0 僕の神様
君は神様に会ったことがあるだろうか?
僕は何度か会ったことがあるし最近も会うことができた。
神様というか夢で合う不思議な存在を勝手に僕が神様だと思っているだけなのだけれど。
その神様は姿ははっきりとは存在して居ないのだけれどやたら白く光っていたし何だか神々しさや神聖さを感じたし一緒の空間にいるだけで癒されたので僕は神様だと思っていた。
そんな僕の夢の中に現れる神様だったので僕にとっては神様は身近な存在で、それでいて自分の中にいる存在だと僕は認識していた。
そしてそれが真実だと気付いたのは僕が二度目の七歳を迎えた日の事だ。
「汝、アレスト・ナイト・シューベルに神の祝福を!」
教会の神父様が今年七歳になる子供達を集めて魔法陣の上に立たせて一人一人に祝福の言葉を述べる。
そうすることで内なる神の目覚めを促し、体が神聖を帯びて神様からの賜り物であるこの世界の魔法【ギフト】が発現する。
その発現は強力な物から極些細な物まで千差万別で発現すると例外なく体のどこかにタトゥーのような紋章が浮かび上がる。
その右手に浮かび上がったごちゃごちゃしすぎて良く分からなくなっている光のような紋章を見ていると僕はそれをどこかで見たことがあるように感じてそして以前に夢の中で出会ったことがある神様だと認識した。
それと同時に以前の僕の生き様と死を思い出す。
「ああ、前の僕は死んだのか」
「そうとも言えますし、そうでないとも言えます。神は常に貴方の内にて貴方を見守っておられました。今は自身の身に起きたことに戸惑っていると思われますがこれからは神は内におられることなく貴方と共に貴方を導いて下さるでしょう」
思わずぽつりと出た言葉に祝福の言葉をくれた神父様が僕に諭すように述べてくれ、僕はその言葉を吟味した。
前世からの付き合いのこの神様はどうやら僕が生まれ変わってからも共に居てくれたようでこの祝福の儀で前世の記憶まで思い出させてくれた。
特に徳を積むようなことはしなかったがそれでも神様は僕に力と記憶を与えてくれた。
「今は分からなくともいずれ私の言葉が分かる日が来るでしょう。さあ、あちらへ」
「……はい。わかりました」
そのことに感激して固まっていると神父様が僕を祝福が終わった子供達の方へ誘導する。
僕の後にもまだまだ祝福を受ける子供がいるのでそれも当然だと思い、大人しく従って終わった子供達の後ろに並ぶ。
直ぐ前に居たのは長い金髪を人生に一度の特別な日におしゃれをするために三つ編みにして編み込み、綺麗なピンク色のドレスを着た女の子であった。
その女の子は不意に後ろを向き、くりくりとした赤い瞳で僕を見つめる。
「私は炎のギフトが発現したわ。君は何だったの?」
炎のような凡庸性のある物語にも登場するようなギフトが発現して嬉しかったのか少し上気した顔で尋ねてきた。
なぜ祝福を受けてから分かるのかというとギフトを発現した人は神様が教えてくれることがあるらしい。
ただしそれは映像であったり言葉であったり漠然とした印象であったりと神様それぞれみたいで力が強いほど鮮明に伝わるらしいし、中には教えてくれなかったり間違った力を教える神様もいてそのせいでギフトが上手く発動することができないなんて人もいるみたい。
僕の場合は以前に見た夢の通り神様の姿が見えるという鮮明でありながらその漠然とした印象のためかいまいち自分の能力が判断しずらかったが一つだけ確かなことがある。
「どうやら怪我や病気を治したりすることができるみたい」
「すごいね!お医者さん要らずじゃない!」
まるで自分の事のように喜んでくれる女の子に癒される。
「ねえ、君の名前なんて……」
「次の人、前に来てー」
女の子が僕の名前を聞こうとすると教会の神官さんが女の子を別室に連れて行ってしまった。
別室では子供達の保護者が待っており、どんな力を発現してどの程度の力なのか保護者同伴で確認して教会から国へと報告する仕組みになっている。
その際に後ろを振り向いてバイバイしてくれるあたり外国の子供って癒されるってすごく思いながら僕の番になるのを待つのだった。