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人外たちの日常  作者: 甘夏 みかん
第二部
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2.不思議なカボチャに振り回される話

 警察からの依頼で壊滅させた研究施設から大量のカボチャが出てきた。どういった効果を持つのか、処分しても問題ないか、人間に害はないか。など、分からないことばかりの為、追加料金と共に調べてほしいと、それが警察から水綺の元に送られてきた。

 大きな段ボール箱に詰め込まれたカボチャを一つ手に取る。目はなく違う繰り抜かれており、ハロウィンの際に見かけるカボチャのランタンみたいだ。特に妖気も感じず、普通のカボチャに見える。すると、後ろから無機質な機械音が聞こえて振り返った。


『十秒以内に誰かに抱きついて下さい』


「えっ、何? 何て? もう一回言って!」


 どうやら何かを作動させたらしく、困惑している兎舞の眼前に浮いているカボチャ。刹那、『十秒が経過しました』というアナウンスと共に、兎舞の上から大量のカボチャが降ってきた。

 「うにゃあァァァァァ!?」とカボチャの中に埋もれた兎舞に、宙に浮いたカボチャが『十秒以内に誰かに抱きついて下さい』と繰り返す。どうやらぬいぐるみらしく全く崩れていないカボチャから這い出た兎舞は、近くに居た白雪の方にヨロヨロと向かい抱きついた。


「これで良いんでしょ!?」


 と、涙目で白雪にギュッと抱きつきながら睨んだ兎舞により、宙に浮いていたカボチャが床に落ちた後、スーッと雲散霧消する。白雪が事情聴取を始める為、兎舞の頭を優しく撫でてあげながら、何があったのか尋ねた。ちなみに、兎舞の上に落ちてきたカボチャのぬいぐるみも、一緒に消えている。


「兎舞ちゃん、どうやってカボチャを動かしたん?」


「食べたらどうなるのかなと思って口に当てたら動きだしたです」


「こらっ、兎舞。得体の知れないものに口をつけちゃダメだろ」


「罰としてギューっの刑や!」


「うわっ!?」


 気まずそうに罰が悪そうに白状した兎舞に、呆れた様子で説教をした希威の言葉を利用し、白雪が彼女の身体を力強く抱き締めた。罰と称して腕の中に閉じ込めたかっただけらしく、白雪が幸せそうに兎舞の肩に額を擦り付けている。

 本当に兎舞の言う通りなのか確かめる為、水綺は手に取っていたカボチャを見下ろした。そして、口付けをするみたく優しくカボチャに唇を押し当てる。残念ながら何も起こらない。兎舞じゃないとダメなのだろうか? 水綺は白雪に抱き締められ、希威に頭を撫でられている兎舞を呼んだ。


「何です? ずっき……んむっ」


 振り向いた兎舞の唇にカボチャを当てた途端、カボチャがふわりと宙に浮かんだ。「兎舞ちゃんの綺麗な唇がァァァ!」と、慌てる白雪に口を拭かれている兎舞の眼前に移動し、先程と同じ機械音でアナウンスした。


『十秒以内に誰かに愛を伝えて下さい』


「へあっ!? あ、愛!?」


 出された条件に兎舞がボッと顔を赤らめて目を瞠る。今、近くに居る希威と白雪は、告白してもらえるかもしれない可能性に期待していた。かくいう水綺も少し楽しみである。兎舞は「あー、うー」と呟きながら、目を泳がせて躊躇っていた。

 と、愛の言葉を言うのを待っているカボチャが、『十秒経過しました』と容赦なくアナウンスする。と同時ひ、伏目がちに視線を彷徨わせて照れていた兎舞の上から、またもや大量のカボチャが降ってきた。


「みゃあァァァァァ!?」


「どこから降ってるんやろうな」


「仕組みがさっぱり分からねぇ」


 カボチャのぬいぐるみに埋もれた兎舞を見下ろし、白雪と希威が技術力に感心する。確かに、あっさりと壊滅できた割に、驚くほど高い技術力だ。あとで、生きたまま逮捕された研究員に、詳しく話を聞いてみても良いかもしれない。

 すると、技術力に興味をしてしていた間に、カボチャのうちから出てきた兎舞が、水綺の手を掴んだ。そして、両手を使って白雪と希威の手も掴み、少しの間、逡巡してから、紅い顔で叫んだ。


「ず、ずっきー、シロさん、兄さん! だ、大好きです!!」


 恥ずかしさのあまり目を潤ませている兎舞からの熱烈な告白に胸を撃ち抜かれる。白雪も心臓部に手を当てて崩れ落ちており、希威は両手で覆った顔を天井に向けて硬直していた。

 ちなみに、兎舞も両手で顔を隠して恥ずかしさに悶えている。全員忙しい中、条件達成を見届けたカボチャが姿を消した。どうして兎舞の唇じゃないと反応しないのか分からないが、特に危険なものではなさそうだ。


「悪い、兎舞。もう一回」


「んむっ」


 もう検証の必要はないだろう。水綺はそう判断して片付けようとしたが、希威により起動する新しいカボチャ。「何すんのさ、兄さん!」と拗ねている兎舞だが、正直、希威の気持ちはよく分かった。キスにより宙に浮いたカボチャが、兎舞の眼前に移動して条件を告げる。


『十秒以内に誰かに甘えて下さい』


「……ッ」


 面映さを滲ませた顔を朱色に染めた兎舞が、葛藤するみたくうつむいて、目を右に左に動かした。素直になれない彼女が果たして甘えられるのだろうか。

 可哀想になってきたが、心に渦巻く感情は、可愛い兎舞を見れるかもしれない期待だ。と、そんな中でも進み続けていたカウントは十秒に到達してしまい、カボチャが大量に降る。


「ふにゃあァァァァァ!?」


「さっきから悲鳴が猫みたいで可愛い」


「それな」


「誰が猫だ!」


 カボチャのぬいぐるみの中からヒョコッと顔を出し、兎舞が羞恥に満たされた満面で白雪と希威に吠えた。成人しているのに、猫の鳴き声みたいなあざとい悲鳴を出してしまって、照れているのだろうか。可愛いから何も気にする必要なんてないのに。

 むしろ、もっと聞きたい欲に駆られる水綺の視界で、兎舞がのそのそと希威の前に立つ。どうやら彼の所為で三度目をさせられた為、兄に甘えるようだ。期待している希威の手を両手で掴んで頭の上に乗せ、何度かスリスリと擦り付けてから、面映そうに首を傾ける。


「撫でて?」


 最上級のときめきによって、衝動的に兎舞を抱き締めた希威が、無言で妹の頭を撫で回す。きっと緩み切っているであろう顔は、兎舞の肩に埋められていて確認できない。すると、消えたかぼちゃと入れ替えるように、白雪が新しいカボチャを兎舞の口に当てようとした。

 「もうやだです!」と兎舞が両手で口元を隠してしまい、叶わなかった白雪が、「ええやん! 希威くんだけ狡い!」と駄々を捏ねながら彼女と攻防を繰り広げる。結局、負けた兎舞は白雪にカボチャを口に当てられていた。次は自分もしてもらおうと、水綺は密かにカボチャを準備する。警察に返すのはしばらく先になりそうだ。

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