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書庫

 夜月は部屋に戻った後も、疑問は解けなかった。


「お父様は道弥は洗脳を受けている、と言っていたが……私の知っている道弥は洗脳を受けるような男じゃない。誰よりも自分を持ち、嘘などつかない」


 と夜月は呟く。


「私は何を言っているんだ。お父様よりも、友達を信じて……。だけど、知りたい。道弥が嘘をつくはずがないと、今でも思えて仕方がないんだ。だから……」


 夜月は自らの疑問を解決するために安倍家本邸へ向かった。

 夜月は普段、別邸に住んでいる。呪われた子として本邸から追い出されたためだ。

 徒歩二十分程で夜月は本邸に到着した。本邸は周囲は塀に囲まれ、正門は陰陽師である警備員が見張っている。


「夜月、様……お久しぶりです」


 警備員は普段来ない夜月に驚きの表情を浮かべる。


「ああ。通してくれ」


 夜月は軽く頭を下げると、そのまま中へ入っていく。

 夜月の目的は、本家でも限られた者しか入ることのできない書庫だった。陰陽術というものは基本的に一子相伝であることが多い。

 技術を隠すことで他者と差をつけ、切磋琢磨してきたという歴史からもそれは明らかだ。

 書庫にはその家の歴史、すなわち秘伝の陰陽術が眠っている。

 夜月はそこに、安倍家と芦屋家の過去も眠っているのではとあたりをつけたのだ。


「私……あの人嫌いなんだよなあ……」


 と夜月は顔を顰めつつ、ある人物の元へ向かった。


「婆や、書庫のカギを。お父様が中の書物を取ってきてと」


 夜月はお婆さんに声をかける。

 婆やと呼ばれるその女性は御年八十歳ながらも未だ現役の陰陽師である。長年安倍家に忠実に仕えており、大切な書庫の鍵の管理を任されるほどである。

 叩けば折れそうなほど背骨は曲がっており、体も小さいのだが、その眼光は全く衰えてはいない。夜月はそんな婆やが苦手であった。


「そうですか」


 と婆やはにっこり笑って、立ち上がると鍵を取りに行った。


(助かった……!)


 夜月は内心ガッツポーズをとりながら、婆やが戻ってくるのを待った。

 婆やは鍵を持って、それを夜月に手渡す。

 直前に、婆やは突然その鍵を引っ込めた。


「書庫には貴重なものも多い。信明様に確認させていただきます」


 婆やはそう、夜月に告げた。

 夜月の動きが一瞬止まる。婆やはどこか疑うような目で夜月を見つめる。


「父は忙しい。確認するのは自由だが、私が父に任されてきたと婆やに伝えたことは、必ず父に言うように」


 夜月は平静を装い淡々と言う。

 婆やはそれを聞き、沈黙する。

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