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ホラー・ホラー風味

私のラジオ

作者: まい

夏のボケー2022。


※夏のホラー2022投稿用ではありませんので、ご注意下さい。

 私のラジオは、時々おかしくなる。


 主に自炊してご飯を食べる時に。





 私はちょっとした経緯(けいい)で調理師免許と管理栄養師免許を取った。


 取っただけでなく、ちゃんと料理もする。


 それで日々の食事での健康は自力で管理している。


 料理は嫌いじゃないので、苦に感じてはいない。


 それで今日も楽しくメニューを考えて、小さな頃から実家からの習慣でなんとなくかけ続けているラジオをながら聞きしながら、キッチンに立つ。




 料理の途中で、ラジオはなぜか毎回混戦して、変な言葉が聞こえる。


 でもこれはいつもの事だから、今更気になるものじゃない。


 ついでに言うと、キッチンで作業中は近くに置いておくラジオなので、飛び跳ねる水しぶきを気を付けて作業をするけど、毎回毎回なぜかラジオは()れている。


 これもいつもの事。



 出来た料理を盛ったお皿を食事に使うローテーブルまで運んで、ラジオもセット。 ラジオが無いと、なんだか落ち着かないのだ。


 それでは。 お手々のシワとシワを合わせて、頂きます。




 ああ。 簡単な野菜炒めでも、かける調味料ひとつでこうも味が変わるのは面白いよね。


〔ネェ、オイシイ?〕


「うん。 美味しいよ」


 目玉焼きだって、焼き方や黄身の具合、かける物次第で見せる顔が全然違う。


〔ネェネェ、ソレモオイシイノ?〕


「もちろん」


 焼き魚は焼き加減だよね。 目玉焼きもそうだけど、好みが十人十色、千差万別。


 ただ、普通の焼き魚は塩だけって人は多いと思うけど、お味噌を薄〜く()って焼くのも結構好き。

 でも、お味噌を焼くと後片付けでコゲとかが大変だから、クッキングシートにのせて焼くとかした方が良いかも。


〔タベタイ……〕


「ラジオさんは食べられませーん…………ってヨダレを垂らすんじゃありません! ……あーもー、毎回思うけど、機械なのにヨダレを垂らして大丈夫なの?」


〔ナイブノ結露(ケツロ)ノスイブンダカラ、ムシロゲンキニナル〕


「へー、そんなもんかぁ」


〔ダカラ、リョウリ〕


「だめでーす」



 なんて会話は、日常だった。







 でも、あの日は違った。


 その日も自炊して、食べている時。


〔リョウリ、チョウダイ〕


「だから無理だっ……………………たんだけど、何? それ」


〔ツカワナイカセット(グチ)ヲ、ホントウノ(クチ)ニシタ〕


「わお……」


 私のスタンダードな安物ラジオが進化した。


 カセットテープの口に、歯が生え舌が生え、フタも開き方が変わって人間の口みたくなっていた。


 試しに、恐る恐るおかずを入れてみると。


〔コレガ、オイシイ?〕


 なんて、ラジオが味覚に戸惑っていた。






 更にしばらくしたら。


〔ニンゲンヲ、マネテミタ〕


 食パンの輪切りみたいな形でラジオが割れたと思ったら。


「…………なんで、小さなオッサンになったの?」


〔ソレッポイ?〕


「妖精かな?」


〔ナニソレ?〕


「いや、いい。 忘れて」


〔?……ヘンナノ〕


 小さなオッサンになってラジオから出てきた。


 なんだろうか、この謎生物は。




 なんて頭を悩ます事態にもなったけど、まずはパカーっと割れて使い物にならなくなったラジオを、買い替えなければ。

 その後も順調に、数年に一度の頻度(ひんど)で小さなオッサンが増えている。


 増える(たび)にラジオを買い直さなきゃいけないから、正直困ってる。


 こんなに早い間隔でラジオが使い物になるのなら、今後は中古のラジオを買ったほうが安上がりになるかも知れない。




 …………あ、ひとりの背中に虫みたいな(はね)が生えて飛んだ。 小さなオッサンって飛べるんだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ズッコケた。てっきり美少女系ホラーかと思ったら都市伝説『誰得のちっちゃいおっさん』だった。ある意味で怖い? いや怖くない? 妖精の羽を生やしたおっさんが飛翔する姿… [気になる点] カセッ…
[良い点] ラジオと主人公のどこかほのぼのとした会話に癒されました。 口が出来て最終的に中から小さなおっさんが出てきたのはびっくりしましたが、ラジオを買い替えないと、と言ってる主人公のどこかのんびりし…
[良い点] ホラーじゃない。 でも心には引っかかる。 ある意味気にするとおっかねぇ~!! ……おじさんの妖精(笑)。 [気になる点] 中古でもおじさんに成るのかな? いや、新品ラジオのおじさんと中古…
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