね? それって学年別だから後輩の七森さんは彩音さんと絡む機会がありません。

 その間に他の人に盗られますよ。彩音さんは目立たないけど美人ですから」


 言っていることは正しい。これからの関係も考えるとリスクもあるから、告白ってそんな簡単にできることじゃない。


「葉月先輩が僕のことを好きかどうかなんてわからないから、失敗したらこれからどうやって接すればいいんだよ」


「七森さんってマオですか? 宇水ですか? 琴浦さんですか?

 相手の気持ちなんてわかるわけないですよ。でも告白すればわかります。

 接し方はその時考えましょう。失敗したときのことを考えたってうまくいく可能性は上がりません」


 クリスの言葉は的確だ。だから葉月先輩に自分の気持ちを伝えたほうがいいのだろう。でもなんでクリスはそんなに世話を焼くのだろう。


「告白するかどうかは置いておいてなんでそんなに僕にそこまで告白させようとするんだ?」


「年頃の男女の恋愛は面白いですから」


 聞いた僕がバカだった。ただ面白がっているだけだ。


 と、普通の小学生が言っていたら考える。が、クリスは普通じゃない部分がある。小学生にしては落ち着いているし、敬語や話し方も成熟している。もしかしたらクリスは葉月先輩の気持ちを知った上で僕に告白するように言っているのかもしれない。


 それにクリスが言う通りで先輩に彼氏ができる可能性もあるから、付き合えないにしても、ちゃんと告白したほうが後悔は少なそうだ。


「告白するよ」


「よくぞ言いました」


 クリスは拍手をして満面の笑みで僕のことを褒める。


「ここまでけしかけたクリスに告白の明確なプランはあるのか?」


「うーん、2日間あるので1日目には告白しないほうがいいですね。振られたら2日目が気まずいので。だからタイミングとしては花火の後か帰り道で告白するのがいいんじゃないですか?」


「そうだよなー。2日目の最後に告白するってなると丸2日間緊張しっぱなしだけど、すぐに玉砕して空気悪くなるのも嫌だしなー。

 ちなみにどんな言葉が刺さるとかあるのか?」


 小学生に恋愛のアドバイスをされている高校生ってどうなの?


「シンプルに伝えたいことを言うのがいいと思います。あんまり着飾らずストレートに言ったほうが喜ばれます」


「わかった。そうする。

 今日はありがとう。クリスのおかげで色々勇気出た。お祭りでまた会おう」


「はい、会えるの楽しみにしています。それとこれを渡します。当日はそれを耳に付けてきてください。

 それではまたお祭りで」


 最後になぜかクリスから黒い小さな機械を受け取った。


 手を振ってお互いの帰路についた。


読んでいただきありがとうございます!


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『作者様は高評価させたい~凡人の創作頭脳戦~』

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