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人外たちの日常  作者: 甘夏 みかん
第二部
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16.自分達を真似る偽物に会う話

 何でも屋を偽って困っている人を強引に助け、高額な報酬を請求する集団が居るらしい。今まで鉢合わせなかった為、気にも留めていなかったが、実際に遭遇してみるとどうにかしなければいけなさそうだった。


 妖怪の存在を信じていない人間や見たことがない人間、藁にも縋る思いで助けを求めた人間などが、偽物の方を本物だと信じてしまっているのだ。これだとこちらの仕事にも影響が出てきてしまうだろう。ちなみに、容姿は全く似ていない。

 兎舞役らしき男は太っているうえ性別間違い、明らかに作り物の角という、細くて綺麗な本物の鬼である兎舞と正反対。白雪役らしき男はガリガリと痩せ細った不健康そうな顔に黒いローブという怪しさ全開の風貌。希威役らしき男の耳と尻尾もどう見ても作り物で眼鏡しか特徴が一致していない。

 そして、これが一番の問題なのだが、なんと水綺役であろう人間が居なかった。仮にも四人組である何でも屋を名乗っているのであれば、せめて人数ぐらい揃えておくべきだろう。辛うじて似ている部分と言えば、本物の兎舞を口説いているところぐらいだ。


「ほほう、偽物にしては美しい鬼だな。どうだ、本物である我々の元に来ないか?」


「それは良い案ですな」


「俺の炎で無理やり命令されたくなけりゃ大人しく付いてきな」


「うぇぇ、何か絡まれたです」


 白雪の偽物が関西弁とかけ離れた言葉遣いで兎舞の手を取り、これまた全く別物の口調でそれに同意する兎舞の偽物。お前、立場を奪われることになるけど良いのかとツッコミを入れることなく、希威の偽物が馴れ馴れしく兎舞の肩を抱いて脅迫する。と、希威が苦虫を嚙み潰したような顔の兎舞を回収した。


「偽物如きが兎舞に触ってんじゃねぇ」


「大体、そっちにはもう兎舞ちゃんが居るやんか」


 大切な兎舞を奪われそうになって偽物を威嚇する希威と白雪。二人に両側から抱き締められた兎舞は、面食らった表情でキョトンとしながら何度か目を瞬いたが、嬉しそうにはにかむようにふにゃりと相好を崩す。目を細めながら希威と白雪に擦り寄る兎舞に、偽物軍団が鳩が豆鉄砲を食ったような表情で見惚れていた。が、すぐに我に返った兎舞の偽物が反論する。


「も、問題ありません。鬼が仲間になるのであれば、私が超能力者になるだけです」


「ええー、全然似てねぇじゃん」


「兎舞にも似てないけどね」


 大切な仲間を馬鹿にされたと思ったのか、兎舞がムッと唇を尖らせて嫌そうに顔を歪めた。水綺はそんな兎舞の反応に満更でもなく思い、頭を撫でてあげながら苦笑を頬に含ませる。頭を撫でられることを好む兎舞がすぐに表情を綻ばせて手に擦り寄ってきた。それを羨望の眼差しで目に焼き付けていた希威の偽物が、双眸を爛々と煌めかせて告げる。


「おい、その愛らしいのに綺麗で美人な鬼を賭けて勝負しろ、偽物。勝負方法は、村人に本物だと信じてもらえた方が勝ちだ」


「流石、妖狐ですな。それなら、鬼を手に入れられるうえ、偽物に実力を見せつけることもできます」


「怖じ気づいたなら逃げてもいいんだぜ?」


 勝ち誇った表情で兎舞の偽物と白雪の偽物が希威の偽物の提案に乗った。既に勝った気で居る白雪の偽物を見ながら、兎舞が「あんなにオラオラしてるシロさんやだです」と、嫌悪感を剥き出しにして呟く。「うちも見てて恥ずかしいから嫌やわ」「つーか、勝負内容がコッチに有利すぎるが、何か策でもあんのか?」と、くっつきながら声を潜めてヒソヒソと話す三人に加わり、水綺は見た目に騙されて気を抜かないよう注意を促した。


「噂になる程度は有名だし、油断しない方が良いでしょうね」


「本気で行くか」


「どういう仕事内容なんやろ。寿命を刈り取る系がええなぁ」


「とまも暴れたいからやりすぎないでね」


 兎舞を奪われたくない希威と白雪が本気になる中、自分の分の敵の数を心配する兎舞。残念だが、恐らく向こうに有利な依頼を受けるはずだ。故に、戦闘系ではないだろう。成功体験を積んだ結果か物凄く自信満々だが、流石に戦闘で妖怪に勝てるとは思っていないと信じたい。と、不意に地響きを轟かせながら、此方に巨大な戦車が突撃してきた。


「おお、かっこいいです」


「でっか」


「あれ、警察から討伐を頼まれたリストに入ってる組織だな」


 二階建ての一軒家ぐらい大きな戦車を見上げて、恐怖心や焦りの色もなく呑気に感想を溢す兎舞と水綺。その横で警察から届いた討伐リストを巡った希威が、研究所を戦車にして近隣を蹂躙する組織のページを開く。戦車が研究所も兼ねているのであれば、あの中に研究員も全員居るのだろう。止まる気配がない戦車を壊せば一気に検挙できそうだ。すると、白雪が青褪めた顔で唖然とする偽物三人に、勝ち誇った顔で告げた。


「よしっ、研究員を捕まえた数で勝負や」


「えっ」


「ちょっと待っ……」


「勝負内容は俺等が決め……」


「よーい、どんっ!」


 慌てふためく偽物達を無視し、勝手に勝負を始めて戦車の方に駆けて行く白雪。それに続いて、「シロさん、抜け駆け禁止です!」「俺にも戦車を破壊させろ!」と、兎舞と希威が動く研究所に向かって自分から突進していく。水綺は組織壊滅を三人に任せて、戦慄している偽物軍団に目線を移した。


「腕に自信がないなら私達の真似はしない方がいいわよ」


「えっ?」


「まさか、本物……」


「お、おい! あれ見ろ!」


 本当に水綺達のことを偽物だと思っていたらしく、兎舞の偽物が素っ頓狂な間抜け面を晒す。その後、本物と対面していることにようやく気付き、白雪の偽物と怯えた表情で抱き合った。そんな二人の仲間に、希威の偽物が顔を真っ青にして戦車を指差す。釣られるようにして水綺もそちらに目を向けた。

 戦車が真っ二つに割れている。中からアリみたいにわらわらと研究員が出てきて、巨大な鋏を振り回す白雪から逃げ惑っていた。全部奪っているわけではなさそうだが、百年にも満たない寿命を削られるなんて恐怖しかないだろう。しかも、逃げるべき敵は白雪だけじゃない。棍棒を振り回して戦車の破壊を続ける兎舞や、鉄を炙って溶かしている希威からも逃げなければならない。


 本領発揮した三人を見て妖怪だと察したのだろう。偽物達がわなわなと唇を震わせながら、水綺の横顔に恐る恐る視線を向けた。お前も本物なら何か見せろと言いたげな目を受け、水綺は怯える三人を浮かせる。バッチリ目を合わせていた故、満面に恐怖しか滲んでいない偽物軍団が宙に浮く。必要以上に怖がらせるつもりはない為、白目を剥きそうになっている偽物達を地面にゆっくりと下ろす


「これで信じてくれたかしら?」


 可哀想なほど怖がっている偽物達に、ふんわりと柔らかく眇めた水綺だったが、安心どころか更に恐怖を与えたらしく、謝罪を叫喚しながら慌てて逃げ去った。勝負を放棄した偽物達の背中をポカンと見ていた水綺は、怖がられて戸惑いつつも胸を撫で下ろす。これでもう偽物達は、妖怪の真似なんて危ないことをしなくなるだろう。


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