プリシラVS八雲②
「最初からお前を狙えばよかったんじゃ!」
プリシラは腕の血を装甲を強化し、その爪を振るう。
俺は直前に護符を取り出すと、結界を展開した。
「臨兵闘者皆陣列前行。悪しきものから、我を守れ。急急如律令」
その結界はプリシラの一撃を確かに防いだ。
「ぐう……! 硬い。だが、儂を……舐めるな!」
プリシラはさらに一撃を加え、結界にヒビが入る。
「八雲、俺も襲われたのだから、参戦するぞ? 悪く思うなよ。火行・千年刀火」
結界が砕けると同時に、俺の周囲には千の刀が出現する。
その刀は全て焔を纏っていた。
俺がプリシラを指さすと、刀が次々とプリシラに向かって放たれる。
「なんと……」
プリシラは一瞬動きが止まるも、すぐに全身を血で作ったドームのような物で覆う。
だが、刀はそれをお構いなしにドームに刺さる。
「どこまで防げるかな?」
千の刀が続々と突き刺さり、針鼠の様になっている。
そして、遂にドームが砕けた。
砕けるとすぐさま、プリシラは俺を狙う。
だが、それをするにはまだ刀が多すぎるな。
俺にその腕が届くまでに、数百を超える刀がプリシラに突き刺さる。
刺さった刀が燃え盛り、プリシラは完全に動きを止め沈黙した。
かなり効いてそうだが……まだ生きているな。流石は始祖だ。生命力が尋常ではない。
「ガアアアアアアアアアアア!」
プリシラの咆哮と共に、刀が全て消し飛ばされる。
全身の装甲はほどんど砕けており、その目は怒りで充血している。
「おいおい、俺と遊んでたのに、浮気するからだぜ。大人しく俺とやろうや」
八雲が再度プリシラに覇璃魔を振り下ろす。
それをプリシラは蹴りで受け止める。
「我が領域」
プリシラは右手を地面につけると、地面が全て奴の血に染まる。
その血はどんどん地面を呑みこみ、周囲五百メートル程が全て真っ赤に染まった。
これは……なんだ?
嫌な予感がするな。
おそらくこの空間内での戦闘だとバフがかかるなどの効果があるのだろうが、そのままにしておく訳にはいかんな。
「浄化結界」
俺は呪を唱える。
それと同時に、赤く染まった地面が浄化され、普通に戻る。
俺は結界の範囲をどんどん広げて行こうとするが、八雲はそれに気付き、声を上げる。
「俺は要らねえぞ!」
あくまで補助は要らないスタンスのようだ。
俺は結界を自分の周囲だけに留める。
八雲は相手の空間内で戦うことを決めたようだ。
八雲が覇璃魔を振るうと、それを躱しながらプリシラが蹴りを放つ。
それを八雲は右で持っている刀で受け止めると、左手で持っている刀を振り下ろした。
プリシラが真っ二つになる、と同時にプリシラの全身がまるで血でできた霧のように霧散した。
「死んで……ねえな、おそらく」
八雲はそう呟くと、背後に気配を感じる。
「こっちじゃ!」
八雲の右脇に蹴りが思い切り叩きこまれる。
骨が砕ける音と共に、八雲が何十メートルも吹き飛んだ。
「効いたぜェ! やるじゃねえか!」
八雲はそう言いながら立ち上がるも、既にプリシラは次の攻撃に入っていた。
「血茨」
血で染まった地面から、大量の血でできた茨が生み出され、八雲を覆う。
八雲は覇璃魔を振るうも、凄まじい硬度を持ったその茨は八雲の覇璃魔の一撃を耐えそのまま八雲を貫き、拘束する。
「が……こんなこともできんのか」
八雲は力まかせに拘束を解いているが、まだ時間がかかりそうだ。
プリシラはこちらを向くと、地面から大量の茨がこちらに向かって放たれる。
「まるで植物園だな」
それにしては赤すぎるが。
視界が全て茨で埋まる。
茨に目を取られていたその時、背後から迫るプリシラに気付く。
あまりにも早すぎる!
そうか……あの領域内だと、自由に瞬間移動が可能なのか。
自分の結界外の領域から、一瞬で現れたプリシラによりその効果に気付く。
「悪しきものから、我を守れ」
咄嗟に結界を展開するも、プリシラの蹴りを受けヒビが入る。
もたん……か。
二撃目を受け、結界が砕け散る。
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