第19話 おじさん、健康診断後に正座
「ああぁぁぁ~~……!」
冒険者ギルドの酒場にあるテーブルに頭を抱え、突っ伏す俺です。絶賛反省中です。
「やってしまった……!」
結局、悪魔の出現もあって二人も疲弊していたこともあり、今日のダンジョン配信はそこで打ち切られ冒険者ギルドに帰ってくることになった。のだが……その原因の一つに確実に俺が酔っていたこともあっただろう。そして、俺が悔やんでいるのはなにより……。
「子どもの未来を守るのが年寄りの仕事なんでね、じゃと! ふわっふわっふわっ! かっこええのう! カイエン! のう!?」
「いやあ! カイエンは良い事を言うたぞ! すばらしい! 儂の誇りじゃあ!」
「それより、飯はまだかのう?」
「配信というのを初めて見たがいやあ時代は変わったのう。アレはおもしろい!」
「カイエン! 最後の悪魔を切ったアレ、もう少し力を抜け。ぶうではなくしゅうじゃ!」
「それより、酒はまだかのう?」
「子どもの未来を守るのが……なんじゃったかの? カイエン? えーと、この紋章が目に入らんか?」
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
爺セブンがうるせええええ!
人の生んだばかりの恥ずかしい黒歴史をほじくりかえしやがって!
そう、冒険者ギルドに帰ってくるまでに、魔酒が身体から抜けきっている感覚にはならなかったが、酔い自体はダンジョンからの帰路でどんどんと抜けていき、理性もハッキリしてきて、自分のやったこと、言っていたことを思い出し、赤面。
若すぎる! いや、若ぶりすぎている! 恥ずかしい!
配信で活躍中のS級冒険者がかっこいいことを言うのはいい! むしろ、俺も冒険者として誇らしくなれる。だが、健康になり始めてA級並みのステータスになったとはいえ、もうかなりのおっさん化した俺がかっこつけてもかっこつかない、ああ、恥ずかしい!
「のう、カイエン、なんて言ったんじゃっけ? この薔薇吹雪の紋様を忘れたとは言わせねえだったか?」
「ああ! うるさいよ! ファ爺! ていうか、あの安酒の魔力濃度はなんだ!?」
俺はアツくなった顔の熱をぶつけてやろうと爺セブンの一人であり、今回の原因の一人であるファ爺をキッとにらみつけると、ファ爺は、曖昧に笑い、
「えーと、あれじゃ、ちょっと家での果物酒のようなものを造ろうかなあとしたんじゃが、余りにも匂いがきつい気がしての……これは、儂が呑むより他のもんに呑ませた方がおもしろ……いいんじゃないかと思っての。いやあ、お前さんの助けになれてよかったよかった、みたいな、のう?」
さっきまで俺を追い詰める雰囲気だったのがどこへやらごにょごにょと誤魔化すファ爺。
まあ、実際に助けられたのは事実だから仕方がない。やはり、自作の酒は荒いということか。
「あー……まあ、感謝はしてるよ。アレがなければ奥の手使う羽目になってたしな。ありがとう」
「……かまわんよ。で! もう一回ここでやってくれ! 子どもの未来を守るのがぁ?」
ああああああああああああああああああああああああああああああああ!
やっぱりめんどくせえ!
爺セブンのほとんどが初めて撮影精霊の配信を見たらしく、とんでもなくハマっていた。
まあ、G級依頼を朝一で終わらせて日が沈むまで冒険者ギルドであーだこーだ毎日同じような話をしている爺さんにとっては良い娯楽となってしまったのだろう。
それに……。
「カイエンさん! いやあ、あんた凄かったんだな! 驚いたぜ!」
「私も爺セブンと一緒に見てた。ていうか、爺セブンに見せてあげたんだけど、楽しかったよー」
何人か顔見知りの冒険者が声を掛けて来てくれる。今日は運よく早めに終わったのか、休みの日にしていたのか、偶然配信を見ていた奴らもいたようだ。まあ、盛り上がったのなら何より。だが、早めに忘れて欲しい!
「あ、カイエンおじさま! お待たせしました!」
「っす……」
若い瑞々しい声が聞こえ振り返ると、サリーさんとユート君がこっちに向かってやってくる。二人は、酔った俺を先に酒場に行かせ、受付に報告をしにいってくれていた。いやあ、年寄りを敬う若者、ありがたいね!
ゴブリンもかなりの数を倒したし、撮影精霊によって証拠になった悪魔退治の報酬もあり、かなりの額を貰えたようで声が弾んでいるし、手に持った金袋も重そうだ。だけど、俺がそれより気になるのは……その後ろからやってきている圧倒的な空気を纏った女性。
「……カイエンさん。悪魔退治での無茶した件について『ギルド職員として』お伺いしたいことがありますが、よろしいですか?」
ユリエラさんが一切動かない不動の微笑で俺に声をかける。
うむ……美人の不動の微笑は胃に来るものがある。
俺は震える身体をなんとか動かし、その場に正座した。
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ゴールデンウィークという事で思いつき短編悪役貴族コメディよければお楽しみください!
『悪役貴族に転生した俺様、「敗者は勝者のものになる」という決闘を繰り返す悪役ムーブをかましていたのだが、ヒロイン達がこぞって決闘を挑んでくるだけど、大丈夫そ?』
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