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彼は元皇太子である  作者: パパラッチ
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残念かませ犬

5限目が終わりそろそろ帰ろうかという頃、見せ物が始まった。

「元殿下、それはそれは高名であると言うのに、何とお振る舞いが見窄らしいのでしょう」

つまるところ、次席(かませ犬)のシルヴィアに、例の如く俺と誤解されたキシールが絡まれているわけだ。

なんでも貴族としての品格が身に付いてないのだとか。

そりゃ2ヶ月前までただの農民だったんだからねぇ。

「そもそも僕はルーサリウス様ではありません。ただのしがない農民です」

片手間でシルヴィアをあしらうと、そそくさと帰りの支度を始める。

もう完全に諦めてるな、アレ。

「ふうん。わたくしを片手間であしらおうだなんて、確かに皇族傍系の地位が保障されているとしても、3大公爵家サジリウス家に対する礼節というものがないのかしら?」

いや、絡んでる相手がもし俺だとしたら、パッと出のライトヴィヒ侯爵家の方が家格上だからね。

そんなこと言ったらキレられそうだから言わないけど。

と言うか、農民相手に学校内で権威振り翳してもねぇ。

「はぁ...確かに三大公爵家は帝国成立時に国内を取りまとめた伝統的な家柄ですが、ライトヴィヒ侯爵家より家格下ですし、そもそも自分は農民なのでただの一クラスメイトとしてしか扱えませんよ」

あ、言った。

それにしても2ヶ月でよく勉強したねぇ。

「へぇ、どんな事情があらせられてキシールなどと言う俗な名前を用い身分を詐称してるのかは存じませんが、侯爵殿があくまで農民であると言うのであれば今後農民相手としての対応をさせて頂きますがよろしくって?」

よろしくっても何も、そいつは農民だ。

農民相手に農民として扱うぞ!として脅しても、はあそうですかとしかならんのである。

「はあ、好きにしたらいいのではないですかね」

よってキシールも呆れ顔だ。

「はぁ、それにしても本当に品格がない。品性もない。これで貴族だなんてみっともなくて言えなくても不思議はありませんわね」

そう言うと、シルヴィアは大きく高笑いをする。

「戦ばかりしてると知能も下がってしまうのでしょうかね?」

また煽る。

そいつ筆記試験満点だぞ。

と言うか俺も2年ぐらい政務官やって、一応担当地の家格一個あげるくらいには成果出してるんだけどね?

全く情報収集が足りないよほんと。

「うん、品性と性根が捻じ曲がったどうしようもないゴミだよな!あはは!」

グシード、さりげなく俺を攻撃するな。

俺の不満気な表情を察したのか、セシルが

「でもこれ、助け舟を出さないでニヤニヤしてるルーサが一番悪いと思いますよ?」

とジャブを打ってくる。

「いや、情報収集もせずに筆記満点のキシールを知能で煽ってるあいつの方がよっぽど悲惨だと思うぞ」

嘘偽りのない本音である。

シルヴィアは、そう軽口を叩いている俺らをキッと睨みつけると、キシールに向かって

「あなたのような戦バカに群がる人間は、やはり下劣な人間しか集まりませんのね。これでは品格などいつになったら着くことやら。お可哀想ですわぁ」

と更に煽り立てる。

が、キシールくんはお構いなし。

ため息ひとつで収めやがったよこいつ。

まあ特に何かが起こりそうもないし、そろそろ帰ろうとしたところ、キシールに呼び止められた。

「ルーサリウス様、いい加減なんとか助けてくれません?」

こいつも可哀想に。

まあ面白いからほっとくんだけどね。

するとシルヴィアがニマニマとした笑いを浮かべながら言う。

「あら、アレがルーサリウス様?人相が酷いですわ!そもそも10席の方などに影武者が務まるとでも?ああ!ルーサリウス様の性根の汚らしさや品格のなさを表現しようとしたら、ここまで席次を落としませんと影武者の1人も見つからないと言うわけですわね!」

グシードが噴き出す。

お前を火だるまにしてやろうか?

よし、そうしよう。

今夜は人肉ステーキパーティーだ。

参加費?そんなケチ臭いことは言わないよ。

ただこのバカだるまを綺麗に召し上がってくだされば結構結構。

「おい」

突然、キシールが怒号をはらんだ声を上げた。

「あら?なんですの?」

これは余裕の表情だ。

多分最初から怒らせて戦いに持ち込む気満々だったな。

いつもの俺なら消し炭にされてるところだぞ。

本当に情報収集が足りないな。

いや面白いからいいんだけど。

「俺を侮辱するにはいいが、ルーサリウス様を侮辱するなど万人に等しく許されざる行為。それを直接言うとは...わかっているな?」

いや別にそんな万人のレベルまで統制しようとは思わないけどね?

「ふふ、これだから農民は沸点が低くて困りますわ。高位貴族としてはこれでは務まりませんわね。」

貴族としてはふさわしくないと言う当てつけのつもりで言ってるのだろうが、何度も言うがそいつは農民だし、そもそも最初にキシールにあしらわれてピキピキいってたのはどっちだい。

「ルーサリウス様のご温情で見逃してやろうと思ったがもう限界だ。表へ出ろ」

ほら面白くなってきた。

まあキシールが本気出してシルヴィアを殺してしまわないように一応見にいってやるか。

別に見せ物として面白そうだなとか思ってるわけじゃないぞ。

「お前本当にいい性格してるよな?」

「うーん、性根治す方法ってないか調べてみるね」

相変わらずのグシードはいいとしてセシル、お前なんか怖いぞ。

「いや、俺は寛大な心を持ってみんなを受け止めてやろうとしてだな?」

そんな軽口は、またシルヴィアに睨まれる原因を作り出す訳である。

「そうですね、では軍団戦でどうでしょう。指揮能力を見て差し上げますわ。」

シルヴィアがそう提案する。

すると、シルヴィアの周りに申し合わせたかのようにゾロゾロと手勢が集まってくる。

まずいぞこれは見せ物のつもりが演者にされてしまう。

という訳で俺は

「いや、俺達は見学します」

と、ピシッと手を上げて発言するわけだ。

「あら、お仲間にも見捨てられるとは哀れね」

シルヴィアは笑う。

一方キシールは当然だと言わんばかりの態度だ。

「俺1人で十分だ」

まあキシールを雑兵数百人で相手できる訳がないよな。知ってる。

「あなた正気?!こっちには席次上位が50人にその為も100人は用意してるのよ?」

シルヴィアの方が狼狽える。いやこうなるように仕掛けたのお前だろ。

どうせ裏で根回ししてルーサリウスに着かないように、これで力量を見定めさせて頂きますわとかやってて、仲間募ろうとしてもみんな逃げてくって寸法だろ?

いきなり何を驚いてるんだ。

と言うか1対150って嬲り殺すつもりだったのか。

すげぇ執念だな。

もしやぽっとでの俺に家格を抜かれたのがそんなに気に入らなかったのか?

「問題ないですよ。」

尚もキシールは余裕そうだ。更に

「ルーサリウス様であれば、この100倍いても余裕で捌きますよ」

なんて言って純粋な眼差しを向けてくる。

いやぁ....100倍は厳しいと思うよ?お願いだからその曇りのない眼でこの汚物を直視しないで?

シルヴィアは恐怖の表情を浮かべている。「本当にこいつ強いのかも!」と気付いたのか。漸くか。

と思ったら寧ろ勝ち誇った表情に一瞬でチェンジした。

何か秘策があるのだろうか。

「お父様言ってたわ。所詮田舎の雑兵、しかも偵察兵を独断で突出して破っただけだって。やっぱりそうね。ここに来てこの冷静さを欠いた選択。ただの過大評価をプロパガンダしただけだったようね!」

うーん...攻めてきた兵士はカスタファンの近衛第3師団含む精強だし、確かに独断突出したけど逆包囲戦の為だからね?

まあ敵が偵察部隊だったのは本当だけど、偵察部隊(5万)だから君の想像してる偵察兵とは大きな隔たりがある気がする....

それにしてもこいつの表情分かりやすいな。

俺が敵国ならこいつにスパイ送るな。

なんて残念な公爵令嬢なんでしょうか。もう可哀想になってきましたわ...

「それはあなたの目で確かめたら良いでしょう。まあルーサリウス様が出るまでもなく私が全員まとめて叩きのめしてやりますが」

キシールは久々の実戦とあってやる気満々だ。

「なら午後6時に戦闘訓練場で。ああ、途中で怖気付いたらそこのお仲間達に縋ってもよろしくってよ?本当のルーサリウス侯爵様とやらにね!オホホホホ!」

あ、ガチで侯爵家に叙任されたのが気に食わないんだな。うん。

「これでいい...のかなぁ?」

セシルの趣味には合わなそうだ。

それにしても人差し指を顎に添えての上目遣い。可愛すぎるだろ。

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