4.夢見るスライム少女
ティエラのスラ友となった白髪少女のライラ。
そろそろお昼時ということもあって、より深くスライムについての魅力を解説するついでにと、ティエラは昼食をご馳走してもらえることになった。
食事がついでの扱いを受けることに疑問を抱いたティエラだったが、ライラにとって三度の飯と三時のおやつより、スライムと過ごす時間やその魅力について頭を満たす方が重要らしい。
ティエラより一つ年下のライラは、ティエラに比べて体格が一回り小さく、身体のラインもまだ子供らしさが抜けていない。
ティエラの場合、王家お抱えの鍛治職人が作った特注の鎧が彼女の恵まれたスタイルをより引き立てる役割を充分に果たしていた。
細く長い手脚に、キュッとくびれた腰。
そして十六の娘として文句のない大きさの乳房が、無機質な金属鎧の上からでもよくわかる。
誰がどう見ても、麗しい美少女剣士だと賞賛することだろう。
ライラが泊まっているという宿の食堂へ向かっている今この時も、擦れ違う村人達──特に男性──が振り返るほどだ。
それに薄々気付き始めたライラは、不満そうに唇を尖らせた。
「……美人は人生楽しそうで良いわよね」
「何か言った? ライラ」
「別に、何でもないわよっ!」
──わたしより一個年上ってだけなのに、何でこんなに差があるのよー!
むぎゅーっと、ライラの胸元で潰れる緑色のぷにぷにスライム。
ライラが欲しくてたまらないぷにぷにが、ティエラのそこにはあった。
「それなら良いのだけれど……。ライムが可哀想なことになっているのは、放っておいて良いのかしら」
「だってだって、ライムちゃんをむぎゅりたくてたまらないんだもの! いいわよねー、ライムちゃーん?」
洋梨のように変形したライムは、曖昧な形状の口元に小さく笑みを浮かべた。
「やっぱりライムちゃんはわたしの永遠の味方よねー! むっふふふ!」
思いっきりライムに頬擦りするライラ。
そんな彼女にも、村人からの視線が注がれていた。
ライラの奇行に目を奪われているのもあるにはあるのだが、そんなライラも、人目を引くかなりの美貌の持ち主だったからだ。
絹糸のような光沢を放つ、ウェーブした艶やかな白髪。
澄んだ冬の空のような瞳と、長い睫毛。
群青と白の布、そしてフリルをたっぷりとあしらったローブと、修道女を思わせる清楚なベールは、彼女に神秘的な印象を抱かせる。
首から下の起伏はほとんど無いが、まだまだ成長が見込める年齢でもある。
ライラが立派な大人の女性になる頃には、性格の子供っぽさも多少は抜けて、胸部のスライムも肥大化していることだろう。
──こういうぷにっと、ばいーんとしたボリュームが欲しいもんだわ!
スライム肥大化を夢見て、毎晩睡眠をたっぷりとるのが彼女の習慣だ。
「ライラ、あれが例の宿屋かしら?」
「あ、そ、そうよ! たっぷりスライムトークをしながら優雅なランチタイムと洒落込みましょ!」
「洒落込む……」
「まあ、ド田舎の漁村だからお魚料理ばっかりなんだけどねっ」
思考がすっかり胸部のスライムに気を取られていたが、ティエラの言葉で我に返った。
ライラは愛しそうにライムを抱きかかえたまま、慣れた様子で扉を開けた。