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間抜け

「ふう、覚悟の決まった女だ。なら別の条件ならどうだ?」


「……別の条件?」


「無理やり友人と戦わせたりなんてしねえよ。この森には四級妖怪の中鬼が放たれている。そいつらが青勾玉を持っている。だが、その中の一匹が百点の白勾玉を持っているという情報が手に入った。いわゆる当たりだな。そいつは北に居るらしい。その白勾玉を寄こせばあのことは絶対に言わない。どうだ?」


「お前のような下種が約束を守るとは思えないが?」


「俺は女には優しいんだぜ。約束は守るさ」


 しばらく考えるそぶりを見せたが、夜月は最後にため息を吐く。


「仕方ない。北だな」


「頼んだよ、夜月。白を持ってきてくれ」


「最後に一つだけ忠告しておいてやる。お前、道弥を狙うつもりだろうが、お前如きに道弥は倒せんぞ」


「……お熱いこって」


 少しイラっとした表情を見せたが、陸は夜月の言葉を聞き流した。

 こうして夜月は北に向かって去っていった。


「馬鹿な女だ。三級なんて、受験生の誰も倒せねえ」


 陸は去っていく夜月を見ながらほくそ笑む。陸は叔父がわざわざ忠告したことから、北には三級以上の妖怪がいるとあたりをつけていた。


「けどそれじゃあ誰も白勾玉を手に入れられないのでは?」


 従っている陰陽師の一人が首を傾げる。


「あの百点は誰にもやるつもりがねえのさ。確実にトップ五になるにはあの女は邪魔だ。あの女はイレギュラーの化け物に仕留めてもらって俺は調子に乗った一位にお灸を据えに行く。早くやらねえと、兄貴にあの馬鹿の勾玉を先に取られるかもしれねえ」


「なるほど! ですがもしあの女が百点を取ってきたらどうするつもりなんですか?」


「ふふ。約束は守るさ。本当に持ってきたらな。その前に、全てをぶちまけてやる!」


(俺達御三家は常に家柄が付いて回る。家を隠して関わるなんて、長くは続かねえのさ)


「俺が負けるかよ。何も知らねえ滑稽な男によ。夜月が安倍家であることも知らねえまぬけに」


「コッケイ! コッケイ! ヤツキガアベケでアルコトモシラナイマヌケ!」


 八咫烏が主人の言葉を繰り返す。


「その通りだ。その馬鹿を探してこい」


 陸は八咫烏を放った。

 道弥を狙うために。


 


 夜月が北を目指して歩いている頃、夜月の仲間は不安そうに夜月を後ろから見つめていた。


「夜月さん、なんか怪しくありませんでした?」


 仲間の一人が声をかける。


「何か企んでいるのは間違いない。だが、本当に百点があるのなら狙わない訳には行かないだろう」


 夜月も奴が企みもなしに自分に百点のありかを教えたとは思えなかった。

 だが、同時にこの情報は嘘ではないと感じる。

 それは宝華院家の情報網の広さを知っているからだ。


 純粋な武力では圧倒的に安倍家の方が上だ。だが、宝華院家は分家も多く、情報網も広い。何か自分の知らない情報を得ている可能性が高かった。


「ですが、渡すんですよ、ね?」


「いや、渡さない。情報だけ利用して私が一位を取る」


(もし百点を取れれば、一位にも届く。そうすれば、道弥も少しは私を認めてくれるかもしれない)


 夜月も本気で一位を取りに来ていた。

 百点である白勾玉を得ることができるのなら、一位も夢ではない。そう考えていた。


(あいつから道弥にばらされる前に言わないと……。昔からずっと、ずっと言わないと、とは思っていた。だが、怖かったんだ。あの楽しい関係が壊れてしまうのではないかと、そう思ってしまった。私は臆病者だな)


 夜月は白勾玉を求め、北へ進む。


(安倍家を憎む男と、なぜ安倍家の女が仲良くなってしまったのか……。私は神様を恨むよ)


 その目からは悲壮感と覚悟が同居していた。

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