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王女は死神となりて  作者: 由岐
第4章 桜の国への誘い
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6.違和感と謎

 ティエラ達が部屋を出た後、ロディオスはぽつりと呟いた。


「……途中から狸寝入りしていただろう、フェリヴィア?」


 ソファに仰向けに寝かされていたフェリヴィアが、小さく笑う。


「あらあら、ロディオス様にはバレバレだったのですね」

「全く……」

「ごめんなさい」


 溜め息を吐いたロディオスは、起き上がったフェリヴィアに苦笑しながら、向かいのソファに腰を下ろした。


「……やはり、寂しいものだな」

「この話を提案したのは、ロディオス様ご自身でしたでしょう? 確かに気絶でもして、起きた時にはあれは全て夢だったのだと思いたいほど辛く寂しいことですけれど……」

「それで本当に気絶するのがお前らしいな」

「ふふっ……それだけ愛が重いんですのよ」


 そう言って、フェリヴィアは窓の外に目をやった。

 それに釣られて、ロディオスも晴れ渡ったイリータの街並みを眺めた。


「……何だか、あの子がどこか遠くへ行ってしまいそうですわ」

「事実、ティエラは桜樹への旅支度をしているではないか」

「いいえ、そういう意味ではありませんの。あの子──ティエラとの心の距離が、以前より離れた場所にあるように感じてしまって……」


 曇るフェリヴィアの美貌に、ロディオスは彼女と同じ感覚を共有していた。

 無事と言って良いのかわからないが、ティエラと再会してから、二人は彼女に何か暗いものを感じることが何度かあったからだ。

 ロディオスが偶然廊下で見掛けた際、遠い空──嶺禅国の方角を睨むティエラを見た。一年前にあんな事件があったのだから、あの国に嫌な感情を抱いて当然ではある。

 しかし、それにしても彼女から感じる激しい気迫と、微かに漏れ出る殺気は、今までティエラから感じたことのない域のものだったのだ。

 ──それに、最も不可解な事がある。あの夜、ティエラの亡骸が消えたのは何故だったんだ……?

 冷たくなっていく妹の身体。

 美しい煌きを失う瞳。

 そしてふと気付いた時にはその場から消えていた、ティエラの遺体。


 当時、すぐに逃げ去った死神の協力者の手によって嶺禅国に渡ってしまったのでは──そう考えていたロディオス達だったのだが。

 ──死神はティエラが絶命したと錯覚させ、私達を騙していたというのだろうか? そして、何らかの手段でティエラは敵の元から脱出を……?

 ティエラが帰還してから、フェリヴィアや双子達と話し合った。今のように一人で思考を巡らせもした。

 だが、それでも確信が持てる答えは出て来ない。

 彼女とここまでやって来たライラにも、ロディオスは話を聞いていた。

 ティエラはこの街に紅薔薇騎士団が来ていることも、敵国がより強大になったことも知らなかったと言っていた。

 この大陸での大戦であれば、例えレデュエータ国内に居らずとも大まかな情報は得られるはずなのだ。まるで、ティエラの時があの夜から止められていたかのようだとロディオスは思う。


「神様……どうか、あの子を護ってあげて下さい……。もう、あんな辛い思いをしないで済むように……」


 ──この一年、お前はどこでどうしていたというのだ……ティエラ……!


 そして、ロディオスもフェリヴィアと同じく、妹の旅の安全とこれからの幸せを強く願うのだった。



 

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