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人外たちの日常  作者: 甘夏 みかん
第二部
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18.勝手にグッズを製造されていた話

 依頼人の自宅に行くと兎舞のロングクッションやら手乗りサイズのぬいぐるみなどが販売されていた。「へっ、とま?」と兎舞も面食らった表情で目を瞬いている為、無許可なのだろう。希威は試しに繁盛している店内の棚にあるぬいぐるみを手に取ってみた。

 黒髪を耳の下で二つに結んで額から赤色の角を生やしており、華奢な身体を和服で包んだ可愛らしいデザインだ。表情差分まであるようで、赤い瞳で真っ直ぐ見つめている子も居れば、ニッコリと微笑んでいる子や眠っている子も居る。正直、全種類欲しい。


 「見て、兎舞ちゃん。この子、服も脱がせれるで」と、白雪がセクハラをして兎舞にぬいぐるみを没収されているのを尻目に、レジに向かってこっそり全種類の兎舞のぬいぐるみを購入する。「兄さん、何してんの?」とひょっこり兎舞が手元を覗き込んできて、本人に買ったばかりのぬいぐるみを見られてしまった。

 キョトンとしながら自分のぬいぐるみを見ていた兎舞の瞳がジトッとしたものに変わり、照れ臭そうな呆れたような表情で「兄さんまで何で買ってんのさ」と取り上げられる。「まで?」と引っかかった部分に首を傾げると、「シロさんも買ってたです。シロさんと兄さんには、本物のとまが居るじゃんか」と拗ねられた。

 とても可愛らしい嫉妬だ。希威は思わず頭を撫でる。まあ、買ったぬいぐるみを処分するつもりは毛頭ない為、頭を撫でられて目を細めている兎舞から、さりげなく買ったばかりのぬいぐるみ達を回収する。チラッと視界に入った列に水綺も混ざっていた。ぬいぐるみの他、ロングクッションまで抱えている。


 「兎舞ちゃん、兎舞ちゃん。このビスケット、めっちゃ美味しいで!」と目をキラキラ輝かせている白雪に至っては、ロングクッションとぬいぐるみの他、兎舞の絵をプリントしたビスケットまで買っているらしい。「えっ、本当? とまも食べたいです」と兎舞がそっちに意識を向ける。ちなみにショップに来ている客に、グッズのモデルとなった張本人だと拝まれていたり、写真をめちゃくちゃ撮られていた。

 「俺も他のグッズを買うか」と店内に目を向けたと同時、レジに立って客を捌いていた依頼主が近付いてくる。「お待たせして申し訳ございません」と、笑みを浮かべて頭を下げられたが、待っている間、グッズを買い漁ることが出来た為、特に苦ではなかった。希威がそのことを伝えつつグッズの完成度を褒め称える。その間に、欲しいグッズを全て買い込んで、ホクホクしている水綺が隣に来た。


「希威先輩、依頼内容を聞いてる途中ですか?」


「いや、グッズの素晴らしさを褒めまくってた」


「確かにビスケットの美味しさだけは認めてもいいです」


「兎舞ちゃん、完全に胃袋を掴まれてるやん」


 仲良くビスケットをもぐもぐ食べていた兎舞と白雪もそばに寄ってくる。希威の言葉に不貞腐れた表情で同意を示す兎舞に、依頼主がぱあっと顔を煌めかせて胸を撫で下ろした。「言っとくけど、許可したわけじゃないからな! 使用料として今日はたんまり報酬を貰うです」と、兎舞が悔しそうに拗ね気味にビシッと指を差す。「勿論、お支払い致します」と感極まった表情の依頼主が、兎舞の両手を掴んでブンブンと上下に振った。

 「それで、どういったご依頼でしょうか?」と、希威は兎舞と依頼人をさりげなく引き剥がして本題に入る。庇うように後ろに隠した兎舞は特に気にした様子もなく、白雪の手提げ袋から除いているロングクッションを触りながら、「畜生、手触りが最高に良いです」と呟いていた。きっと兎舞のお昼寝の際に大活躍することだろう。もしかすると、水綺と白雪はその為にロングクッションを買ったのかもしれない。二つも要らないと思うが。


「ご依頼内容は『兎舞さんご本人にショップに来て頂きたい』でした。ですので、引き続き買い物をお楽しみ下さい」


「ほえっ?」


「まあ、宣伝効果は凄いやろうな」


「現在進行形で写真を撮られまくってるしな」


 愛想の良い笑みを浮かべた依頼人の暴露に、兎舞が間抜けな声を出してビスケットを落とす。それを床に落ちる前に手で受け止めた白雪に肯き、希威は周囲の客に目線を走らせる。話しかけてくる輩は居ないが、兎舞の許可もなくパシャパシャと撮りまくっている。兎舞が「んむぅ、眩しいです」と目を細めて嫌そうに白雪の後ろに隠れた。

 しかし、ショップ内に居る客に三百六十度囲まれている為、白雪に隠れても後ろ姿や横顔を撮られていた。そんな兎舞の手と手を繋いだ水綺が、「じゃあ、もっとショップを見て回りましょうか」と、安心感を与える笑みを湛えて兎舞を強引に二階へと連れて行く。確かに、店の中を動き回っていれば、今より撮影される数は減るだろう。

 しかも、水綺が盾になる形で歩いており、今まで通り簡単に撮れない。希威は未だにビスケットをもりもり食べていた白雪と目を合わせて後を追い掛ける。そして、兎舞のボディーガードみたいに壁になりながら、二階に売られているグッズに目を向けた。ぬいぐるみやロングクッションと違って、身に着けるものが売っている。


「流石に兎舞の写真は撮れなかったみたいだな」


「ほんまや。ぬいぐるみと同じビジュアルがプリントされてるやん」


「可愛いわね。兎舞、これ買ってあげるから着てくれないかしら」


「うぇぇ、ナルシストみたいだからやだ」


 ハンガーに掛かっているTシャツを一つ手に取り、希威から順番に白雪と水綺が感想を告げた。完全に浮かれている水綺が別の場所からパーカーを持ってきて、微妙な表情で居心地悪そうにしている兎舞の身体に合わせる。兎舞の苦虫を嚙み潰したような顔でTシャツを見つめる兎舞を見て、希威はニヤリと揶揄を孕んだ双眸で口角を上げて指差した。


「とか言いつつ、ぬいぐるみが襟元から見えてるぞ。愛着でもわいたか?」


「うっ。だって、ぬいぐるみに罪はないし」


 見えているぬいぐるみを両手で隠し、面映ゆそうに視線を逸らした兎舞が、逃げるようにそそくさと帽子を並べた棚の方へと向かう。「みんなもとまだもんね」「ねー」と一人でぬいぐるみと会話していてめちゃくちゃ可愛い。


「並んでると可愛いし、もっと詰め込むか」


「わっ、ちょっ!? 兄さん、入れすぎ!」


 「ふむ」と顎に手を当てて考えていた希威は、襟や袖の中にぬいぐるみを詰め込んでいく。ぬいぐるみに完全に愛着を持ってしまっている兎舞が、着物の中から落ちないように頑張っている姿も可愛い。

 その間、白雪と水綺は兎舞のぬいぐるみの写真をプリントしたシャツや鞄、帽子を根刮ぎ買っていた。先程、一階で買っていたらしい角付きのヘアバンドをつけ、何だかんだでめちゃくちゃ楽しんでいる。


 ちなみに兎舞の個人情報流出を阻止する為、ショップ内で撮影していた全ての人の携帯は、寿命を削ると脅して三人でぶっ壊しておいた。


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