終わりましたよ
北斗が頬を叩かれて目を覚ますと、そこには道弥と式神達の姿があった。
(なんだ……この化物達の集まりは!? やはりさっき戦ったのは九尾だ。そしてあの白狼は大口真神か? なぜこれほどの大妖怪達が一人の陰陽師付き従っているのだ)
自分も聞いたことがある日本を代表する大妖怪の姿に混乱する北斗。
そう考え道弥を見た瞬間、その凄まじい霊気に当てられ、自らの体が震えていることに気付いた。
(この子供も……なんという怪物! なぜだ、一級陰陽師は全て出払っていたんじゃ? 何者なんだ⁉)
「お前は……何者なんだ?」
北斗はなんとかそう口にした。
「お前がそれを知る必要はない。もう死ぬだけの存在だ。桜庭という女性の陰陽師を殺したのはお前か?」
道弥に問われた時、桜庭という存在こそが道弥の逆鱗であったことを察した。
そして同時に理解した。
もう自分は助からないだろうと。
「ハハ! お前も復讐で来たのか! 覚えていないがおそらく俺だろう。殆どの陰陽師は俺が殺した! そして……お前も!」
北斗はせめて一矢報いようとぼろぼろの足で道弥に襲い掛かった。
道弥は興味なさげに手を伸ばすと、結界を張りその一撃を防いだ。
結界には傷一つつくことはなく、格の違いを北斗に感じさせた。
「ああ……こんな奴に、桜庭先輩は」
と道弥が呟く。
そこで北斗は町に全く他に妖気が感じられないことに気付いた。
「他に多くの妖怪が居たはずだ。皆、どこへ?」
「全て殺した」
道弥は淡々と告げる。
「嘘をつけ! あの数をそう簡単に……」
北斗は動揺した声でそう言った後、周囲を見渡す。
(こいつらなら有り得る、のか?)
北斗は自分の集めた妖怪が全て殺されたという事実に震える。
「本当に……あの数を殺したのか。この化物め! だが、俺達妖怪は全てを人間に奪われた。それを奪い返して何が悪い! これはお前達への罰なのだ! 全てを受け入れろ!」
「お前に何があったのか知らないし、興味もない。だがその理屈でいくのであれば、奪い返したお前がまた奪われても仕方ないよな? 水行・水閃」
道弥が呪を唱えると、護符から一筋の水が光線のように放たれた。
その水は北斗の頭部を貫き、首ごと消し飛ばす。
動かなくなった北斗の姿を見ても、道弥にはなんの感慨も湧くことはなかった。
「終わりましたよ、先輩」
寂しそうに、道弥はそう呟いた。
◇◇◇
そんな道弥の姿を、数キロ程先の山の上から見ている姿があった。
白スーツを纏った男こと白である。
「なんやあれ、化物過ぎるやろ! 北斗も一級近いからある程度頑張ると思ったけど、話にもなってへんやないか。それに周囲は九尾に、真神に、鞍馬天狗。それに……酒呑童子までいるやないか。あいつ、僕の誘い断った癖に……」
と怒っていた所、道弥が白の方向を見た。
「え?」
白は一瞬で自らが覗いていたことを気付かれたことを察した。
同時に逃げだしたが、少し遅かった。
上空から炎を纏った隕石が白に向かって振って来たのだ。
凄まじい轟音と共に、山の一部が消し飛んだ。
その地獄のような跡から、白は立ち上がる。
「やばァ……数キロ先の僕をノンストップで殺しにくることあるぅ? 至近距離なら危なかったでほんま」
その右腕は先ほどの一撃で消し飛んでいた。
「幸い、追撃はなさそうや。はよ帰ろ。あんな陰陽師おったんかいな。計画変更や」
白はそう言って姿を晦ました。
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