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道弥先生の陰陽術教室

 それから定期的に夜月が我が家に顔を出すようになった。

 陰陽術について色々教えてやるが、思ったより夜月は陰陽術について既に知識があった。


「霊力消費だけでも毎日した方がいいぞ」


「分かってる。けど、霊力込めるのって、難しい……」


 夜月は現在和紙に霊力を込めている。


「前よりはよくなってる」


 まだ、霊力伝導率は低く、多くは無駄に宙に消えている。だが、少しずつ護符には霊力が宿っていく。

 夜月は疲れたのか、汗を拭うと一服つく。


「疲れた……。それにしても、道弥大人みたい。そんなに詳しいのに、本当に六歳なの?」


 鋭い。

 中身は大人である。


「芦屋家は教育がいいんだよ……」


「まあ、いいんだけど。お兄ちゃんに教わっているみたいだ。お兄ちゃんも教えるの上手い。忙しいから普段はあまり教えてもらえないんだけど」


 初耳である。


「夜月、兄が居たのか」


「私にも優しい自慢の兄だ。いつか道弥にも紹介してあげる」


 普段俺と同じようにあまり人を信じていない夜月がここまで褒めるということはきっと良い兄なのだろう。


「護符もとりあえずできたことだし、次は陰陽術について教えようか。陰陽五行説は知っているな?」


「当たり前。万物は『陽』と『陰』に分けて考える『陰陽思想』と、万物は()(すい)(もく)(ごん)()の五つの要素でできているという『五行思想』が統合した思想だろう?」


「その通り。俺達陰陽師は印を結び、呪を唱えることで陰陽術を扱う。自分の力を超えた術を唱えるときは護符を使うことでも発動可能だ。あくまで護符は補助道具だがな。まずは基礎的な陰陽術から」


 俺はそう言うと、右手で印を結ぶ。


(りん)(ぴょう)(とう)(じゃ)(かい)(じん)(れつ)(ぜん)(ぎょう)! 火行(かぎょう)・鬼火」


 俺が呪を唱えると、俺の目の前に野球ボールほどの火の玉が浮かび上がる。

 臨兵闘者皆陣列前行は九字といい、呪力を持つ九の漢字であり、これを唱えることで霊力があがったり、邪気を祓うことができる。

 九字は陰陽師の世界では最も使われる呪である。

 火行・鬼火とは通常野球ボールほどの小さな火の玉を一つ生み出すだけの基礎の陰陽術である。火行を練習するものが最初に習うものもこれだ。 

 火の玉は俺の念じるがまま、まっすぐに弾丸のように飛んで行った。


「基礎的な奴なら、私ならすぐだな。見ていろ」


 自信満々な夜月は俺の真似をして印を結ぶ。


「臨兵闘者皆陣列前行。 火行(かぎょう)・鬼火」


 夜月が呪を唱えると、何やら不安定そうな火の玉がふわふわと浮かび上がる。今にも消えそうだ。

 そして、明後日の方向へ飛んで行った。


「おお……」


 陰陽術初心者なら発動しただけで十分だろう。だが、夜月は悔しかったようだ。


「……もう一回する」


 夜月はそう言って、何度も鬼火の術を練習する。

 十回ほど唱え、遂にしっかりとした鬼火が浮かび上がる。その火の玉はまっすぐ矢のように飛んで行った。


「どうだ!」


 とキラキラした目で見てくる。覚えはやはり早い。


「いいね。初めて陰陽術をしたとは思えない」


 俺の言葉を聞いた夜月は冷静を装っているが、口角はしっかりと上がっている。


「私ももう妖怪退治できると思うんだが」


 自信をつけるのが早いな。


「まだ早い」


「だけど、六級妖怪ならいいんじゃないか? 一般人でも倒せるレベルなんだろう?」


 六級妖怪の小鬼程度ならバットがあれば倒せる。鬼火を使える夜月でも倒せるだろう。


「はあ……仕方ないな。六級くらいなら経験か。念のため、俺の護符を一枚持っておけ。けど、絶対攻撃に使うなよ。護身用だ」


 特製の護符を渡した後、俺達は都内で妖怪のいる山へ向かった。

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