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人外たちの日常  作者: 甘夏 みかん
第二部
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12.妖怪化したパイナップルと戦う話

「学校内に大量発生しているパイナップルの掃除をお願いします」


 そんな依頼を受けて電話で聞いた先の学校に向かった四人。生徒は全員、体育館に集められていて校舎に誰も居ない。代わりにそこら中にパイナップルが彷徨いている。運動場の真ん中に居座っている巨大パイナップルから、どんどん新しいパイナップルが生まれていた。これを全て掃除するのであれば、まず運動場の親玉をどうにかする必要がありそうだ。教師の案内を断って避難してもらい、水綺は三人を引き連れて運動場に向かう。


「うわっ、でっかいわね」


「結界が張られてるみたいだな」


「生意気なパイナップルやで」


「とまが攻撃した方がいい感じ?」


 校舎の最上階と同じ高さのパイナップルを見上げて呟く水綺。張られた結界の調査を始める希威と白雪の横で、兎舞が水綺の方を見て棍棒を肩に担ぐ。「そのほうが良いかもな。ただ、棍棒も使わない方がいい」という希威によると、パイナップルの周囲に張られている結界は、妖力を吸うタイプらしい。

 つまり、妖力を扱って発動する希威の炎や結界、水綺の超能力は全てパイナップルに届かないということだ。その点、兎舞の場合、基本的に物理攻撃で、妖力を使うのは棍棒を創造して召喚する時だけだ。妖力の塊である棍棒での攻撃は通じないが、最も適任である。


 兎舞は「よっしゃ」と気合を入れ、地を蹴って巨大パイナップルの方に跳躍した。そして、思いっきり拳を叩きつける。殴られた部位からパキパキと亀裂を走らせ、パイナップルは爆発したみたいに周囲へと果肉や果汁を飛ばした。飛び散らなかったパイナップルの下の部分に着地した兎舞は、諸に爆発四散を浴びて前身パイナップルの匂いにされている。


「うぇぇ、ベッタベタです」


「これって食べても大丈夫なのか? 口の中に入ったんだけど」


「もう妖気は感じないし大丈夫だと思いますよ」


 果肉の上に座ったまま嫌そうに顔を歪めた兎舞に、邪魔になるからと預かっていた棍棒を返し、水綺は希威に答えた。あまり焦った様子もなかった希威は、「だよな」と軽い返事をして指に付着した果汁を舐める。「おっ。これ、うっま」と改めて希威が舌鼓を打ち、真似をして周囲の果肉を食べた兎舞も目を輝かせた。すると、白雪がフラフラともぐもぐしている兎舞の方に寄っていく。それに、恍惚とした蕩けた瞳で兎舞の隣に腰を下ろし、首筋にカプッと噛みついた。


「うえっ!? シ、シロさん?」


「ホンマや、めっちゃ美味しい」


「ちょっ、パイナップルならそこら中に散らばってるよ!? とまについたやつだけじゃないから!」


 ビクッと肩を跳ねさせて目を丸くした兎舞が、首筋に付着した果汁しか飲まない白雪に、近くのパイナップルの果肉の欠片を渡す。が、白雪が食べたいのはあくまでも兎舞についたパイナップルの果汁らしい。美味しそうな果肉に見向きもせず、取り憑かれたみたいに兎舞の首筋を甘噛みしている。

 水綺も近くにある土がついていない身を一つ食べてから、「小さいパイナップルの片付けに行きますよー」と、三人にまだ仕事を終えていないことを告げた。もう新しいパイナップルは生まれないものの、大量に蔓延っているパイナップルの掃除は苦労しそうである。


「あの小せぇのは結界を張ってなかったよな?」


「はい、大丈……なんか一斉にこっちに来てません?」


 右手に炎を出した希威に答える途中、水綺は自分達の方に駆け寄ってくるパイナップルに口元を引き攣らせた。まるで狙われているのを把握して、先に攻撃を仕掛けようとしているみたく、猪突猛進に迫って来ている。全員、身構えて襲ってくるパイナップルを迎える体勢に入った。しかし、パイナップルの軍勢は攻撃なんてしてくることなく、兎舞の前で四列横隊になる。


「えっ、何です?」


「何でこの子らは兎舞ちゃんに懐いてるん?」


「何か待ってる感じね」


「試しに指示してみたら?」


 屈んでパイナップルに話しかける兎舞の後ろに、白雪と水綺と希威が集まった。ピシッと綺麗に並んでいるパイナップルは身動ぎ一つせず立っている。「じゃあ、とまの指を甘噛みしてるシロさんを引き剥がしてくんない?」と、兎舞が指を噛まれながら命令した。瞬間、パイナップルの軍勢が一斉に白雪の方に流れ込んでいく。


「ほあァァァァァァァ!?」


「おお、言うこと聞いた」


「えー、かわいい。ずっきー、とま、パイナップルたち飼いたいです」


「帰りにお菓子を買ってあげるから勘弁して」


 運動場を跳梁跋扈するパイナップルに埋もれる白雪。感心する水綺の着物をクイッと引っ張った兎舞が、上目遣いでおねだりしてくる。が、こんなに大量のパイナップルを飼育できない為、お菓子で釣った水綺は、「はーい」と素直に返事をした兎舞に安心する。兎舞が「全員集合ー」とパイナップルを集め、「とまに妖気を頂戴?」と首を傾げて両手を差し出した。従順なパイナップルは、動けなくなるというのに、順番に妖気を兎舞に全て預けて、ただのパイナップルに戻っている。校内に残ったパイナップルは、洗って切って、生徒達に配った。労せず終わった以来で一番苦労したのは、懐いた学生達から兎舞を回収することだった。

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