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となりの吸血君  作者: 姥妙 夏希
6/7

吸血君と大原奈々

「...吸血君...。」


改めて対峙をした吸血君は、何処か強張った頬で「...ごめん。」とまた呟いた。手が、ちょっぴり震える。緊張からだろうか。...それとも、別の感情からだろうか。


彼の、凍てつくような、それでいて後悔を滲ませた眼に、奈々は一瞬怯んだ。あの時の、怯えが走る。やっぱり、私はまだ、彼のこと...怖がっている。


「ごめん。」


もう一回そう呟いた彼は、奈々を見ると、「僕のせいで...奈々ちゃんを、痛い目にあわせた...から。」と途切れ途切れに言った。まるで、自分の罪を自白しているかのように、蒼ざめた顔で言う彼には、何時もの面影の欠片さえ無い。


「!?」


ふわり、と奈々の頬を撫でようとした吸血君の手から、奈々は飛び退いて逃げた。ちょっぴり、怖かった。


...やっぱり、まだ...。


「やっぱり、僕のこと、怖いよね。」


微笑んだ彼の顔。


寂しそうな眼、苦しそうな眼、置き去りにされている子供のような眼。


何で、こんなに、彼の苦しそうな顔を見ると、胸がぎゅっと掴まれるような、そんな悲しい想いになるのだろう。


何で...こんなにも、寂しそうで、小さな背中の彼を、私は愛おしいと想ってしまうのだろう。


この人に、悲しい想いをして欲しくない。この人に、寂しい想いをして欲しくない。違う、私は、君にそんなことを望んでいるわけじゃないの。


「私は...怖いのかも、しれない。」


紡ぎ出した言葉に、ピクリ、と反応する吸血君。分かっていたけれど、何かを手に入られなかった時のような、そんな表情をしている。微笑んだ彼の顔が、一瞬、哀しみの表情に変わった後、無表情になった。


「でも...、でも、そんな感情よりも。」


貴方が悲しい顔をすると、貴方が悲しい想いをすると、私も悲しくなる。

貴方が嬉しい顔をすると、貴方が嬉しい想いをすると、私も嬉しくなる。


そう思えるぐらい、貴方は、私の心の中で、大きな存在に変わっていたんだ。


最初は、お互い小さな、只の好奇心からだったかもね。


でも、私は、貴方がいたから、ちょっとずつ、毎日が楽しくなるのを感じた。暗記とか、勉強とか、友達とか、そんな枠さえも超えて、時に常識さえも逸脱して、私の心に入ってくるような、今まで私の周りにいなかったような、そんなタイプ。


だから。


私は、吸血君と、もっともっと色んなことを、体験してみたいの。


「君の悲しい顔を見る度、悲しくなったりするの。だから、私は君が悲しいままなんて、嫌だ。」

「...僕は、悲しくなる資格なんて無いんだ。」

「あるっっっっっ!!」


驚いた顔が目に映る。あはは、私らしくは無いかも知れない。


でも、これが精一杯なんだから。私、君と出逢ってから、君が血を吸うようになってから、どんどん感情が豊かになっちゃったんだからね!


本当、君のせいだよ!!!


「私、吸血君のせいで、私まで悲しくなっちゃうようになったんだよ!どう責任取ってくれんの!?」

「でも...」

「良いから!!!」


君が、私の心の境界線まで、超えてきたんだから、今度は私の番でしょ?

私だって、境界線を超えるぐらい出来るんだから!


「さっさと!何時もの吸血君に戻りなさいよォー!!」

「...それでこそ、奈々ちゃんだね。」


ちょっと微笑んだ彼が、一瞬頬が緩んだ気がした。彼が、口を開いて続ける。


「僕、でもまた暴走するかも知れないよ?」

「構わないもの、私今度からは対処できるしね。」


「血を吸いたくなるかもよ?」

「ええ、どんと来なさいよ。逆に搾り取ってやるわ。」


「口接触、あるかもよ?」

「いいじゃない、別に、そんなもので一喜一憂などしな」


眼が、暗くなって、何かが覆い被さっているような、そんな感じがした。


ゆっくりと時が進む中、ぼんやりと、口当たりが柔らかい、何かに包まれているような、それでいて口内に何か、ぬるぬるしたものがあるような感じもする。何となく、安心して、気持ちいい。


やがて、それが離れると、眼の前にいた吸血君が、にっこりと微笑んで笑っていた。


「じゃあ、僕、何回もしちゃうかもだけど、良い?」

「な、な、なッ...!?」


ふるふると震える奈々の代わりに、ふわりと優しく微笑んだ彼の顔は、どんどん大きくなっていく。


「皆も、こっちに来なよ!」


皆?


カラリ、と扉が開いた先には、赤らめた顔をしている皆が。美琴ちゃんが、赤面した顔で続ける。


「ごめっ...、覗くつもりはなかったのだけど、つい。」

「その、二人がすごくイチャついていたので...!」

「あ、アダルティな会話をしてたからさ...。」


皆が、赤面した顔でそう叫んだり、笑ったり、言ったりする。吸血君が、にこりと笑うと、「気持ち良かった?」と口パクで言った。


ぶちっ。


「こんの、エロ吸血鬼〜〜〜!!!!!」


ありったけの大声で、奈々はそう叫んだ。




***




となりの席にいる小日向君は、成績優秀、社交的で素敵な男の子だ。

これが少なくとも、席替えをした最初の日に感じた彼の印象だった。


今は...。


私にとって...、何かを変えてくれた、愛しい恋人だ。

遅くなってごめんなさい〜!


本編は、これで終わりです!番外編...は2、3話位の予定です。


読んで下さり、ありがとう御座いました!!!

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