その日もたくさん殺していたんだと思う。
その日もたくさん殺していたんだと思う。その時期の記憶はひどく曖昧だ。思い出して、暫くもたってないから当然かもしれない。
突然、芯が震えるような魔物が現れたんだ。
そいつは魔神を名乗った。
俺はそいつと戦った。仕掛けてきたのはあっちだ。おれは応戦しただけ。
だが、勝てなかった。相手が強すぎた。
俺がいつか鎧骸骨から奪った鎧と槍はすぐにボロボロになったし、一分間につき3回は殺されていた。
だが、俺は死ななかった。時空転生という最低なスキルがあったから。
相手に疲れが見えたその時、俺は相手の武器を奪った。
日本刀のような形で怪しいオーラを放っていたそれが、俺の恐怖の源泉だったからだ。
無理やり奪って、遠くに投げようとした。
でも投げれなかった。
その刀は薄い黒の光を放ち、俺に大量の魔力を放ったんだ。
俺の体は変質していった。
人間の柔らかさは消え、異常な力、速さ、硬さを手に入れた。
こうなれば敵を倒すのは簡単だった。
次の瞬間には倒していたよ。
そのあと、何度か死んだ。
だが、数は激減した。数十年に一度くらいだ。
俺は今まで、毎日死んでいた。
そこから、この数になったのは以上かもしれない。
だが、ちゃんと理由があってのことだ。
俺は、人格を奪われていたんだ。
俺は死ぬたびに、段々と自分が自分でない時間があることを自覚し始めた。
ただ淡々と魔物を殺し続ける俺がいることに気が付いたのだ。
それに俺は恐怖した。唯一俺に残された人格までも奪われる恐怖は俺と同じように異世界に独りぼっちで知り合いもできない場所で400年生きたものしかわからないだろう。
俺は死んだ後にその時間が来ていることに気が付いた。
そして、段々その時間が長くなっていることにも。
俺は人格を奪われないために必死で生きようとした。
そのかいあって、残りの100年間、おれは2回しか死ななかった。