幼聖女:召喚の間にて
召喚の間、先代勇者様方命名、【ガチャの間】の隅に、私は居る。
他の聖人候補生と混同されないように、隅に追いやられて。
好奇の目に耐えられなくて。
現実逃避に辺りを見渡すが、どうしても、自分と比べてしまう。
私の服装は、聖女用の神官服。
向こうは、召喚陣の側に教皇を筆頭に教会の人達が集い、少し離れて、人族/陸上獣人族/水槽に入った海中獣人族/エルフ族/ドワーフ族の候補達が、各国の正装で並んでいるため、色鮮やかな光景が広がっている。
隅に一人だけで居るだけでも目立つのに、余計に目立つ。
何人か睨んでくるし。
私も召喚陣の側に配置してほしかった。
しばらくして、教皇が祝詞を唱えると陣が光だし、その光は虹色になっていった。
授業どおりだと、あの光は勇者様の扱える属性によって違うらしく、虹色は全属性らしい。
私の勇者様はどうなるのだろう。
基本的に持っているのが白か黄色で、偶に黒。
追加があれば、青か茶か緑で、赤色はめったに出無いと習ったけど。
できれば、白か黄色がいいな。
目立ちたくないのもあるけど、後ろ盾の無い私だと、専門的な教師や練習場の目処がないから、宝の持ち腐れになっちゃうし。
でも、虹色だったらどうしよう。
ありえないと思うけど。 思いたいけど………。
ありえないよね、本当に。
陣の上に人が大勢現れた。
あれが授業で習った、歴代勇者様命名、十連ガチャかな? 十人以上現れてるけど。
!!ああ、纏めて出たから、虹色だったんだ。
教皇が現状確認のため、代表ぽい人と質疑応答をしていく。
他の人達は、聖人候補生達の容姿に感嘆していた。
美形揃いだってこと以外にも、異世界に亜人が居ないのは、本当みたい。
平民が美形の貴族達を遠くから見て騒ぐときや、歴戦の騎士や傭兵に憧れを抱いているときに似てる。
たしか、歴代勇者様いわく、アイドルとファンの関係だっけ?
候補生達も満更ではないようだし、しばらくは鎮まらなそうだ。
私の勇者様は、私を見てどう思うだろうか。
候補生達と見比べて、ガッカリしないだろうか。
一瞬目を奪われるのはいい。
娼館に通うのも、かまわない。
だけど、心は側にいてほしいな。
だって、離れる事が出来ない関係になるんだから。
《数分? 十数分後?》
・・・鎮まらない。
それどころか、余計に騒がしくなってる。
理由は、候補生達たちが調子に乗ってしまったから。
候補生達は授業で、勇者に気に入れられる為の演技や容姿作りをする。
過去の実績もあるため、真剣に受けていたが、私は、
(これ、やる意味が本当にあるのか? 特に演技)
なので、真剣に出来なかった。
それが、一人の候補生により意味が有ると証明された。
その候補生は、獣人のワイルドイケメン。
密室で人工過多、着慣れない正装に、緊張と興奮で暑くなったのだろう、胸元を開けて、鍛えられた胸板を露出した瞬間に、数人の女勇者が釘付けになった。
それから他の候補生のアピールタイムが始まった。
美形の人族/獣人族/エルフ族は、それぞれに合わせた演技で勇者を褒めてトキめかして。
背の低い獣人族/ドワーフ族/エルフ族は、子供特有の無邪気アピール。 持ち上げられるのは犯罪現場に見えるけど。
ガタイのいい人族/獣人/ドワーフ族は、筋肉アピールで。
さらに女性は、胸とか足とかを、さり気なくアピール。
あれらに引っかかる勇者達もどうかと思うけど、やる方もたいへんだな。
生涯のパートナーをあんな方法で決めて、性格に問題があったらどうするのだろうか?
私の場合はどうなるのだろう。
神様が決められた相手だから、問題がないと思いたい、けど。
暴力なら、まだ我慢できる。
性欲が強い場合は、娼館を紹介しよう。
ある程度、勇者として仕事をしてくれるなら、問題はない。
そんなことを考えながら、私は教皇様に近づいていった