昇級試験
昇級試験当日。
初日の試験会場は東京。
家から行けるのは助かるな。
向かうはとあるイベント会場。
前回より小さいのはそもそも受ける人数が少ないからだろう。
イベント会場には既に多くの人が集まっていた。
年齢は高校生くらいから、四十代まで様々である。
だが、俺が会場に入った瞬間、皆の視線が一斉にこちらに集まる。
またこれか……。
どうやらよほど注目されているらしい。
人によっては憎らし気にこちらを見ている。
だが、こちらが視線を向けると、一様に目を逸らす。
よく見ると、
俺は受付に向かう。
「受付は済んでいる?」
「はい」
俺はQRコードを見せると、読み取り機で読み取られた後受付番号を受け取る。
そこには七十二と記載されている。
一から二百までは第二会場らしい。
おそらく選んだ科目別に会場が分かれているのだろう。
俺が選んだのは結界術。
別にどれでも良かったが、陰陽五行術の場合は会場を破壊する可能性を考えた。
「次、三十二番。前へ」
「はい!」
一人の男性が奥に向かう。
奥には試験官であろう三人の陰陽師が護符を持ち待機している。
「それでは、結界術の展開を。結界が破壊されるまでに時間をカウントする。呪具の使用は一切が禁止されている。それでは始め」
「臨兵闘者皆陣列前行。悪しきものから、我等を守り給え!急急如律令!」
男性の周囲に結界が展開される。
それと同時に、試験官が烏天狗の式神を召喚した。
三級妖怪相手にどれだけ持つかを試されるようだ。
烏天狗はその剣を結界に振るう。
その一撃をなんとか、男性の結界は耐えきった。
「ぐっ……」
だが、結界には少しだけ既にヒビが入っている。
長くは持たんな。
続いての二撃目を受け、結界が砕け散る。
「ああっ……!」
男性は悲しそうにその場に崩れ落ちる。
「カウントは……四秒!」
とぼとぼとその場を去る男性をよそに、受験生は皆言葉を交わす。
「合格圏内なら、三十秒は欲しいな」
「時間が延びると、他の二人も式神を召喚してくるからな。そこからが本番だ」
その後も次々と受験生が結界を展開してはその結界が破壊される。
受験生が話している通り、二十秒を超えると、もう一人の陰陽師も烏天狗を召喚してきた。
二体の式神相手の攻撃に、三十秒結界を展開できた者はまだ出ない。
「次、六十三番。前へ」
そう言って前に出てきたのは夜月だった。
そうか……夜月も受けているのか。
「それでは、結界術の展開を。結界が破壊されるまでに時間をカウントする。呪具の使用は一切が禁止されている。それでは始め」
「臨兵闘者皆陣列前行。悪しきものから、我等を守り給え。急急如律令」
そう言って、夜月は周囲に結界を展開する。
召喚された烏天狗が再び一刀を結界に浴びせる。
だが、夜月の結界はそれを受けても、びくともしない。
去年より結界術の精度が上がっている。
彼女の努力が見て取れた。
その成果か、烏天狗の攻撃を受けても、決して傷つくことはない。
二十秒を経過し、もう一体の烏天狗が投入される。
二体の烏天狗相手であっても、決して揺らぐことはない。
「おい……もうすぐ一分を超えるんじゃねえか?」
「あの子、確か去年の試験の上位組だろ。安倍家の……」
夜月を見て、ざわめく会場。
そして、一分が経過した。
すると、今まで動いていなかった三人目が腰を上げると、式神を召喚する。
「行け」
その言葉と共に召喚されたのは、大鬼。
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