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序章2

思わぬところで私の力の謎が解明されたところで魔王が私を睨むように視線を向けた。


「私はな…その妹の力をこんな薄汚れた人間の為に使うお前が許せぬ…。我が妹は何のためにお前に力を託したのか…妹もまた、浅はかな女ということなのか?我が一族の恥さらしが」


「あなたの妹さんは私に力を託したのではないと思います。あなたの言うにはあなたの妹さんは魂を厳選して力を託したのでしょう?古の魔導師であるあなた方が人間を信頼してるとは言いません…ましてや人間によって沢山嫌な思いをしたわけですし…

ですが、妹さんはそれでも人間に対して希望を失いたくなかったのではないですか?

私達があなた方と共存したいと願うように彼女もまた人間と共存する方法を考えてたんじゃないんですか?」


魔王の言葉に思わず言わずにはいられなかった。

会ったことも見たこともない彼の妹だけど彼の妹の命をかけた力を継承する術を否定されたくなかった。



「それが甘いと言っているのだ!!!!」


私の言葉が魔王の逆鱗に触れた。彼もまた命をかけた魔術を私達に向けた。


「この世界に未練はない…私もろともお前達も死ね!!!」


これは……最大級の呪いの魔法。

こんなの食らったらひとたまりも無い…やばい…。


英雄は…彼らにはまだまだ冒険が残ってるんだ…やらねばならないことが残ってるんだ…



私は咄嗟に彼らの前に躍り出た。

「リーナ!?」

英雄達が私に驚愕の顔を向けた。

私は彼らに「あなた達との冒険…楽しかったよ、ありがとう」とにっこり微笑んで見せた。

大丈夫、私があなた達を守る。



彼ら全員の最大級の呪いの魔法を一身に受けた。私の行動に魔王が目を見開く。


「この技を一身に受ける……だと!?馬鹿な!!そんなことをすれば魂ごと消えてしまうぞ!?」


「大丈夫よ!!こちとら遠い世界からやってきた魂よ!!そんな簡単に消えるもんですか!!!」


「ばっ!!!よせ!!リーナ!!!」


魔王の呪いの魔法を一身に受けた私はその場にうずくまる。

仲間達が私の元へ集まってきた。私はもう駄目だろう…自分の体だからかなんとなく限界を知ることができた。


「リーナ!!大丈夫か!!リーナ!!」

英雄が声をかける。女性の魔導師が癒しの魔法をかけているが効果はないようだ。


「何故…何故そのようなことを…」

魔王の声が途切れ途切れ聞こえる。彼もまた命とひきかえの術を使ったから長くはないだろう。


かく言う私ももう長くはない…。まだ若くこれからももっとこの世界を堪能したかったけど、これはこれで仕方なかった。でももし次生まれ変われるとしたら次はもっと穏やかな人生がいいな…。

ここでは光の大賢者として英雄共々もてはやされた人生だったけど、次があるなら今度は静かに長生きしたい。有名人は有名人で大変なのだ。色々と。




そう思いながら静かに目を閉じた。








「んっ…」


目を覚ますと視界に広がるのは洋風で前前世で庶民として生きてきた私には少し豪華な部屋だった。


「お嬢様!!!」

目覚めて間もない私は少しボーっとしていたが、近くにいるであろう女性の声で一気に現実に引き戻された。


私は…また新たな人生を歩むことになるのか…?


「お嬢様!!お目覚めになられて良かったです!!3日も眠っておられましたよ!?今旦那様と奥様をお呼びしますね」


髪の毛を後ろでお団子にしている…メイドさん?の様ないでたちをした女性が足早に部屋を出て行った。


彼女の後ろ姿を見送った後、私の『今世』での記憶が一気に蘇った。




「ルシア!!!大丈夫か!?」

「ルー?大丈夫なの!?」


一気に蘇った記憶のおかげで放心状態だった私の元にバタバタと慌ただしく人達が訪れた。


先頭切って部屋に入ってきた父と母が心配そうに私の今世での名前『ルシア』と呼んで、私の元へ駆け寄ってきた。


私はルシア・シュレーゼン。今部屋に入ってきたシュレーゼン伯爵の娘であることは、今世での記憶が頭に流れた時に当然の様に受け入れていた。


そう、それが私にとっての『当たり前』で寧ろ前世と前前世がオプションみたいな、そんな感覚。


でも性格的は前世、前前世を思い出すまでは比較的大人しい少女だったが、前世、前前世を思い出したことで少し変わってしまった所は否めない。



「お父様、お母様ご心配をおかけして申し訳ございません。私はこの通り元気になりました!」


私はおどけて両手をグッとした。その辺りは今までのルシアはやらない仕草だろう。2人はもちろん、後ろに控えていたメイドや執事もびっくりしていた。


今まで大人しく自分の意見も言えない様な少女が全快したことで安心したのだろう、お父様がにっこりと微笑んだ…が何かに気付き、急に顔を青ざめさせていた。


「あなた…?どうかしたの?」

お母様はすぐにお父様の異変に気付き、心配そうに顔を覗き込んだ。


「ユリア…よくルシアを視てくれ…ルシアが…ルシアの魔力が…ないんだ…」





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