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派手にいこう

(え?)


 ゆまはドアノブを掴む直前、体が硬直する。

 血の気が引いた。目の前が真っ黒になり、地面が揺れるような感覚。

 その言葉の主がりんねだとは思えなかった。

 だが、それがりんねの声であることは、傍で良く聞いていたゆまにはよく分かった。分かってしまう。


「分かるー。化物に顔傷つけられたらいいのにね。そうなったら、引退でしょ!」


 その声も良く知っているメンバーの声だった。


「可愛くないから、あんな色物にならないとテレビ出られなかったのよ」


 手が震えた。

 それ以上聞きたくなかった。

 ゆまは結局、その後すぐに事務所を出て自宅に帰った。


 部屋に籠り、電気も消えた天井を呆然と見つめる。その頬には涙の跡があった。

 色々な考えが、ぐるぐると脳内を支配する。


(皆、応援してくれていると思っていた。全部、嘘だったんだ。私のこと馬鹿にして笑っていたんだ。誰も信じられない……)


 これからどうしようと考える。


(もう辞めたいな……)


 自分が辞めたいのか、逃げたいのかも分からない。


(いや、逃げるもんか。馬鹿にした奴等より絶対上に、一位になってやる)


 ゆまが本気で一位に執着し始めたのはこの時からであった。


 ◇◇◇


 ゆまは過去を思い出した。


「ファンのためなんて高尚な志なんて何一つなかった。アイドル活動を私なりに頑張っていたけど、陰では馬鹿にされ笑われていたの。一人尊敬していた先輩がいたんだけど、その人にすらね」


 自らを嘲るように言う。


「陰陽師アイドルなんて色物だってさ。私は一位になって笑っていた奴等を見返したかっただけ。情けない」


 (そんな自分が嫌だった。ただファンのためだけに頑張る人になりたかった)


 だが、道弥の返事はゆまの予想とは違うものだった。


「何も情けなくない。辛かったのに折れずに今まで頑張って来たんだろう? だからこそ、今チャンスを掴む所まで来れたんだ。見返したい? 上等じゃないか。馬鹿にされたまま、それを我慢しながら生き続けるなんてごめんだ」


 それは道弥の心からの言葉だった。

 自らも酷い境遇にあり、復讐のために努力を重ねた道弥だからこその言葉である。


「私は……見返すために頑張っていいんだ」


(こんな理由じゃ誰も認めてくれないと思っていた。そう、私はこの気持ちを、怒りに蓋をして生きるのなんてごめんだ)


「私は誰よりも人気になってあいつ等を、私を馬鹿にして笑った奴等を見返したい! それを叶えて初めて私は、前に進めると思うから」


 ゆまは自分の負の感情を正しく理解し、そして正しく昇華した。

 その目は未来だけを見据えている。その様子を見て、道弥は笑う。


「なるほど。なら誰よりもかっこいいところを見せて、皆を惚れさせてやろうじゃないか。派手に行こう」


「うん!」


 ゆまの戦いが始まる。

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