【改稿済】幼聖女:過去と現在
チュン チュンチュン チュン
鳥の声が聴こえる。 閉じたまぶた越しに、光が見える。
目を開けると、カーテンを閉めていない窓から朝日が入って、部屋が明るい。
何時もの光景、目覚まし代わりにしている習慣。
だが、今日はこれまでと違い、寮自体が騒がしい。
とうとうこの日が来てしまった。
来てほしくなかった日が来てしまった。
私の人生が決まる日。
私の生涯の相方が決まる日。
勇者召喚の日。
何故、私が選ばれたのだろうか、
何回考えてもわからない。
私のような日陰者が選ばれるなんて。
神様は理不尽だ。
今日は、異世界から勇者を召喚する日。
そもそも、この世界に【勇者】は存在していなかった。
太古の昔、別の世界からの侵略により、この世界の生物が魔物化、環境の悪化、その結果、人口は激減した。
対抗策として、この世界より上位の世界から人を呼びよせた。
この世界に馴染み、現地人より強靭な【神造の体】を与えて。
別世界の知識を参考にして、【技術革命】【軍略】【スキルシステム】etc、を取り入れて。
侵略してきた世界の神、邪神を討伐する【勇者】として。
そして、侵略者達の神、邪神がたおされた。 一時的に。
だが、邪神は倒される前に、この世界のシステムに介入し、魔物が定着化、統率者として定期的に【魔王】が現れるようになった。
それと、魔物の特徴を持つ人型【魔人】も。
【魔王】が出現すると、世界が荒れる。
【魔王】を殺さないと、邪神が復活する。
だけど、勇者も年を取る。 殺せなくなる。
だから、次の【勇者】を召喚する。
そのたびに、新しい情報を手に入れる。 戦闘以外の文化を、発達させる為に。
時が過ぎ、勇者だけだと対処できない量の魔物が溢れると、勇者が子孫を残せるようになった。
【勇者の子孫】は、勇者に劣るが、この世界の人類より強靭な体と、親の勇者のスキルを素質として、継承できる。
又、【勇者の子孫】には、親の勇者の保持スキルに関係なく、2つのスキルを保持している。
怪我を治す【治癒】スキルと、不浄を無くす【解呪】のスキル。 神の御業の如きスキルを。
だが、更に時が進むと、勇者や勇者の子孫から、魔王軍に寝返る者・自ら世界に混乱をもたらす者・人類同士の戦争に使われる者が現れるようになった。
それらの対策として、神々よりもたらされたのが、【隷属(=監視)システム】と、勇者の子孫の格差。
これにより、勇者の子孫に名称が付いた。
監視者との子供が、【高等勇者】。
監視者以外との子供が、【劣等勇者】。
後に、監視者は【正室】、それ以外が【側室】と呼ばれるようになり、まとめて、【聖人】と呼ばれるようになった。
高等勇者は、所持スキルにより、王族(支援/指揮系)・公爵(生産系)・侯爵(戦闘系)に、別れるようになった。
【正室】に選ばれるのは、王族・公爵・侯爵だが、勇者の保持スキルによっては、スキルを保持するために、伯爵や、子爵以下の貴族が選ばれることになった。
つまり、
王族⇒支援/指揮系統のスキルを持つ、高等勇者。
公爵⇒生産系スキルを持つ、高等勇者。
侯爵⇒戦闘系スキルを持つ、高等勇者。
伯爵⇒上記以外のスキル系統を持つ、高等勇者。
⇒支援/指揮系統のスキルを持つ、劣等勇者。
子爵⇒生産系スキルを持つ、劣等勇者。
男爵⇒戦闘系スキルを持つ、劣等勇者。
それと、【治癒】は高等勇者と劣等勇者の両方が、【解呪】は高等勇者のみが所持している。
私は【治癒】と【解呪】を持っている。
だが、私は、王族/公爵/侯爵ではない。
私は孤児。
赤子の時に、孤児院に捨てられた、らしい。
おそらく、系統違いのスキル持ちが両親だったため、スキルを上手く引き継げなかったから、捨てられたと思う。
保持スキルが、一般的なものしか持っていない。
【治癒】と【解呪】が発現したときは、嬉しかった。
貧乏生活から抜け出せると思ったから。
でも、待っていたのは地獄だった。
私は、聖人候補生を育てる学園に入れられた。
入学した当初、貴族達は一斉に騒ぎ出した。
貴族は顔を覚えるのが得意だというのは、本当みたい。
誰もが知らないとわかると、憶測が飛び交った。
五月蝿かった。
先生が私の紹介をすると、今度は野次がとんだ。
五月蝿い、私だって来たくなかった。
それからは、孤独だった。 どうしても馴染めなかった。
あんな無駄遣いする奴らに、馴染めるはずがなかった。
学食なんて、普段と違いすぎて、気持ち悪くて食べれない。
食べないと、援助金が勿体ないという考えで、軽食を手に入れては、人目につかないところで食べている。
数年後、勇者召喚の神託が教会に下りた。
勇者との子供を手に入れるために、各国が慌ただしくなった。
王族・公爵・侯爵は慌てない。
地位と権力と容姿を目当てに、勇者側から寄ってくる実績があるから。
伯爵は忙しい。 成り上がるために。
歴史書から、勇者の好みの系統に当たりをつけ、特産物と容姿で気を引くために。
子爵・男爵は、寄親?の子供に、媚びへつらっていた。
派閥の中も大変ね。
平民は、それほど騒がしく無い、興味を持たない人が多い。
一日一日の生活が大事だから。
いつ、魔物に、日常が奪われるかわからないから。
私も興味が無かった。
そもそも選ばれるわけがないと確信してた。 孤児だから。
後ろ盾の無い、貧相な体つきの孤児。
上級貴族の落とし胤という、厄介な事情持ちの孤児。
なのに選ばれた。
神様からの推薦で選ばれた。
それから日常生活が更に酷くなった。
手はだしてこない、傷でもつけたら、神罰がくるかもしれないから。
代わりに無視や言いがかり、他人のお勤め、治療院での治癒魔法と解呪の仕事と、薬師の仕事の量が増えた。
私は普通の生活がしたかっただけなのに、どうしてこうなったのか。
神様は理不尽だ。
私の持つ貴族のイメージは、
王⇒【国民に夢を見せる職業】⇒カリスマ/武力/軍事力/政治/統治/美貌/etc⇒アイドル?
公爵⇒【何でも有り】⇒裏世界の王/公国/宰相/元帥/貿易/商売/etc
侯爵⇒【外交】⇒貿易/防衛/etc
伯爵⇒【中間管理職】⇒王族/公爵/侯爵の血の保管庫/etc
子爵/男爵⇒【平民から成り上がれる】
男爵未満⇒名称有り過ぎ。