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不適格令嬢、転生する

短編なのですが、2つにわけて書いてしまったので、そのまま投稿します。後の話はすぐに投稿します。

 気がついたら赤ちゃんになって柔らかい布団に寝かされていました。


 これはどういう状況なのかしら。


(もしかしたら)


 子供の頃に読んだ『勇者物語』に書かれていた“転生”という現象なのではないでしょうか?


 それは“前の人生の記憶を持ったまま、新しい命として生まれてくる”というものです。




 物語の中で、勇者様は『こういう時はまず落ち着いて自分と周囲を確認すべし』とおっしゃっていましたね。




 ではさっそく。部屋の状況から。


 とりあえず頭は動くようですね。回りをキョロキョロ見回してみます。


 自分を取り囲む柵が見えました。


 まさか、私、檻の中? と、ちょっとびっくりしたのですが、どうやら赤ちゃんがベッドから落ちないようにする、保護のための柵のようです。


 部屋の中に他に人はいません。


 少し変わった部屋ですわね。なんと言いますか……狭い?


 10歳の魔力検査を境にして、私の部屋は屋敷から離れに移されましたけれど、離れの質素な部屋に比べても、この部屋の方が狭いと思いますわ。


 調度も飾り付けが無く簡素。良く言えばスッキリしていますわね。私はこちらの方が好きですわ。使いやすそうですもの。


 部屋や調度品の様子からして、貴族ではなさそうです。おそらく平民。でも貧乏というわけでもなさそうですわね。布団も私が着ている物もとても肌触りが良いですし、何より私の目の前に魔道具がありますもの。


 上を見上げると、可愛らしい馬車と靴と動物? の玩具がくるくると回って、涼やかな音色を奏でています。どうやら子供をあやす目的のためだけに作られた魔道具のようですね。


 貴族ではないけれどかなり裕福な庶民?


 そういえば、私の肌の色は以前の私のものとは少し違うようです。もしかしたら、ここは王国からかなり離れた異なる文化圏に属する国なのかもしれません。




 さて、自分自身の状況確認に戻りましょう。


 体はどれくらい動かせるかな? えいっ!


 すごーい、足が目の前にきましたわ。自分の体の柔らかさに驚いてしまいます。


 なんとなく足の指をしゃぶってしまいました。ええ、間違いなく私の足ですわね。




 うんしょっ、あっ、寝返りもできました。


「アウー」


 声を出して見ましたが、おしゃべりはまだ難しいようですわ。




 最後に1番大切なことを確認しなくちゃ。


 私は目を閉じて、自分の中の魔力の流れに意識を集中させました。


(これは!)


 すぐに自分の中の力強い魔力に気づきました。まだ赤ちゃんなのに、以前の自分よりもずっと大きな魔力を感じます。







 私の前世はジュリア・ランバート。侯爵家の跡取り娘でした。


 10歳の魔力検査の時までは、ですが。




 魔力検査の結果、私は不適格として跡取りから下ろされ、妹が私の代わりになったのです。






 貴族の娘として望ましい魔法の適性は、1番に治癒回復系です。とくに適性が高ければ聖女様ですわね。


 あとは特殊系統の魔法になりますが、空間魔法、結界魔法、付与魔法などは持ち主が滅多にいないため、どこの家でも、というより国の宝として大切にされます。


 次に属性魔法と呼ばれる火、水、風、土、雷、氷、光、闇などの自然干渉系でも、属性を複数持っていたら嫁入り先に困ることはありませんし、1つでも持っていれば、婿を取り、貴族の家を継ぐ者として資格は充分だと言えるでしょう。




 私はこのどれでもありませんでした。


 私の魔法適性は、補助魔法でしたが、攻撃力や防御力を低下させる弱体化の補助魔法だけだったのです。


 補助魔法は付与魔法と違って人にしかかけられません。戦いに出向くことの無い貴族の娘には1番必要の無い魔法適性でした。


 せめて身体強化の補助魔法ならばまだ良かったのですが。




 それでも魔力量が多ければ、母として魔力の多い子供を授かる可能性が大きくなるのですが、私は魔力量にもあまり恵まれた方ではありませんでした。




 そんな私に対して、2か月違いの妹は火と風の2属性持ち。魔力も私よりずっと多かったのです。




 私の部屋は離れに移され、それまで私が使っていた部屋は妹の部屋になりました。


 人見知りの私としては多くの人の目に晒されずに済む離れの暮らしは快適だったのですが、月日が経つうちに少しずつ使用人の数が減って、離れの様子は寂しくなっていきました。


 憤慨する侍女の話では、私の部屋を離れに移したのは父で、使用人を減らしていったのは義母ははの指示だったそうです。




 義母ははは私の母という妻がすでにいる侯爵家に後から嫁いで来て第1夫人になった人です。私の母は私を生んだ時に亡くなったので、今はもう第1も第2も関係ありませんけれど。


 私の母は子爵家の娘で、父とは恋愛結婚でした。そして義母ははは国王陛下の末の妹。元王女様でした。隣国との縁談が破談になって、父と結婚することになったのです。


 10歳まで私が跡取り娘として扱われていたことに、どのような大人達の事情があったのかは、私にはわかりません。ただ、子供の私の目からも、父と義母ははとの間に夫婦としての愛情があるようには見えませんでした。


 そして義母ははの笑顔が、妹に向けられるものと私に対するものとで種類が違うものであることにも、小さい頃から気づいておりましたが……


 やめておきましょう。暗くなっている場合ではないのです。




 そういえば、転生したということはジュリア・ランバートは死んだということなのでしょうか?


 13歳のデビュタントを迎えた記憶はありませんね。最後の記憶は……ベッドで苦しんでいたような……


 私は病気で死んだのかしら? よく覚えておりませんけれど。




 まあ、前世の死因など考えてもどうしようもありません。大切なのはこれからのことです。そう、生まれ変わった私は、今度こそ魔術師になれるかもしれないのです。


 ええ、私、魔術師に憧れておりましたの。離れに移ってからも独学で頑張ったのですけれど、結果はいまひとつ。


 でも今なら魔法適性も変わっているかもしれません。たしか“転生チート”とかいうものが有るという記述を読んだことがありますわ。さっそく確認してみましょう。


 魔力検査以外でも確認する方法はあるのですよ。実際に使ってみれば良いのです。


 危険? 大丈夫。私、魔力操作にはけっこう自信がありますの。


 では、まず属性魔法から。


 うふふふふ。なんだかワクワクしてきましたわっ!






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