ルシア・シュレーゼン
グランバニア王国の王都から馬車で丸一日かかるところにのどかな麦畑やら色んな作物を育ててる畑やらが豊富な領土がある。
決して特別裕福な領土だとは言えないが自然豊かなで温暖な気候であるとこは、ここシュレーゼン領の自慢でもある。
シュレーゼン家は昔ながらの貴族であるがこの様に田舎の土地を治める貴族である為、一部の有力貴族からは田舎貴族と揶揄われることがあったが、逆に田舎であった為特に目立つこともなく穏やかに過ごすことができていた。
とある天気の良い日、私は中庭でお茶を楽しんでいた。
3日ほど寝込んで目が覚めてから1週間が経った。
私はここでの生活を一度じっくり整理しようと思って、目が覚めてようやく外出の許可が下りた今日、天気も良いことだしってことで中庭に来ていた。
グランバニア王国は元々魔法で栄えた国だった。
最初魔法が存在するこの世界もRPGの世界なのか?と思った。現に魔物も騎士やら冒険者も存在する。
生まれや立場が違えばRPGの世界だと捉えられそうだが、私の住んでる所は魔物やら冒険者やらとは縁遠く、なんとなく…ただの勘ではあるけれど前の様なRPGの世界では無さそうだ。
私ルシア・シュレーゼンも田舎貴族の令嬢とは言え、貴族の端くれとして微々たるものではあるが魔力を持っていた。
しかし目が覚めた時には空っぽであったことでお父様もお母様も顔が青ざめて呆然としていた。
この国では平民はともかく、貴族は魔力を持っていて当たり前なのだ。
だけどうちの両親は本当に優しかった。魔力無しの落ちこぼれと化した娘にも今まで通り優しく接してくれる。寧ろこっちが申し訳なさそうにしていれば「お前は何も気にすることは無い」と逆に励ましてくれた。
前世前前世の記憶を取り戻すまでの私も特別秀でたものは無かった。
現在14歳で来年の春には4年制の学園の入園も決まっていて、貴族がその学園に入園することはほぼ義務に近かった。
だから勉学も魔法も特別秀でた物もないルシアにとっては気の重い行事という認識だった。
だけど『私』としての人格が形成された今、魔法はともかく勉強ならなんとかついていけるんじゃなかろうか?とも思っている。
前世が光の賢者という大層なものであったせいで焦点が前世に行きがちだが、一応前前世では勉強でそれなりの成績を修めていた。まぁまぁデキるオタクだ。いや、寧ろオタクの人間の方が凝り性だったりハマりやすい性格故色々吸収しやすいのか?知らないけれど。
2,3日前から以前よりお世話になっていた家庭教師に再び勉強を教えてもらった感じではそれなりの手応えはあった。家庭教師の人は一体何があった?みたいな顔で驚いていたけど。
とにかく私は魔力がない、魔法が使えないという前世からは考えられないことが起きているから、せめて勉強だけは頑張ろうと思った。てか前前世から比べたら勉強も楽しかったし頑張れるだろう。
あと前世で思い出したが、前世の私は淡い金髪のふわふわした髪の毛に緑と青のオッドアイだった。
自分で言うのもなんだが、可愛らしい系な顔立ちだった。
今も可愛らしいといえば可愛らしいのだがなんだろう…素朴な可愛らしさというか…パッとした目を引く美人ではない。
まぁルシアは濃い茶色のサラサラした髪の毛にブラウンの目で、前前世日本人だった私的に前世のルックスより今の方が見慣れた感じはあるが。
光の賢者時代もルシア時代も前前世の私のルックスから見れば優れていると言えば優れている。
日本人時代は特段悪くはなかったが良くはなかった…。もはや日本人時代の記憶はうっすらとしつつあるんだけどそんな感じだということはなんとなく覚えている。
…てか待てよ?平均的なルックスで目立たない成績(むしろ落ちこぼれに近い)…それってつまり…
「モブ令嬢やん?」
ティーカップを片手にぼそりと呟いた一言は、近くに立っていたメイドのアンの耳に届くことは無かった。