がしゃどくろ
「良い返事だ、がしゃどくろ。なに、心配するな。お前が約束を守れば、ガキはしっかりと解放してやる。こいつらに興味はねえ」
「駄目です――むぐっ⁉」
叫ぶルカの口元が無理やり抑えられる。
「子供に乱暴しないでくれっ!」
「わあーったよ。おい、抑えるの止めろ。じゃあ、お前の気が代わる前に契約と移ろうか。お前に名もくれてやるよ」
灰長は欲望を隠さずに笑う。
その顔は喜びを、興奮を隠せていなかった。
(きた……! 遂に、こいつさえいれば、俺も一級に! もう落ち目なんて二度と言わせねえ)
「臨兵闘者皆陣列前行。我が名は灰長与次郎。灰長家にその名を連ねる陰陽師也。我が名において、命じよう。恐骨よ、我と契約を結び、我が式神と成れ。急急如律令!」
灰長の呪と共に、霊気が少しずつ仁骨を包み込む。
だが、仁骨から返事はない。
そのことに気付いた灰長が睨みつける。
「……契、約を、結ぼう」
とぎれとぎれに、仁骨は答えた。
それにより、仁骨を包む光が徐々に眩しくなる。
「ハハハ、遂に来たな、俺の時代がァ! 恐骨、お前は俺の式神だあああ!」
灰長は両手を広げ、高笑いを見せる。
そして、次の瞬間……仁骨を包む光がまるでガラスのように砕け散った。
「……は?」
その光景に灰長は小さく言葉を漏らした。
(どういうことだ? おかしい……明らかに、繋がりを感じねえ!)
普通であれば感じる、式神との繋がりが感じ取れないだ。
その時、灰長は気付いた。
自分よりはるかに格上の妖怪は、相手が認めても契約ができないという事実に。
「馬鹿な……! 俺は二級だぞ!? 一級妖怪ですら、契約はできる筈だ……」
一級妖怪ですら、灰長は本来契約できたはずだ。一級妖怪であれば。
「ふざ……けるなよ!」
灰長が仁骨を睨みつける。
契約ができなかったことに気付いた部下達も動揺し、ナツキを抑える手を緩めてしまった。
「やったあ!」
その瞬間、ナツキが叫ぶ。
いつもであれば、聞き流したであろう一言。
だが、それは苛立っていた灰長の逆鱗に触れた。
「ガキがっ……!」
灰長は思い切り、ナツキの顔面を殴り飛ばした。
ナツキはそのまま鼻から血を噴き出しながら、地面を転がる。
「舐めやがって。こうなったらガキを人質にこいつを祓って……」
そう言って灰長は仁骨の方へ目を向ける。
その瞬間、灰長の全身を悪寒が襲う。
圧倒的死の気配。
(ど……どういうことだ? あいつはただのお人好しの馬鹿で……俺は手綱を握っていた、はず……)
全身のあらゆる部位から、汗が溢れ出す。
震えが、恐怖により体が震えていた。
灰長は正しく理解していなかったのだ。
特級妖怪が、どれほどの者なのかを。
特級妖怪はたった一柱ですら、国家を転覆するほどの妖怪であるということを。
「ナニ、ヤッテンダァ? オマエ」
先ほどのおどおどした態度とは全く違う。
圧倒的格上からの視線。
(だ……駄目だ。甘さや、言動から俺は奴のことを誤って理解していた。奴は……一級程度では……ない!)
そう理解した時には、目の前は巨大な掌で覆われていた。
次の瞬間には、灰長は潰されていた。
「ひ、ひいいいいいいいいいい!」
灰長の部下は、目の前で灰長が潰されたことでパニックになり全速力で逃げ出した。
残されたのは、少女達と仁骨のみ。
「ごめんなあ。おらが傍に居たせいで怖い目に遭わせちまった」
仁骨は泣きながら、ナツキを抱き締めた。
「骨さんは、悪くねえよ……痛くも、ないし」
ナツキは泣きながらも、そう言った。
「痛かったろうに。ナツキは偉いなあ。おらよりずっと強い。すぐに治してやるからな」
そう言って優しく撫でると、少しずつナツキの顔が治り始める。
「怪我が……!」
「覚えたんだあ。皆を助けられるようにな。治って良かったよお」
仁骨はそう言って笑った。
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