第10話 おじさん、健康診断後に始まる伝説
「え?」
わけがわからない。
サエ&コウに追放され、ユリエラさんに諭されて健康診断を受けたら健康評価G判定を受けて、即死レベルと言われ、とんでもない量の呪いを掛けられていて、教会で一部解呪してもらって、ドドをなんか殴ろうとしたらドドがふっとんで宿屋の一角がぶっ壊れて、そこにいたサエ&コウ(プレイ中)がドドの下敷きになった。
え?
「カ、カイエンさん! 今のは……いえ、それより、無事でよかった……!」
ユリエラさんが抱き着いてくる。鼻の悪い俺でも匂うふわりとした花のような香り。
そして、涙を浮かべながらも美しく微笑んでくれる。無事でよかった。
あんな大男に襲われればいくら気丈なユリエラさんでも怖かったのだろう。
俺も怖かった。ふっとんだみたいだけど。
「うわーん、おっさーん! ありがとおおお!」
ヒナもなきじゃくりながら俺に抱き着いて礼を言ってくれている。
うん、よかった。本当によかった。
「カイエンさん……やっぱりわたしあなたのことが、すきです……」
「え? なんですって?」
ユリエラさんが何かを言ったみたいだが、良く聞こえなかった。ユリエラさんは顔を赤くしてぶんぶんと首を振った。何か恥ずかしいことを言っちゃったんだろうか。
ほんと早く聴覚の呪いも解呪してもらわないと……だが、今回は聴覚の呪いのせいだけでなく他のことを考えていた。
なんでドドがふっとんだんだろう?
まさか、解呪で……?
「ふふ、やっぱりカイエン、おもしろいね。ほら」
気付けば、シアがそばまでやってきていた。【鈍感の呪い】か【触覚の呪い】か、本当に全然気づかなかった。そんなシアがにやーっと笑いながら預けたタブレットを見せてくる。
「んなっ!?」
カイエン(G・瀕死)
年齢:40
身長:179
体重:85
体力:4444(A)
筋力:4444(A)
魔力:4444(A)
敏捷:4444(A)
器用:4444(A)
状態:呪い(【???の呪い】【封魔の呪い】【鈍化の呪い】【鈍感の呪い】【聴覚の呪い】【触覚の呪い】【視覚の呪い】【味覚の呪い】【嗅覚の呪い】【老化の呪い】)
「なんだこれ……? 全ステータスが……Aクラス? え? 半力の呪いって半分になるんじゃ……」
「半分以下ね。今のステータスは、カイエンがさっき飲んだ変なポーションの効果で一時的に本来の力を取り戻している状態。多分、カイエンにはとんでもない状態異常と呪いのせいで力が低下してる。体調不良がなくなるだけでカイエンはこれだけのステータスになる。全部の呪いが解けたら……ふふ」
シアがにやーっと笑っている。怖い。え? 俺どうなっちゃうの?
「カイエンさんが健康になるのはいいことです! わたしも……うれしいです……」
ユリエラさんが微笑んでいる。うんうん、健康になるのは大事だよね。
俺は自分の拳を見つめる。血色も悪く傷だらけでボロボロの拳。
だけど、それでも必死に生きるために握り続けてきた拳。
それはきっと無駄じゃなかった。
生きていたから。
「まだ、戦えるって事だよな」
追放されて、ようやく見えた自分のこと。
健康診断を受けて良かった。
まずは、健康になる。
そして、本来の力を取り戻す。
その取り戻した力でGだった俺を支えてくれた人たちに少しでも恩返ししたい。
俺は四十肩の痛みに堪えながら拳を天へと突きあげた。
「俺は……健康になる!」
だが、俺はこの時気づいていなかった。何故、俺にこんなにも呪いが掛けられているのか。
誰がかけたのか。
そして、これから俺にやってくる数々の試練と出会う仲間達のことを。
これは俺が栄光と健康をつかみ取るまでの物語。
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