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門前にて

玄関から城門までの道すがら、

「聖女ちゃん、確認したいことがあるんだけど、いいかな?」

「はい。 なんでしょうか、勇者様?」

「あのね、あそこに見える門が開くのは、勇者がパートナーを決めて市街地に住む以外に有るのかな?」

「ありませんね。

あの門は勇者と相方となる聖女のお披露目の為だけに使われる、通称が開かずの門ですから。」

「それじゃあ、あの門が開いて私達二人が出たら、多くの人に注目される?」

「されますね。

それも、私達は数百年ぶりに現れた、神託により相方として定められましたので、全国民が知っているはずです。」

「それなら、今聴こえてる喧騒も、空耳じゃなんだね。」

「私にも聴こえてますから、空耳じゃないですね。」

「「……」」

「「(お互いを見て苦笑で)ははははは。」」

(忘れてたーーー)

思わず頭を抱えて蹲りたくなったけど、やめた。 そんな事をしても、現実は変わらない。

どうしようかと思い、勇者様を見ると、覚悟を決めた顔をして、

「聖女ちゃん。」

「はい。」

「今回召喚された中で、はじめての勇者と聖女のお披露目を台無しにしたくないから、スキルを使おうと思うのだけど、いいかな?」

「……あの人達を蹴散らすなどの、危害を加えないのでしてたら、かまわないと思いますよ。」

「それなら大丈夫ですよ。」

「ちなみに何をするつもりですか?」

「えっとね……、印象操作かな?」

「…はい?」

「気付いてなかったと思うけど、召喚された時と、昼食会の時も使ったよ。」

「そうなのですか?」(知ってます。 証拠が残ってます。)

「そうだよ。 【気力操作】ってスキルで、詳しくは後で話すけど、相手が私に感じる印象を操作できるんだ。」

「そうなのですか。」(あの時誠心的に謝っているように感じたのは、これのせいか。)


「…ふう、それじゃあやるよ。」

《気力操作/姿勢制御スキルを発動します。》

《ギフトスキル同一化により、魔力操作スキルを発動します。》

《【気力操作】/【魔力操作】スキルより、【威圧】スキルが派生しました。》

《威圧スキルを発動させます。》


「やっぱり(システム管理の)スキルだと、発動しやすいな。

聖女ちゃん。」

「はい?」

「今の私は、どう感じる?」

「…実物より大きく感じます。 あと、なんだか吸い寄せられてるような感じ?も。」

「大きく感じるのは成功したな。 

もう一つの方は効果が薄いな。 スキルになってないから、なにか足りないのかな?

まあいいか、聖女ちゃんは慣れてないと思うから、私の少し後ろにいてね。 おかしくないように頑張るから。

それじゃあ、行こうか。」

私は胃が痛くなりながらも、言われたとおりに付いていく。


開かずの門が開いていくと、喧騒が大きくなり、野次馬達の視線が、門の中央に向けられていく。

その好機の視線が、中央にいる威風堂々とした勇者様を捕らえると、空白が生まれ、場が静まり返った。

こう、何というか、野次馬たちの顔が、間の抜けた顔や、ぽかんとした顔になっている。

これはどういう事だろうか? 詳しく訊いてみるべきだろうか。


私が一瞬悩んでいると

《演技スキルが発動しました。》

「お集まりの皆様、始めまして、この度の召喚により勇者となり、又、神託により、聖女カーミラのパートナーを務めることになりました、勇者澪と申します。

異世界から来たばかりで、この世界の事は何も知りませんので、皆様にご迷惑をおかけすると思いますが、何とぞ、御指導御鞭撻のほど、よろしくお願いします。」


勇者様が頭を下げて、慌てて私も頭を下げて、しばらくして、どこからともなく拍手が鳴り、増えていき、拍手喝采になった。


その音に歓声に愕然とする中、所々で聴こえる声に私は赤面する。


勇者様と私は生涯の相方、そのことは何度も理解してた。

でも、心のどこかで、仕事上の相方と思っていたのだろう。 例え子供をつくったとしても。

それが、「末永く幸せにしろよ。」や、「もし泣かせたら俺たちが承知しないぞ。」とかの声で、夫婦を覚悟させられる。


結婚どころか恋愛すらしたことのないのに、いきなり夫婦。

意識しないことのほうが不可能。 顔が熱い。


「大丈夫かい、聖女ちゃん?」

「(!顔が近い)何がですか? 勇者様?」

「赤くなっているから、熱でもあるのかと。」

「だっ大丈夫です勇者様。 問題ありません。」

「それならいいけど。

それにしても、随分な人気だね。」

「当たり前です。 一生見る事のできないものを見る事が出来ているのですから。」

「いや、この歓声は勇者()じゃなくて、君に対してだよ。」

「…はい?」

「あそこに手を降ってごらん。」

言われたとおりにすると、その場所の歓声が一段と大きくなった。

「!!」

「ね、言ったとおりでしょう。

さっきから聴こえる声も、聖女ちゃんのことを粗末にしたら許さないみたいことばっかりだから、これは君に対する、君が今まで頑張った結果だよ。」


私が嬉しさに泣きそうになっていると、勇者様は私に跪き、

「聖女カーミラ様、パートナーとして、私は心からあなたを尊敬します。

そして、ここにいる皆様の前で誓います。

私はいつか、あなたの隣に並び立つ事のできる素晴らしい人になってみせると、ここに宣言します。」


その誓いに、更に歓声が大きくなった。

私は、嬉しさや恥ずかしさや、勇者様がスキルを使った事への罪悪感やらの様々な感情に、気絶した。

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