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歴史の真実

「……どうぞ。夜月様」


 婆やは鍵を夜月に手渡す。


「ありがとう」


 夜月は鍵を受け取ると、そのまま書庫へ向かった。

 書庫の中は少し埃っぽく、夜月は顔を顰める。


「どこかにあるはずだ」


 夜月は一冊一冊本を確認する。どの本も年季が入っており、破れたり痛んでいた。

 その中に一冊、他と違い装飾もされていない紙を簡易的にまとめた日記のような本が混じっている。

 ページをめくると、そこには日記形式で日々が綴られていた。古語で書かれているため少し分からない点はあったが、夜月はそれをめくっていく。


「こ、これは……!」


 その日記を読み終わった後、夜月の顔は真っ青に変わっていた。そこには夜月の知っている安倍家と芦屋家の歴史とは全く違う歴史が書かれていた。


「どういうことだ……? じゃあ今言われている芦屋家の汚名は全て濡れ衣で、こちらがしたことなのか。なんということだ。なんと……惨い」


 夜月は口をわなわなと震わせ、呟く。

 信じられなかった。


(父は、兄はこの事実を知っているのか? いや知らない訳がない。おそらく本家でもここに出入りできる限りある人間しか知らないのだ)


 夜月は日記を持つと、そのまま書庫を出た。

 夜月はその足でそのまま本邸にある信明の執務室へ向かう。

 扉を開け、信明の姿を確認する。すぐ横には晴海も居ており、二人はなぜ夜月がここにいるのかと驚いていた。


「お父様、どういうことですか⁉ 本当は私達が、安倍家が芦屋家を襲い、殺したのですか⁉ これでは芦屋家の主張こそが真実ではないですか!」


 夜月は大声を上げる。その言葉と、夜月の持っている日記を見て信明は全てを察した。


「夜月……勝手に入ったのか」


 信明は頭を抑える。


「なぜ全てを知っていて、公開しないのですか!」


 夜月の言葉に、信明は呆れた顔をする。


「今更、遅い。千年にもわたって信じられていたことを今更否定などできようか。例え、それが偽りでもな。 それにこの事実を公開すれば安倍家の信用は地に落ちる。千人を超える安倍家が、誹謗中傷を浴びるだろう。お前の正義感のおかげで」


「ですが……だからと言って、芦屋家に汚名を着せ続けるのは違うじゃありませんか!」


「彼らは少数だろう。私達とは人数が違う。それにあそこまで弱小となった芦屋家を潰していないのはひとえにこちらの優しさだ」


 信明は圧倒的に上からの傲慢な一言を吐く。

 だが、それが現実であった。見逃してやっている、という考えが根底にあった。


「お父様から、公表するつもりはないのですか?」


「当たり前のことを聞くな。これは陰陽師界を揺るがすほどの大きな情報だ。ただ、友達を救いたい、なんて子供じみた理由でこの情報を扱うな」


 信明は夜月を睨みつける。


「では、私が公表します!」


 そう言った瞬間、夜月が手に持っていた日記が何かによって奪い取られる。


「えっ⁉」


 夜月は突如手から消えた事実に驚きを隠せない。

 咄嗟に晴海の元を見ると、そこには晴海の周囲に浮いている白き鱗に包まれた蛇が日記を加えている。

 その蛇は宝石のように眩い輝きを放つ瞳で、夜月を無機質に見つめていた。


「夜月、これは君が扱うには過ぎたものだ。私が預かっておくよ」


 蛇から日記を受け取った晴海はにっこりと笑う。そのまま晴海は虚空に日記を投げると、日揮はどこかへ消失した。


「そ、それがなくとも、公表はできます! 今は世界中に公表することが可能なのですから!」


「証拠もなしにか? 反対にこちらはお前が芦屋家の少年と仲が良い証拠などいくらでも提出できる。仲の良い少年の地位を上げようとする少女の戯言にしかならん。大人になれ、夜月。芦屋家はもう、救えないのだ」


 信明は淡々と夜月に告げる。


「そんな……ことはない! 絶対に!」


 夜月はそう言って、部屋を出て行った。


「随分、入れ込んでいるようだな……」


 信明はため息を吐いた。

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