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12 女性たちの思いは……

 高官の顔はなぜか嬉しそうに見え優しげに微笑んでいるように見えなくもない。


「返済のため本日より王子宮のメイドも二人となりました。ですので王太子殿下はもちろん王太子妃様になられます淑女様にはお支度やお着替え湯浴みもお一人でやっていただかなくてはなりません。食事内容も変更される予定です。お茶会を開く予算もございません」


 王子としての生活であるのか疑問に思われるほどである。

 野次馬たちは自分たちより酷い暮らしになりそうでびっくりしている。


「お衣装につきましては国王陛下と王妃陛下より下取りさせていただけることになっております」


 つまりは両陛下のお下がりを着ろということだ。流行物は両陛下が着るのだろうから型落ちを着ることになるのだろう。


「ご実家のご予算で王子宮にメイドをお連れしていただくことは可能です。ただしメイドの食費や生活費もご実家でご負担ください」 


 メーデルがよろけてしまい抑える役目のはずの近衛兵がメーデルを支えた。


「メーデル王太子殿下のお具合がすぐれないようですな。解散にいたしましょう。

この求人広告については改めて明日学園の大講義室で説明会を行います。

では、わたくしはこれで」


 高官はわざとらしく恭しく礼をして出ていった。メーデルを食堂室の椅子に座らせた近衛兵も食堂を出ていった。

 生徒たちはメーデルの項垂れを見て動けなかった。シエラはメーデルの足元に座り込みメーデルの膝を擦って何やら声をかけている。


 近衛兵に声をかけられたらしい校医がメーデルの回収に来てその場はやっと解散となった。


〰️ 


 多くの生徒たちのが教室へ戻った。

 ラビオナと同席していた淑女たち、ラビオナを合わせて五人はまだお茶を楽しんでいる。


「ビオ、ナーシャ、ユリィ、改めて、婚約破棄おめでとう!」


「おめでとう!」


 同席しているマリアナ・ネフライテ公爵令嬢とエダリィ・ワーシャイド伯爵令嬢がパチパチと拍手した。


「「「ありがとう! うふふ」」」


「ここまで愚かだとは思わなかったわね」


 マリアナは濃い緑の髪を耳にかけ直し美しいヘーゼル色の瞳の眦を下げた。


「ええ。三人ともよく頑張ったわよ」


 オレンジ色の前髪を多めにしている可愛らしいエダリィはアーモンド色の目を力強く開いてウンウンと頷きながら三人を褒めた。


「マリィとエダは安泰そうでいいわねぇ」


 ヘレナーシャが微笑みながら小さくため息をつきラビオナとユリティナも頷く。

 マリアナとエダリィの婚約者は二年前学園を卒業し後継ぎとしてさらには高官として頭角を表し始めている。二人が卒業したらすぐに婚姻するためすでに準備は始まっている。


「婿養子なのに胡座をかける気持ちがわからなかったのだけど、今日の様子だとわたくしが望んでいると思っていたみたいよね」


 ユリティナはウデルタの様子を思い出していた。


「ステキな出会いのきっかけになったと思えばいいじゃない」


 マリアナはクスクスと笑いながら言った。


「本当に。ユリィったらみんなの前なのにお熱いんだもの」


 エダリィはわざと扇をパタパタとさせた。その様子にみんなが笑う。


「ええ。ユリィが幸せそうで嬉しいわね」


 ラビオナも優しげにピンクの大きな瞳を細めた。


「ノエルのあの姿見た? 体ばかり大きくて気持ちは本当に小さいの。いつも癇癪起こしていたのよ」


 ヘレナーシャは呆れ顔で愚痴を溢す。


「ナーシャったらノエルダム様を愛称呼びしているわよ」


 ユリティナの指摘にヘレナーシャは口を慌てて隠したがそれも笑いになる。


「釣書はどう? ステキな人はいた?」


 エダリィが前のめり気味に聞いた。


「ノエルダム様は見た目はよかったでしょう。だから逆に見た目なんてどうでもいいんだなって思っているの。まずは誠実さと一途さね」


 ヘレナーシャはグッと拳を胸の前で握った。


「ソチアンダ侯爵様なら厳しい目で厳選してくださるわ」


 ラビオナは王太子の婚約者として騎士団の副団長であるソチアンダ侯爵の隊に何度も護衛をしてもらっていた。視察などによく付き添ってくれていてその際娘ののろけ話もよく聞かされていた。


「ビオはどうなの?」


 マリアナは自然を装いソーサーを持ち上げながら話題にしたが内心はとても心配していた。


「そうね。醜聞はないと思うけど王妃教育を受けたわたくしの価値が上がってしまったのですって。だから婚約者を見つけるのはなかなか難しいみたいなの。

このまま一年後に卒業ならお兄様の代わりに領地経営をしてみたいわ」


 ラビオナの兄は管理人に領地経営を任せて王城で高官をしている。父親もそうであった。父親は総務大臣で兄は総務で高官をしている。


 ラビオナはさらりと口にしたが四人は目を丸くして驚いた。


「ビオはそれでいいの? 次世代の社交界の華と言われた貴女が領地に引っ込むなんて……」


 エダリィが心配そうに眉間を寄せた。


「秋と年始の王城パーティーには公爵家として参加するわ。流行遅れになってしまうかもしれないから助けてね。ふふふ」


 ラビオナは四人を安心させるように満面の笑みを見せる。


 五人はそのまま午後の授業をお休みして楽しい時間を過ごした。

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