狩り
十秒程して、再び真から返事が返ってくる。
『主様、一キロメートル北西に大鬼の群れが。大鬼が八匹程。中鬼も居りますがいかがなさいますか?』
『いいな。案内を頼む』
俺は真を顕現させる。
当然ながら小さい状態である。
「こ……これは狼の妖怪⁉ だが、随分と神々しい……」
真面目そうな男が驚きの声を上げる。
それは当然、正真正銘の神狼だからな
「いい式神持っているっすねー。その子で探すんすか?」
「獲物を見つけました。確認ですが、二級妖怪以上の祓除でも問題ありませんよね?」
「なっ……⁉ 君が強いのは知っているが、冗談は止めてくれ。二級妖怪と会敵したら、我々も守り切れないぞ? 自殺みたいなものだ」
「俺一人で祓除できます。少し遠くで待っていただいても構いません。祓った後の首だけ持ってきますよ」
「本気で言ってそうだね~。問題ないし、いいっすよー、俺がついて行くっす」
「お前まで何を言っている!」
「佐渡さんが、『俺よりはるかに強い』って言ってたんでね。二級を祓ってもおかしくねえっすから」
佐渡さん顔が広いな。
有難い。
「私は……何かあったらすぐに逃げるからな!」
真面目そうな男は少し青い顔をしながらも、最後は了承した。
「真、案内を頼む」
「こちらです」
真に連れられ、大鬼の群れの元へ向かう。
俺達が近づく頃には、大鬼もこちらに気付いていたようで、既に臨戦態勢であった。
「む、群れじゃないか! いったい何体居るんだ。き、聞いてないぞ!? もう、終わりだ!」
真面目そうな男は絶望した顔で叫ぶ。
この場で気絶しそうな勢いだ。
さっさと片付けるか。
「火行・火矢雨」
俺は手をかざすと、俺の周囲に千を超える火で象られた矢が生まれる。
「なっ……」
火矢を見た真面目そうな男が間の抜けた声を上げた。
その矢が群れめがけて一斉に放たれる。
一本一本の矢が鬼達を貫き、燃やす。
「ギャ――」
悲鳴を上げる間もなく、瞬く間に消し飛んでいく大鬼達。
矢が無くなる頃には、鬼達は一体も残っていなかった。
「これでいいですよね?」
「あ……ああ。ご、合格だ」
真面目そうな男はすっかり腰を抜かしていた。
「いやー、まじで強いっすねー。火矢雨は俺を使えるけど、あれほどの火力も、数も出ないっす」
若い男は素直に感心しているようだ。
俺は残った大鬼の角を持ち、戦場山を後にする。
開始位置に戻ると、先ほど代表して話していた試験官が居た。
霊力的にも二級陰陽師だろう。
「ん? もう終わったのか?」
「終わりました。これが証拠です」
俺は大鬼の角を投げる。
「これは……大鬼の角か?」
「はい」
「なるほど。合否は後日サイトで表示される。待っておけ」
こうして俺の昇級試験は終わった。
当たり前だが、合否発表のサイトに俺の受験番号は掲載されていた。
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