プリシラ
鉄鼠の祓除依頼から二週間。
ようやく津野港も通常通り営業を再開していた。
今もドイツから大型貨物船が入港する。
大量の輸入品のコンテナが運ばれている中、その貨物船から静かに降りる一名の姿があった。
闇夜に照らされるのは、金色の髪。
真っ赤な、燃え盛るような瞳に、驚く程美しい容貌。
背中から見える蝙蝠のような羽が人間でないことを示しているが、絶世の美女がそこに在った。
すらりと芸術品のように引き締まった体躯は、見るもの全てを魅了するだろう。
「ふふ、ここが日本か。楽しみじゃのう」
美女はそう言って妖艶に笑う。
その彼女の元に、一人のスーツ姿の男がやって来て跪く。
「レイン・ブラッドシーク・プリシラ様。日本にお越しいただきありがとうございます。こちらに。三日後の集会に出て頂ければ。それまでは、こちらでホテルを手配しました」
「ああ。密航を手助けしてもらう代わりに、お前達を手伝えという話じゃったな、確か」
「はい。我等の目的にはプリシラ様が必要です」
「それなんじゃが……やっぱりやめじゃ。せっかく日本に来たのだから自由に遊びたいしのう」
とカラカラと笑う。
その言葉を聞いた男の顔が変わる。
「ご、ご冗談を……そのような我が儘は許されませんぞ」
「許されるのじゃよ。我ならな。とっとと消えい」
その言葉を聞いた男の顔が怒りに変わる。
「下手に出れば調子に乗りやがって……!」
男の舌が伸びて、プリシラを襲う。
だが、その舌がプリシラに届くことはなかった。
男の首が刎ねられ、宙を舞ったからだ。
「ははは。では、どこに行こうかのう。観光と言えば、きょうと? らしいし、そこへ向かおうかの。日本は何百年ぶりかのう」
プリシラはスキップをしながら、港を去った。
数時間後、男が殺された現場に訪れる者が一人。
白スーツを着た張り付けたような笑顔を浮かべる糸目の男。
「うっそ! 連絡ない思って来たら、死んでるやん! しかも一撃……やっぱり一筋縄ではいかんなあ。計画が早速崩れたやん。計画崩れたこと、彼に報告くらいはしとかなあかんなあ。パーティは成功しないとおもろないからな」
死体を見た後、男は静かに消えていった。
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