第二話 おじさん、健康診断前に追放。
「カイエン、テメエは追放だ!」
「キャハハハ! ゴミおじさんを有効活用してあげたアタシ達に感謝しなさいよね」
ギルドの酒場で、俺はチームとして一緒に活動していた二人に追放された。
まあ、一緒に活動といってもほぼ荷物運びと記録係だったが。遠巻きに冒険者の連中が見ているのを二人は満足そうに見まわし、再び俺を愉快そうに見下ろす。
「おい、ゴミおじ、ぼーっとしてんじゃねえよ」
赤髪の剣士、コウ。俺を殴るのが趣味だ。筋力トレーニングで鍛え抜かれた腕と言っているが、筋肉はほとんどない癖に太さはあるのでそれなりに痛い。今日も俺を罵りながら殴っている。そして、俺はそれ以上に背中が痛い。
「ゴミおじ、聞いてんのぉ? キャハハ」
青髪の魔法使い、サエ。俺を嗤うのが趣味だ。魔法の研究より美の探求に忙しい女で、化粧の匂いがキツイ。コウも香水の匂いがキツいのだが、サエはいろいろな化粧の匂いが混ざっていてそれがよりキツい。鼻の悪い俺がキツいのだから周りは相当だろう。今も俺達の周りだけは人がいない。そして、俺は目がしぱしぱする。
本人たちは、人が寄ってこない事を二人のすごさによる畏怖ととらえているが、単純に嫌われているだけ。若さというのは時に視野を狭くし、自分の世界が全てだと思ってしまうものだ。そして、俺は目が悪いので普通に視野が狭い。
「と、言うわけで視聴者の皆さん、【おっさん、追放してみた】シリーズ第8弾はこれにて完結! いやー、今回はしぶとかったね! マジ粘ったね。おっさんだけにねばねばだったわ。ご視聴ありがとうございましたー」
「ましたー。ばいばーい!」
コウが撮影精霊に向かってにやりと嗤い頭を下げると。撮影精霊の周りに文字が浮かぶ。
【おっさんの顔www】
【今回のおっさんはマジでしつこかったな。往生際悪杉】
【おっさんはさっさと4ね】
これでもかという汚い言葉の羅列が浮かぶ。そして俺は、腰が痛い。
撮影精霊。冒険者ギルドが開発した魔法によって生み出された冒険者の様子を撮影できる精霊。その様子は、条件を満たせば誰でも見ることが出来るもので、本来は冒険者達がダンジョンで危険な状態にあった場合に助けに入る為に生み出された魔法だったが、今では若者たちの娯楽として扱われるのがメインとなっている。
配信と呼ばれるその行為。ダンジョンで勇敢に戦う様子を配信するのはまだいい。だが、最近ではこうやって人に迷惑をかけ困らせることを楽しむ人間もいる。まあ、これは若者年寄りに限らず人の不幸は蜜の味という奴だろう。
二人は追放カップルと言われており、自身の配信でおじさんや弱者を雇っては追放するということを繰り返しており、犠牲おじさん多数。
だが、なんだかんだでCランクの彼らの荷物持ちをすれば、それなりの金は貰える。
彼らからすれば金の為に若者の腰ぎんちゃくになるおじさんが見世物としておもしろいのだろう。そして、俺は腰が痛い。
なので、俺も割り切って仕事をしていたのだが、彼らにとっては媚びも売らず淡々と仕事をする俺が不満だったようで随分こき使われた。そして、とうとう我慢が出来なくなったのだろう。追放と相成った。
「じゃあ、な! ゴミおじ!」
「キャハハ! ゴミおじダサ~い!」
コウが俺を思い切り蹴ってつばを吐きかける。サエはそれを見て嗤っている。
だが、
「え? なんだって?」
よく聞こえなかった。ほんとすまん。
最近、耳がどんどん悪くなっている。蹴った後に何か言っていたのは分かるが、ほんとわからん。バカにしているわけではないのだが、バカにしているように見えたのだろう。二人が目を吊り上げている。
「「死ね!」」
ああ、今度は聞こえた。
そして、二人は去っていき、俺はチームをクビに、追放された。
そして、俺は首が痛かった。
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