1 僕のギフト
女の子が終わるのを待っていると扉が開いて中から神官さんが出て来た。
どうやらこの扉とは別に外に繋がる扉が別室にあるらしく女の子とすれ違ったりすることは無かったのが少し残念である。
「はい、次の人こちらにきて」
「はい」
神官さんに促されるがまま僕が部屋に入ると中のソファーに座った見慣れた初老の男性がいた。
僕が部屋に入るのを確認するとソファーから立ち上がり僕が部屋に入るのを出迎えてくれる。
「坊ちゃま終わりましたかな」
「うん、何とか理解できるギフトでよかったよ」
彼はブラン。
僕の家で執事をしてくれていてもう結構いい年なのだけれど執事の後継者のいないシューベル家に長らく仕えてくれている。
シューベル家は王国で騎士爵の位をもらっている家系で代々軍の小隊長のような役割をしていて長男アランと次男アルベルトは既に軍職に付いておりギフトも剣の才能と盾の才能と近接戦闘よりの能力で仕事と相性がよかったため家の後継者として日々軍で育成されている。
長女アリアンヌは他家に嫁いで行ってしまったためもう家にはおらず、三男である僕アレストは家の最後の子供として育てられていた。
後継者もおり、貴族ながらもそこまで裕福では無いシューベル家ではもう子供を作る余裕は無いので僕はそれなりにあまやかされて育っていたようだ。
ゆえに特別剣の腕が良かったり体力があったり学問の成績が良かったりなどそっち方面の能力は全くと言っていいほど皆無である。
まあ前世の記憶が戻るまでのアレストは武道も学問も特に秀でていないが優しい性格ではあったようだし、傲慢な性格になる前に前世の記憶が戻ってよかったとだけ思っておこう。
「さ、こちらへ。アレスト・ナイト・シューベル君ですね」
神官さんに促されてソファーへと座ると神官さんが対面へと座って書類を書き始める。
「初めまして。担当神官のドレスと申します。早速ですがどのようなギフトを受け取りましたか?」
「怪我や病気を治すギフトのようです。どのくらいのことができるかはいまいちよくわかりません」
こういう回復系の能力っていまいちどのくらいの効果があるか分からない。
怪我も擦り傷を治す程度だったり、弱った体の体力を少しばかり戻すだけだったりする話はよく聞く。
ただここは教会で、その仕事の中には傷ついた人の治療や年老いた人の体力を回復させたりなどの仕事ももちろんあり、常に人手がいるので神官さんは嬉しそうに微笑んだ。
「ほほう。それはそれは行幸。ここ数年は強力なギフトに目覚める者が多く、教会からも聖女に続いてさらに聖騎士を連想させる者など教会でも確認されております。貴方のギフトも治療以外にできることがあるかもしれませんよ」
そう言われて神様の姿を思い出すと神聖な雰囲気ややけに光っていたことも思い出す。
「そういえば神様は姿ははっきりと見えなかったけどやけに白く光っていたり神聖な雰囲気があったような」
「ふむふむ。神の姿ははっきりとは見えなかったと。そして後光と神聖さですと…浄化の力もありそうですね。中々に凡庸性がありそうです」
「よかったですな坊ちゃま。優しい貴方にふさわしいギフトでしょう」
長男と次男が体育会系のようなギフトだったためか僕も似たようなギフトになると思われいたようで運動が得意では無い僕は家族からも心配されていたが全く関係の無いギフト故に逆に安心してくれるだろう。
やはり世の中には自分と相性の悪いギフトが発現する人もいるみたいだしそうした意味でも僕は幸運だったと言える。
神様ありがとう。
「しかし神様の姿ははっきりと見えませんでしたか。聖女や聖騎士といったギフトを持つ者達は皆一様に神様の姿がはっきりと見え、なおかつ能力も分かりやすかったようです。貴方の能力も分かりやすかったので先ほどの女の子と同じく……おっと失礼」
はっきりと見えないというよりは神様自体が光ってるせいで眩し過ぎて見えない感じだったんだけれど変に特別扱いされても嫌だし面倒になりそうだからこれは黙っておこう。
ここで今言ってもムキなって話を盛っているとも思われそうだしね。
しかしさっきの女の子はそんな強いギフトが発現したのか。
思わず僕に話したくなったのも分かるし将来のこの国の英雄になるかもしれないなあ。
「アレスト君、もし就職に困ったら教会はいつでも貴方を受け入れますからね」
「はははは……。ありがとうございます。それでは失礼しますね」
七歳の子供に就職の話とは気の早い神官さんの言葉に苦笑いしながら僕はブランと共に教会を後にする。
こうして僕の祝福の儀は終わった。