出会い
10年前のある日。
少年は、初めて恋をした。
『お前も社会勉強として、今夜のジュナイル王国主催の舞踏会に出席しておきなさい』
『はい、父様』
正直、舞踏会なんて全く興味がなかった。
父親に言われるがまま、ついて来ただけ。
こっそりと会場を抜け出し、外を散歩する。
少し歩くと、色とりどりの花が咲き乱れる花壇に辿り着いた。
「こんな所に花壇なんかあったのか…」
自分の国では見られない、美しい花がたくさんあったため、少年はしばらく見入っていた。
「フーン、フン♩」
すぐ近くで鼻唄が聞こえてきた。
(誰かいるのか?)
茂みに隠れて覗いてみれば、そこには自分より少し年下の、可憐な少女がいた。
(あ…)
花に囲まれて微笑む少女に、しばし見とれていた。
『あなたはだあれ?』
知らないうちに気づかれていたらしく、はっとして少女を見る。
『おっおれは!
世界の王になる男、ガルだ!!』
つい大きな発言をしてしまった。
引かれたかもしれない…
しかし少女は―
『まあ素敵ね!私はサラよ、よろしくね』
柔らかく微笑んで返してくれた。
その笑顔が、あまりにも眩しくて……
―――――――トクン
その瞬間、彼の目には少女以外映らなくなった。
『いけない!ユーリに怒られちゃうからもう戻るわね!また会いましょう!』
少女は風のように去っていった。
『サラ・・・か』
花のように可憐な名前を残して。