買い物、食材
勇者様と食品を買いに行く道中、私は、羞恥心と戦っていた。
こうなった理由は、勇者様に教えていただいたスキルのせいだ。
スキルアップと慣れの為に使っているのだが、合う人合う人が注目、中には会釈してきたり、子供が手を振ってきたりしてくる。
それら全てに笑顔で、会釈や手を振り返したりしたのだが、なかなかに恥ずかしい。
それと、私と同じ状況でありながら余裕のある勇者様が、小声で、
「魔力のせいか、元世界より効果があるな。」
「やはり聖女ちゃんの習熟度合がおかしい、別のスキルが作用していると思うけど、何のスキルかな?」
「これ、聖女ちゃんの後ろを光らせて、後光のようにしたら、拝み倒す人が出てくるのかな?」
…最後はやめてほしい。 そうなったら私は引きこもる。
でも、勇者様が思案を巡らせてくれてるのは嬉しい。
私の相方が、この人でよかった。
そうこうしているうちに、商店街の八百屋さんに到着。
「それで勇者様、何を買うのですか?」
「その前に聖女ちゃん、この世界の学校では、先代勇者様方の歴史について学ぶのですか?」
「そうですよ。」
「なら、食文化についても学びませんでしたか?
特に、過去と現在の違いとか?」
「いえ、私達が習うのは、料理方法と、醤油や味噌の、この世界での生成の歴史ですね。」
「そうですか。」
「それがどうかしましたか?」
「今から買う物の殆どが、昔によく食べられていたと思われる物ばかりで、ちょっと興味が出ただけですよ。」
「そうですか。」
私も興味が出てきた。
「ここは八百屋ですので、緑黄色野菜とレモンを中心に、後は適当に買いましょうか。」
「はい。」
その後、魚屋で鰯と鰹、肉屋で適当、乾物屋で椎茸と干瓢(?)、茶屋で紅茶と緑茶と珈琲を買った。
「随分と買いましたね、勇者様。」
「お付き合い、ありがとうございます。」
「他に買うものはありますか?」
「少量ありますが、どこにいったらいいのかわからないです。」
「それは、何ですか?」
「骨と納豆と、できれば梅干しも欲しいですね。」
「骨(?)は解体場にあると思われます。
冒険者ギルドに併設していますので、その時に寄りましょう。
納豆…と梅干しは、珍味屋にあると思います。」
「その反応、納豆を食べたことが、」
「授業であります。」
「で、美味しくなかったと。」
「はい…。」
「まあ、あれは好き嫌いがあるから、しかたないですよ。」
「ところで聖女ちゃん、訊きたいことがあるのですが。」
「なんでしょうか?」
「え〜と、どう説明しましょうか…、魔法で、形は球体で、中の物を撹拌できて、なおかつ、周りの空気を中に取り込めることのできることは、できますか?」
「…練習したらできると思いますが。」
「それは、私にもですか?」
「勇者様は全属性ですので、可能だと思います。」
「よかった。」
「?」
「それができるのであれば、材料次第で、至高の納豆を作ることができます。」
「至高の、納豆?」
「私の人生で一度しか成功したことがないので、確証はありませんが、まさに、絶品でしたね。」
…想像できない。 けど、興味は出てきた。
「…私の分も、作ってもらえないでしょうか?」
「材料と魔法次第ですけど、いいですよ。
聖女ちゃんが、納豆大好きになるように頑張ります。」
「そこまで頑張らなくていいです。」
その後、珍味屋にて納豆と梅干し、香辛料屋でからしを買った。