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【完結済】うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました  作者: 赤木 公一
交易都市『トナミカ』

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護った船と交渉するようです

 僕達は今、高台から降りると港に向かって歩いていた。

 少し前を歩くイスカの足取りはご機嫌で、一歩歩くごとにピコピコと耳が上下に揺れている。


「ん。何かいいことあった?」


 そんなイスカの様子を見上げながらフーシェが尋ねる。

 うーん、分かってて言っているのか天然なのか。


「──ええ、とっても!」


 はぐらかさず、耳を軽く触れながら答えるイスカはいつもより力強く見えた。


「さっきの船が到着したなら、船長に話をしに行くわ」


 リズの提案を受けて、僕達は船着き場に向かって町を下っている。

 海辺の町とはいえ、入り組んだ町並みは高低差を生み出し、思った以上に坂道が多い。


「確かに、ジェイク様達が船に乗ったのは3日前。普通に人員を輸送する定期便を待っていたら、出発は最短でも11日後になりますな」


 ローガンの話だと、人員輸送のためのトナミカとレーベンの輸送便は2週間に一度しかないそうだ。航行に5日、港での出港準備に2日。片道7日で1便しかないため、渡る機会は限られていた。


 レーベンと交易を結ぶ人族や魔族の船に乗ることは、ギルドを介さないために、冒険者が乗るにはかなりリスクが高いとローガンは話す。

 もともと、荷物の運搬に使われる船だ。

 人員やスペースに余裕は乏しく、船側としては乗せる旨味がほとんどない。

 コネや金を積まない限り、正直乗ることは困難だろうと教えてくれた。



「だから、『船を助けた』という恩を売って、乗せてもらうことを交渉するのよ」


 あの距離で誰が助けたのかなんて分かるのだろうか?

 そんな、僕の心配を他所にリズは問題ないというふうに笑った。


「あの距離なら、私の『念話』が使えるわ。一方的にしか伝えられないのが難点だけど、貴方達を助けたのは人族が二人、エルフ一人、半魔族一人、魔族一人のパーティーよって」


「結構情報を絞っているけど大丈夫なの?」


 僕の心配に、ローガンが小さく咳払いをする。


「情報というものは、こちらから手の内を明かす物ではございませんよ。正直、接触してみて、相手の出方次第といったところでしょう」


 うーん、さすがローガン。

 個人情報は、確かに危険が多いからね。

 少し自分が浅慮だったなと、僕は反省した。


 少しずつ港が近づいてくる。

 先を歩くローガンとフーシェ、その後ろにイスカ。最後尾が僕とリズだ。


「ちょっとちょっと」


 リズが僕の袖を小声で引っ張る。


「どうしたの?」


 リズの声から、内密の話だと僕は思った。

 少し前を行くフーシェを、ちらりと見たリズは、フーシェがローガンと話をしていることを確認して、僕に耳打ちをした。


「フーシェは、レーベンの出身と言ったわよね。そして、王族だったって⋯⋯」


 あぁ、なるほど。と、僕は理解した。


「レーベンの住人にとって、ドミナントなんて、国を滅ぼした相手よ。私のお父様が、フーシェのご両親を殺したようなものなんだけど、フーシェは私のことを憎んでいるかしら?」  


 確かに。

 かつてレーヴァテインに住み、ドミナントの襲撃によって国を滅ぼされたフーシェにとっては、間違いなく仇であるだろう。

 だが、それをフーシェはどう思っているのか。


 僕は、ローム大森林でフーシェと話したことを思い出す。

 彼女はあの時、レーヴァテインが戦争に負けたことはいいと言った。

 弱いものが強いものに負けるのは当然と考えている節があったが、リズは気にしているのだから、全ての魔族が割り切ることができる問題とは思わない。

 ただ──


「フーシェは、分かってくれるよ。リズが実際にフーシェの町を攻めた訳ではないんだろ?」


 コクリと頷くリズは、少し困ったような表情だ。

 そんな心配顔のリズに、僕は優しく微笑む。


「昨晩、リズは自分が『ドミナント出身の魔王』って言ったよね。その時から今まで、フーシェはリズのことを敵視していたかい?」


 僕の言葉を聞くと、リズはハッとしたような顔で先を歩くフーシェを見た。


「ん。何?」


 勘の鋭いフーシェは視線に気づいたのか、クルリと振り返り僕達に声をかける。


「わ、な、なんでも──」


「ねぇ、フーシェ。フーシェはリズのことをどう思う?」


 慌てるリズの声を遮って、僕はフーシェに声をかける。


「ちょっと、ユズキ!いきなり何を!」


 単刀直入にフーシェに聞いた僕を、ありえないというふうに、リズは僕の手を掴むとグラグラと揺さぶる。

 そんな僕達の様子を見たフーシェは小首を傾げる。


「ん?新しい遊び?」


 僕が違うよと、首を横に振る。

 それを見たフーシェは得心したように、ポンと手を叩いた。


「スタイルがいいから、正直羨ましい。フーシェも大人モードになれば互角になれるかもしれない」


「ちょ!いきなり何をっ!そういう意味ではないわよ!」


 顔を赤くするリズの様子を、不思議そうに見るフーシェだったが、ローガンにポンと肩を叩かれると、「何?」と前を向いてしまった。


「全くもう、いきなり聞くなんて、ユズキはどうかしてるわ」


 顔を上気させたリズに僕は謝罪する。


「ごめん、ごめん。でも、分かっただろ?フーシェにとって、リズは憎むべき相手じゃないんだって」


 僕の言葉を聞いたリズは、びっくりしたような表情で、前を歩くフーシェを眺める。

 リズは数歩歩くと、視線を地面に落とした。

 リズはしばらく黙って歩いていたが、その肩が少し震えるのを見た僕は、そっとハンカチを差し出した。


 無言でハンカチを受け取り、顔を隠しながら目にあてがったリズは、やがてポツリとこう呟いた。


「世界がみんな貴方達のような人だったら、戦争なんてしなくていいのに──」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 港に降りると、丁度僕達が護った船が入港してきた。


「おぉ、大きい」


 全長100メートル程の帆船が近づくと、その迫力はなかなかのものだ。

 船体は青みがかったねずみ色に塗られており、海上迷彩のようだ。

 先程、高台から見た時もマストのお陰で判別がついたが、あまり船の形を知ることが困難だったのは、船体の色のせいもあったのだろう。


「海の魔物の目から少しでも逃れるためよ。海の色に似せて、襲われるのを防ごうとする知恵よ」


 そう教えてくれたのは、少し気持ちを切り替えることができたのかリズだった。


「ん。でも、小さい船はもう少し色が明るい」


 フーシェが、そこかしろに停泊する中型から小型の船を指さした。

 確かに、それらの船の色はみな木造らしい焦げ茶であったり、白く塗装されており、明らかに目立つ色だ。


「中型くらいでは、外海に出ませんからな。何かあった時に見つけてもらえる色の方が都合が良いのです。逆に怪しい色は密輸船や密猟に使われることがありますので、余り近づきたくないものですな」


 ローガンが髭をつまみながら、僕達に教えてくれる。

 ローガンとリズがいるだけで、僕達の知識はかなり更新されていくようだ。


「ありがとう、ローガン、リズ。知らないことばかりで助かるよ」


 僕がそう言うと、ローガンはにっこりと微笑み、リズは眼をパチクリとさせる。


「勿論です。それがパーティーというものでしょう。左様でございますな、リズ様?」


「わたしが⋯⋯ユズキのパーティー?」


 戸惑うリズにローガンが、やや芝居がかった声をあげる。


「おぉ!私はてっきり、リズ様は既にパーティーの一員と認識していたものですが、そうでなかったというのならば、このローガン。既に頭もリバースしておるようでございます!」


 ローガンが、『レベルリバース』のことを自虐ネタに使えるまでになったのはビックリだけど、片目を瞑ってリズにウインクする姿は、彼の考えあってのものだろう。


「え、えぇ!皆が認めてくれるなら⋯⋯」


 リズが小さく頷く。


「ん。頼もしい」

「よろしくお願いします!リズさん!」


 リズはフーシェの言葉に瞳を潤ませ、イスカの言葉に笑顔を見せた。

 その様子を見ていたローガンが、そっと僕の横に近づいてくる。


「いいものですな。人族、エルフ、魔族が、しかもお二人は敵対していた国の王族同士。この、パーティーを見ておりますと、セラフィラルの希望を見ているようでございます」


 人差し指で涙を拭うリズを見ながら、ローガンは小さくため息をついた。


「さて、いよいよ私はジェイク様を諌めなければなりませぬな」


 そう言ったローガンの瞳は、先程のおどけた様子はない。

 彼の奥底に秘めた決意が厳然と表れていた。



「着岸するぞー!!」


 港側の作業員が大声を張り上げる。

 まさに、船は桟橋と接触しようとしており、船の上からは太い綱が係留のために放り込まれていた。


 桟橋に落ちてきた綱を、作業員達が大急ぎで係船のために金具へと巻き付けている。

 よく見れば、作業をしている人達も魔族なのか、やや青白い肌や緑色の肌をした人影が多く見えた。


「おい!そこのお前ら!作業の邪魔だぞ!!」


 作業員を取り仕切っているらしい、大柄な魔族の男が僕達に向かって大股で歩いてくる。

 2メートルを軽く超える巨体は、ゴーレムのようだ。


「私は、この船の船長に用があるのよ!」


 毅然とした態度でリズが前に出た。

 その凛とした声に、男は思わず面食らったようだったが、すぐに声を荒らげた。


「うるせぇ!人族のガキが指図するんじゃねぇ!」


 さすが、肉体派の見た目に負けない荒っぽさだ。

 しかし、リズは一歩も引かない。


「あら?私の魔法を見破れないレベルで粋がらないでほしいわね」


 そう言うと、リズは認識阻害の魔法を解除する。

 それも、男にだけ分かるように対象を絞ったらしい。


「ま、魔族⋯⋯それも、この距離で見抜けないくらいの高度な魔法を操るなんて⋯⋯」


 その反応から、男はリズの正体を知らないようだったが、リズの魔法のレベルが高度なものであると認識はできたらしい。

 たちまち、男の顔が青くなった。


 そんな時だ、突如船の上から落雷のような大声が響いた。


「待ちな!そいつらは、命の恩人だ!!手を出すんじゃないよ!」


 その声を聞いた桟橋の作業員達が、上官に「気をつけ」の号令をかけられた軍人のように直立不動の姿勢を取った。


「アイマム・キャプテン!」


 直後、船の上からヒラリと一つ人影が身体を翻すと、僕達の眼前へと舞い降りた。

ドンッ!

という重量感のある音と共に人影が身体を起こす。


「先程は、部下が失礼した。改めてお礼を言うよ。私はこの船『レグナント号』のキャプテン、ビビって言うんだ。よろしくな」


 思わず見上げてしまう巨体。

 そこには、マントを颯爽と翻した海の女、ビビと名乗った赤黒い肌の魔族が立っていた。


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