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10 ウンメイ×ノ×デアイ

「俺は部活に行ってくるけど、叡人(えいと)は昨日気になってた部活を見に行くのか?」


「ああ、ちょっと話聞いてみる。慎吾(しんご)は部活頑張ってね」


「おう」


 慎吾は教室を出て部活に行った。俺も写真部見に行くか。


 ていうか、今日活動しているのかな。それくらいは誰かに確認しておけばよかった。


◆◆◆


 とりあえず、部室の前までは来た。


 ドクドク心臓の音がうるさい。唇が乾燥している。この扉を開けても誰もいないことを願ってしまっている。一番最悪なのは昨日の人以外の誰かがいることだ。


 扉を少しだけ静かに開けて隙間から教室内の様子を探る。


 教室には1人しかいない。昨日と同じ人だ。窓際の1番後ろの席に座り、ティーカップで紅茶かコーヒーでも飲んでいる。放課後ティータイムである。


 気づかれないようにそっと扉を閉める。どうやら、暇そうだから声をかけても迷惑にはならなそう。あとは、秘密の(ドア)をノックするだけ。


 コンコン。


「はい~」


 ノックに対してふわふわ間延びした声が返ってきた。


「し、失礼します!」


 声が上ずってしまったけど、そんなことはどうでもよくなるくらい美人な人がいた。


「どうしたの?」


 その人は頬に垂れた髪を耳にかき上げながら居住まいを正して僕の方を見た。


 サイドの髪を後ろで1つに結ぶハーフアップの髪型をした彼女は淡い桃色の髪とあどけなさが残る顔立ちは幼い印象を与えるが、雰囲気やスタイルからは大人の女性であると思わされる。


 こんな女性を彼女にしたいと素直に思った。


「えーと、ここは写真部ですか?」


「そうだよ~。入部希望?」


「は、はいっ」


「そんなに固くならなくていいよ~。ほら、そこ座って。お茶入れてあげるから」


 彼女は机を向かい合わせにして席に座るように促した。


 僕が座るとティーバッグが入ったカップを置き、ポットからお湯を注いだ。お湯を注ぐと前かがみの姿勢になり、大きな2つのカップが強調されて僕の視線は奪われた。嗅覚も紅茶の香りではなく彼女からほのかに漂う花束のような匂いに奪われた。


「召し上がれ~」


「いただきます」


 美人と2人きりという状況で緊張しまくっていて味なんてわからないが、温かい飲み物を飲んで落ち着いた気がする。


「まずは自己紹介だね。私は3年3組の葉月彩音(はづきあやね)。よろしくね~。ちなみに部員は私だけ~」


 上に縁がないタイプの眼鏡の奥にあるタレ目を細めながら、挨拶をしてくれた。雰囲気から大人っぽいと思っていたけどやっぱりこの人は先輩だったのか。


「2年1組の七森叡人です。よろしくお願いします」


 緊張はしていたけど登校初日みたいな変な自己紹介はしなかった。


「叡人君ね~。オッケー。ちなみに活動内容は放課後にのんびり紅茶を飲むことかな~。一応部活だから部費が出るんだよ。それで色々カップとかポットとか揃えちゃった~」


 本当に放課後ティータイムしているだけだった。


「葉月先輩は写真を撮らないんですか?」


「入ったときはすごくやる気があったんだけど、カメラって調べるとすごい高いんだよね」


「部費はそれに使うべきだったのでは?」


「なるほど。その手があったか。盲点だったよ。叡人君は頭いいね~」


 本当に思いついていなかったみたいで関心された。


「真っ先に思いつく方法だと思いますよ」


「だとしても、カメラ1台に部費使うなんてもったいないよ~」


「ここは写真部ですよ?」


「写真なんてスマホで十分いいのが撮れるよ~」


 元も子もないことを言っている。


「あ、でも、1個だけカメラ買ったんだよね~」


 先輩はニコニコしながらカバンの中あさっている。


 どんなカメラなのだろうか。女性でも持ち運びやすい軽量で小型のかわいいカメラがでてきそう。


「じゃじゃーん!」


 カバンから超小型の黒いカメラが登場した。女性でも運びやすい軽量で小型のカメラだけど、思ってたのと違う。


「何ですか、これは?」


 懐疑的な目線を僕は送ったが、葉月先輩は気づかずにカメラについて力説する。


「カバンの中に忍び込ませたり、部屋の目立たないところに置いたりして決定的な記録を残すことに特化した優れものだよ~!」


「ただの隠しカメラじゃないですか!」


「そんなに褒めるなよ~、照れるだろう~」


 手を頬に当てて身をくねらせる。


「褒めてませんから!」


「叡人君には特別に私の作品を見せてあげよう」


 全然話を聞いてない。


「私の処女作であり、お気に入りでもあるから現像してるんだ~」


「隠し撮りした写真を作品にしないでください」


 先輩が僕に1枚の写真を見せてきた。


 写っているのは男女のカップル。女性のほうは顔が見えないが、男性のほうは女性に親しげに話しかけていて、その横顔が見える。爽やかな笑顔のイケメンの写真である。


「これは何の写真ですか?」


「何の写真だと思う?」


「質問に質問で返さないでください」


「まあまあ、軽い謎解きだと思って考えてみてよ~」


 先輩に言われて少しどんな写真なのかを考えてみる。まあ、考えなくても想像はつくけど。


 1隠しカメラで撮っている

 2初めて隠しカメラで撮った写真

 3男女のカップルで、男に焦点が当たっている。

 4ピンク髪の人が持つ属性


 答えは彼氏とか元カレだろうけど、きっとこれは葉月先輩の心の傷に触れることになるかもしれない。


 はっきりと言って、気まずい空気になるのは勘弁だな。


「……」


「正解~。

 私のことも配慮した沈黙を回答にするなんてベストな選択だね」


「ハンター試験だったんですか?」


「そうだね、このときの私は愛のハンターだったかもね♠~」


「いえ、ただの変態ですから」


「この写真を見て他に何か気になることはある?」


 そう聞かれるってことは何かあるんだろうな。だが、写真を見ても特にきになることは何もない。いや、なさすぎるくらい普通の盗撮写真だ。


「この作品はまだ完成していないんですね?」


「大正解~」


 葉月先輩はもう1枚写真を取り出した。


「実はこの作品、合作なんだ。タイトルは『深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いている』だよ~」


 その写真は1人の女性の写真とその奥の男女の姿を写していた。


 女性はキャップを被っていて、その帽子の中にピンク色の髪をしまっているのがわかる。この女性はきっと葉月先輩だ。


 ストーカーがストーカーを覗いているだけの写真である。


「先輩、これめちゃくちゃ危ない状況じゃないですか!」


「そうなんだよね~。獲物を狙う瞬間って1番無防備になるから気をつけなきゃいけないのにね~」


「そういうことじゃなくて!

 葉月先輩にもストーカーがいるじゃないですか!」


「ああー、これはうちのお父さんだから大丈夫」


「それはそれでヤバいですよ」


 子が子なら、親も親だな。


読んでいただきありがとうございます! 


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評価やブックマーク、作者の他作品を読んでいただけると大変うれしいです!


『そんな目で見つめないでくれよ♤

 高評価しちゃうじゃないか……♡

 ズギュ~ン』


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