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北斗

 人型の美しい女の姿をした妖怪が居た。

 妖怪であることを隠して生きていたその女は人間と愛し合い、やがて村で子供を産んだ。


 その子は『北斗』と名付けられた。

 北斗は人として、妖怪であることを隠して育てられた。

 当時は妖怪差別が酷かったからだ。

 まだ子供である北斗はなぜ妖怪であることを隠さないといけないのか、分からなかった。


 だが、子供が完全に妖怪であることを隠すのは困難だったのだ。

 なぜばれたのか、北斗はよく覚えていない。

 だが、ばれた瞬間、周囲が騒ぎ始めたことを覚えている。

 母は必死で北斗を逃がそうとした。


「に、逃げなさい北斗! 森へ、人里に戻って来てはなりません!」


「い、嫌だ! 一緒に居る!」


 そんな北斗の母に、人間は躊躇なく武器を振り下ろす。


「妖怪の癖に何言ってんだ! 人間の振りなんてしやがって!」


 金属バットなどの武器で袋叩きになった母はすぐに動かなくなった。


「ああああああああああああああああああああああ!」


 北斗は涙を溢れさせて叫んだ。


「おい、このガキも早く殺すぞ」


「ああ」


 北斗の目には、母を殺したゴミしか映っていなかった。


「殺してやる!」


 逆上した北斗は初めて全力で力を振るった。

 襲ってきた人間を皆殺しにして、北斗は山に逃げた。

 その後、何人もの陰陽師に追われながらも必死で逃げのびた。


 人への恨みを貯め込み、人を時に喰らい、そして力をつけた。

 そしていつしか北斗は山の妖怪の中の王となった。

 王となった北斗は母とともに生きた村を襲い、そしてその村人達を滅ぼした。


 その後陰陽師がやって来たが、北斗ではない別の妖怪を原因と間違い祓ったのだ。

 元々人口は数十人しか居なかったこともあり、その妖怪が祓われた後も人は戻らず廃村となる。

 その廃村に北斗を中心とした妖怪は棲み付いた。


 その廃村の中に北斗は母の墓を立てた。


「母さん、ようやく取返したよ。ここでゆっくり過ごそうと思うんだ」


 北斗は墓を前にして、母に伝える。

 だが、憎しみの連鎖はここで終わらなかった。


(住む妖怪の数も増えてきた。もっと広大な場所が必要だ。夜杉町……あれほどの町があれば。そして教育も。だが、一度占領できてもあの規模ならのちに多くの陰陽師が奪還に動くだろう。今の俺なら……)


 多くの妖怪や人間を喰らい、北斗は強くなってはいた。

 だが、ふんぎりがつかなかった。

 そんな北斗の元にある妖怪が訪れる。


「誰だ? 俺を殺しに来たのか?」


 北斗は白スーツの謎の男に尋ねる。

 白スーツの男は笑顔で返す。


「ちゃうちゃう! 誤解や誤解! むしろ協力と言ってもええ! 人を嫌っているのに、人の居ない村に住む変わり者の妖怪・北斗君」


「お前には関係ないだろう?」


 北斗の背中から羽が出る。

 いつでも戦えるようにだ。


「ごめんごめん。まずは自己紹介から。僕は(はく)いうんや。関係はあるで。いつまでも日陰者では居たくないってことやろ? 君のその行動は他の妖怪へのエールとなる! 日本は人間の物じゃない。妖怪の物だって思わないか?」


 白と名乗った男は怪しい笑顔を浮かべながらそう言った。


「現実的に我等は日陰として生きているではないか」


「それを変えたい。そのために僕達は居るんや! 実は二週間後、九州で暴れる予定なんよ。一級陰陽師はそこにしばらくかかり切りになる。その時なら、君達も夜杉町を取れるで。おすすめ!」


 白の言った情報は北斗にとっても耳よりな情報であった。

 白が消えた後に北斗は考える。


(何が目的かは分からんが……利用できるものは利用すべきだ。それにしてもあの男、一級近い俺よりはるかに強かった)


 北斗達の廃村は盗んできたテレビやラジオを見ることもできた。

 情報をあつめていると、本当九州地方に一級陰陽師はかかりきりになっているようだった。

 その情報を掴んだ北斗は仲間を連れ、夜杉町を占領に向かった。

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