次の仕事探し
「ていへんだ。明智がスーパーやめちまった」
「やはり無理があったか」
「次の仕事を探さなきゃならないわね」
「仕事探しなんてやめやめ。生活保護受けろ。なーお」
「けっ。犬畜生はお気楽なもんだぜ」
「次の仕事のあてはあるのかしら」
「わしらもそろそろ本腰を入れて、彼に向いた仕事を探さねばならぬであろう」
明智はというと、ベッドに寝ころんで呑気に求人誌を眺めている。
彼の考えでは、採用されやすい営業職を狙っているようだ。
「物を売る仕事は向かないって、前職で懲りたんじゃねえのかよ」
「まったく浅はかな奴だ」
「でも、本当に営業ってダメなのかしら。もしかしたら意外な才能が眠っているかもよ」
「そんな物はない。なーご」
「飛び込み営業をする勇気はないから電話営業をしようか」
流石に自分をわかっているのか、少し難易度を下げた。
それでも営業は難しいことには変わりない。
何せ、当人がさしあたって必要としないものを売り込もうという仕事だからだ。
電話が鳴った。
明智の友人、松田済からだった。
「どうしてるかなって」
「へへへ、スーパーやめちゃった」
「またか、続かないなおめーはよ」
「精神衛生上、とても気分が楽」
「次探さないとニートもきついぞ」
「んでさ、電話営業はどうかとおもってるんだけど」
「やめとけ、ノルマきついぞ」
「そうか、ノルマか」
「お前、勧誘で一件でも取った経験あるのか」
過去を思い返してみる。一件もなかった。
「ないよ」
「ほらみろ」
「電話で営業じゃない仕事はないかな」
「あるかな……。そうだな、マーケティングはどうだ? 」
「何それ」
「商品の性能についてアンケートを取るだけの仕事だ。物を売り込まなくていいから、その分精神的に楽だぜ」
「そうか考えてみるわ」
「急げよ、さもないとニートになっちまうぞ」
明智は電話を切ると、マーケティングについて探し始めた。
「マーケティングってなんだ」
背後霊の清太郎が周囲に聞いてみた。
「わしにもわからぬ」
守護霊の利長もうろたえている。どうやら守護霊たちには見当もつかないらしい。
「江戸時代にない職業が多くてまいっちまうぜ。おせん、お前は知らないか」
「たぶん、商品の評判を尋ねまくるってことじゃないかしら」
「ふうん。そんなのが仕事になるもんかねえ。現代ってよくわからねえな」
「今度こそは長続きするだろうか」
「わかんねぇ。明智次第だろっ」