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31 バレー部の王子様

 体育館は様々な部活の掛け声やボールの跳ねる音、靴の音が響いていた。バレー部は体育館の1番奥で練習していた。


 部員は多くいたが、ひと際身長が高い慎吾を見つけることは難しくなかった。


「慎吾!」


「おう、叡人じゃん。どうしたんだ?」


 軽くアップを終えたところのようで少しだけ汗をかいている。滴る汗を拭いながらこちら見る顔はスポーツイケメンの名をほしいままにするだろう。


「練習中悪い。今から卒アルとかのために写真を部活の写真を撮らしてもらいたいんだけどいいか?」


「なんで叡人がそんなことしてるんだ?」


「実は写真部に入ってその活動なんだ」


「前に言ってた部活って写真部だったのか。

 問題ないぜ。今日は部内で練習試合だから普段の練習よりは写真映えするかもな」


「それは助かる。いいものがあれば卒アルにも使ってもらえる可能性もあるから頑張るよ」


「なるほどね。かっこよく撮ってくれよ」


 爽やかな笑顔で親指を立てる様はスポーツイケメンの名をほしいままにするだろう。


「ありがとう」


「それよりもよー、あの眼鏡かけた可愛い人はお前の彼女か?」


 慎吾は首に腕を絡めて顔を近づけた。この運動部男子がいかにもやる内緒話のテンプレを体験できていることに満足を得ながら質問に答える。


「彼女じゃない。写真部の部長」


「ほーん。で、あの小さい子はその先輩との子どもか?」


「違ーよ! 話聞いてたか!」


 ギャルと同じ思考回路してる。


「ははは、照れるなって。叡人にも春が来たのかー。頑張れよ」


 首に絡んでいた腕を解き背中をバシバシ叩きながら豪快に笑う姿はとても裏表が真っ直ぐな性格を表しており、スポーツイケメン(略)。


 腕で丸印をして少し離れたところにいる先輩とクリスに撮影の許可を取れたことを伝えると2人ともバレー部の練習場所まで来た。


「葉月彩音です、よろしくお願いします~」


「綾辻クリスです! よろしくお願いします!」


「水島慎吾です、よろしくお願いします。今から部内試合するので見てってください。

 部員にも説明してくるのでちょっと待っててください」


 慎吾は部員たちのもとに駆け寄った。


「バレー部って2年生がまとめてるの~?」


 僕と慎吾が話しているのを見てやはり慎吾が部を引っ張ているように見えたようだ。


「3年生はもう引退の時期なんじゃないですか? 受験勉強とかもありますし。ただまとめてるのは慎吾なんでたぶん部長だと思いますよ」


「ふ~ん、叡人君もそのうち写真部の部長になるから部長会とかで肩を並べることになるね~」


「いや、バレー部と写真部を同列に扱うのは違う気がしますけど」


 慎吾たちみたいに真面目に練習して大会で結果を残せるように頑張っているバレー部とやるべきことを何もしていなくて廃部寸前だった写真部を並べるのはやっぱりおかしい。


「葉月先輩は受験勉強は大丈夫なんですか?」


「写真部ってそこまで大変な部活でもないし、なんなら最近まで活動してなかったことのほうが多かったから勉強に影響はないかな~」


「たしかに」


 ここまで緩く活動できる部活はほとんどないだろう。だからこそ生徒会に目をつけられてしまったのだが。


 さっきまで高校の体育館をきょろきょろ物珍しそうに眺めていたクリスが話に入ってきた。


「七森さんと彩音さんはバレーのルールって詳しいですか?」


「オリンピックで見るくらいかな」


 何となくはわかるけど詳しくはないな。


「私も~」


「ちなみにクリスは?」


 僕も葉月先輩も文化系だからスポーツには明るくない。クリスだってそのはず。詳しかったとしたらハイキューでも見たんだろうな。


「スパイクを1人が止め、1人が覆い、1人が支える。そういうスポーツですよね?」


 それはドッチボールだ。


「違うな、間違っているぞ。そんなえげつないスポーツじゃない」


「間違っているのは私じゃない。世界のほうです」


「そんな規模のでかい話をした覚えはない」


 クリスといつも通りの会話をしていると、葉月先輩がじっと見ていた。


「どうしたんですか?」


「いや~、2人とも仲がいいというか息がぴったりというか~、独特の世界観があるよね~。本当の兄妹みたい」


 ただのオタクどうしの会話が先輩にはすごく微笑ましいものに見えている。アニメや漫画の話を陰キャの間で盛り上がっていると横から陽キャが「何の話してるん?」って声かけてきたときの気まずさに通ずるものがある。


「お言葉ですが彩音さん。七森さんの妹がこんなに可愛いわけがありません」


 そんなライトなノベルができてしまったらクリスエンドになってしまう。


「そうですよ、僕は綾瀬派です」


「えっち、変態。

 私はできれば彩音さんにお姉様になってほしいです」


 薄汚いヘドロにまみれた汚物を見る目で僕を罵った後、葉月先輩にキラキラした目線を送った。


「そうなの⁉ 私もクリスちゃんみたいな可愛い妹がいたら毎日楽しいよ~」


 クリスの秘密を知りたいから四六時中一緒にいたいとかじゃないよね?


「嬉しいことを言ってくれますね。お望みとあらばどこでも空間移動(テレポート)して会いに行きますよ。悪い虫がついていればジャッジメントですの!」


 変態はどっちだよ。


「部員も撮影には了承しました。一応部員も簡単に紹介しますね」


 僕たちがくだらない会話に花、いや、ラフレシアを咲かせているうちに慎吾が戻ってきた。端から1人ずつ名前とポジションを教えてもらったが全く覚えられない。


 紹介が終わるとそれぞれチームに分かれコートに入った。


読んでいただきありがとうございます!


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『俺様の美作品に酔いな』

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