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13 ムッツリーニ

「それではこれから第一回写真部部内会議を始めます~ 。

 よろしくお願いします~!」


 教壇に立つのは部長の葉月(はづき)先輩、僕は教壇の前の席に座る。顧問の白石(しらいし)先生は窓際の前にある教師席に座っている。


「よ、よろしくお願いします」


「その前に!」


 先輩が教壇の机をバンッと叩く。


「それ、おいしい~?」


 僕が口に咥えているキャンディーを指差した。


「まあ、甘くておいしいです」


 味は普通の飴である。


「ほう~、美少女の唾液が甘くておいしい、と」


 葉月先輩がジト目で僕に物申す。


「主語が違います。甘いのは飴です」


「ふーん。でもどうかな。美少女の生温かい口の中で唾液がべっとり絡みついた飴を直接口の中に入れられていたら、それはもはや間接ディープキスだよ。ただ飴を舐めているのとは状況が全然違うよ~」


 間接ディープキスとは?って思ったけどつっこめない。


 先輩の目にハイライトがなくなって少し怖くなってきた。


 いちゃついているように見えてイラっとしているのかもしれない。確かに人前で舐めた飴を食べさせる行為はリア充っぽくて万死に値するかもしれない。


「ごめんなさい、女の子の舐めた飴を舐めて葉月先輩に不快な思いをさせてしまったことは謝ります」


「いや~、別にっ、不快な思いなんてしてないよ? フラットだよ? 平常心だよ? 太平洋だよ?

 ただ、廃部の危機に陥っているのに女の子といちゃついている浮かれた部員がいたから部長として注意しただけだよ。あくまで部長としてね!」


「なるほど。浮かれた部員を注意した部長は何か部を救う方法でもあるんですか?」


「司会進行は教壇に立って全体を見渡せる私の役目だから奪わないで~。

 それじゃあ、早速何か意見がある人~? 1か月以内に何かやり遂げないと廃部になります。

 おっ、目が合ったね、叡人君」


 そりゃあ、僕しかいないんだから僕と目が合うでしょう。


「う~ん、難しいですねー。そもそも基準がわからないですし」


「まずは何でもいいから意見を言っていこう~。発言することで何かひらめくかもしれない。あ、誰かの意見を否定するのはなし。つまり、ブレイクストッキングだよ~」


「ストッキング破ってるだけですね。正しくはブレーンストーミングです」


「そう、それそれ~。ちなみに叡人(えいと)君はストッキング好き~?」


「急に何ですか。ストッキングは今回の件と何も関係ないですよ」


「ノンノン。今はブレストだから意見を否定してはいけません~。どうなの~?」


「別に好きとか嫌いとか考えたことないですよ」


 嘘である。興味があると思われないようにぶっきらぼうに言ったが、AVでストッキングを破る展開は大好物であり、憧れである。


「じゃあ、今考えよう~」


「いや、急に言われても……」


「シンキングタイム終了~。好き? 嫌い?」


 何この時間。美人な先輩から性癖を聞かれるという嬉し恥ずかしタイム。


「別に、嫌いでは、ない、です」


 なるべく、普通の態度で答えようとしたが、たどたどしくなってしまった。


「ほうほう」


 先輩は変な笑みを浮かべてチョークを持って黒板に文字を書く。




『叡人君はストッキングが好き』




「変なこと書かないでください! 嫌いじゃないと言っただけです!」


「ブレストだから人の意見は否定しちゃいけないからね~!」


 ブレストを都合のいいように使っているとしか思えない。


「あなたたち、黙って聞いてれば……」


 ここまで静観していた白石先生がついに口を開いた。流石に部の存続がかかっているのにここまで悪ふざけするのは良くないと思ったのだろう。


「堂々と好きと言えないんだから、七森はむっつりすけべと付け加えて」


「あいあいさ~」




『叡人君はむっつりすけべ』




 とんでもねぇな、ブレスト。


 ここからアイデアを何か思いつくのだろうか。


「明日から私はストッキングを履いたほうが叡人君はうれしい~?」


 少し肉付きのある足を見せながら聞いた。


「先輩の好きにしてください」


 ちなみに葉月先輩は今、白いニーソを履いている。個人的には黒ニーソのほうが好み。


「いいねいいね~議論が盛り上がってきたよ~」


 楽しそうだが、議論というより後輩を辱めているだけだ。


 だが、思いついてしまった。このしょうもない議論でアイデアを。


「SNSに自分たちが撮った写真をアップしてバズらせるのはどうですか?」


 ストッキングを破るところからAVを連想して、SNSでエロ画像にいいねやコメントが集まったり、拡散されているのを思い出した。


「ナイスアイデア~」


 また黒板に書き加える。




『SNSでバズらせる』




「イマドキでいいいかも~。

 賞を狙うとかだとチャンスも限られてきちゃうけど、これならいつでも挑戦できる!

 目指せインフルエンサー、トレンドゲットだぜ!」


 先輩は帽子のツバを後ろに持ってくる動作をしてやる気十分な様子。


「1つ忠告しておくよ。SNSにあげる写真は高校生の範囲を逸脱しないものに限るからね?」


 SNSは便利で楽しいものだが、危険も多くある。そのことを白石先生は伝えている。


 もしかしたら、遠回しにエロコンテンツに頼るなと言っているのかもしれない。


 思いついたきっかけはエロ画像だが、そんなもの生徒会長が認めるとは思えないから最初から使うつもりはない。


「は~い」


「はい」


 2人同時に了承の返事をしたことに先生は満足したのか教室を出た。


「叡人君は日曜日空いてる? 早速写真を撮りに行こう~」


「了解です!」


「じゃあ、10時に学校で待ち合わせ~」


読んでいただきありがとうございます!


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評価やブックマーク、作者の他作品を読んでいただけると大変うれしいです!


『ぺロリポップキャンディ 高評価、いいね、ブックマークしたくなる味』



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