会談 後①
《応接間 3人》
「………澪様の話、濃かったですね。」
「そうですね。」
「まさか、強姦被害者の治療に、依存患者と同じ治療が必要かもしれないなんて、夢にも思いもしませんでした。」
「そうですね。」
「「「………」」」
「………澪様は、」
「「?」」
「話の流れから、〈理解を深めること〉に重点を置いているように感じました。」
「確かに。」
「心、感情に対抗するため、なのでしょうか……。」
「さあ、ねぇ。」
「けどねぇ、逃げ道には、なると思うよ。」
「逃げ道?」
「もてない男ともてる男の差は、女性に逃げ道、言い訳を作らせられるかよ。」
「澪様の話は、真実ならば、特大の逃げ道にもなるし、愛を確かめることにも利用できる、と思う。」
「薬の話もです。」
「?」
「媚薬に麻薬、流通しているものは粗悪品が多く、そもそも、使い方が雑なせいか、治療をしないといけない人が多い。」
「いっそのこと、材料から国で管理し、調薬して流通させようかと思いましたが、費用対効果、道徳から、する意味が殆どありません。 出来て、医療用の痛み止めくらいです。」
「ですが、澪様の話により、媚薬に使い道ができ、麻薬の耐性を付けられる可能性ができました。」
「もし可能なら、どれほどの騒動になるか、判りませんね。」
「それと、勇者様達と候補生達について、」
「とりあえず、現存する勇者様に、結婚/不倫/性欲について話を聞いた後、今代の勇者様達に話を聞くことが先決ですね。」
「それが終わったら、性教育について、プログラムを考えないといけませんね。」
「………もしかして、私達からしたら異常に思えることも、澪様が原因を知っていたりして。」
「ありえそうですね。」
「それと、最後の澪様の要請も、準備しないといけません。」
「対価に、有益な情報を頂きましたしね。」
「ふふ、とりあえず、私に合う香水作りから、お願いね。」
「はい。 後で体液の採取に協力してもらいます。」
「ええ。 じぃっくぅりぃと、ねぇ。」
「………とりあえず、行動に移すとしましょうか。」
「「はい。」」
《聖女カーミラ》
帰りの馬車の中が、静寂に包まれる。
澪様は、私に気遣ってか、沈黙を保っている。
私は、何も言えないでいる。
確かに澪様は初めに仰っていた、「覚悟はあるか?」と。
だけど、これは無理。 受け入れたくない。
他のことを考えよう。
………澪様が最後にした要請。
薬毒研究所への見学と、ステラン様の管理しているお店の見学と、演技指導。
澪様曰く、
「戦場で、傲慢な態度で適当な治療をする人と、ドジでも汗水垂らして、笑顔を振る舞いて、人一倍頑張る人、どちらの方が印象がいいか、解りますよね。」
とのこと。
対価として、フェロモンと香水についての知識を授けられた。
フェロモンは無臭だが、触媒として有用で、特定の匂いと混ざることにより、匂いを強化するか、悪臭を放つかのどちらかになる、らしい。
つまり、匂いの出る場所=汗の出る場所に、相性の良い香水を付けることにより、相手に好印象を与えることが出来る、らしい。
そして、検証が済み次第、私専用の香水が作られる予定だ。
………澪様がここまで頑張る理由は、やっぱり、
「澪様。」
「何でしょうか?」
「澪様が、神様に願った内容は、子供の救済でしょうか?」
「違うよ。」
「違うのですか!!」
「私が願ったのは、根本と思われる原因を何とかすること。」
「根本?」
「私を含めた上の世代には、何故か、忌み嫌われている業種が2つあります。」
「1つは漫画、アニメ、アニメ小説、ゲームなどの、非現実な物語をつくる仕事。
ただし、外国からは高く評価されています。」
「もう1つは、売春などの、体を売る商売。
思うに、これがあるからこそ、稚児に意識が向かないと思っています。」
「この2つが忌み嫌われている理由は、調べ上げた結果、根本は同じで、それが潜在意識にまで、染み込んでいるからと思われます。」
「加えて、細かいおかしなものが沢山有るので、私の居た国は、歪んでいます。」
「聖女ちゃん。
いえ、聖女カーミラ様。」
「はい。」
「私が神に願うのは、根本の切除、並びに意識改革?、意識革命?、です。
それ以外の改革は、私が先程述べた提案は、人の力でやるべきだと思います。 それが例え、何十年かかったとしても。」




