交渉
「ジョーカーさん、準備出来たっすか?」
「ああ」
「じゃあ、早速出発するっすよ」
「ちょっと待て、拠点をどこに置くか決めてないだろ?」
これから砦を攻めに行くんだ。ただ攻めるだけじゃ効率が悪い。
「でも今から行く場所の砦の近くには人間の街しか無いっすよ?」
「それでいいだろ」
「ん?どういう意味っすか?」
「その街を拠点にして砦に攻め入れば良いんだよ」
「街の人達はどうするんっすか?」
「それは俺に任せておけ」
「分かりましたっす、では行くっすよ」
俺たちはその砦……確か小国ディノニス……だったか、が保有する砦の近くの街に向かった。
「お前らは待機していろ、俺が街に話をつける」
「了解っす」
「だが、もし奴らが抵抗する気満々なら……ここの連中皆殺しにしてでもこの街を手に入れる」
「失敗したならそのまま砦に攻め入れば良いのでは?かならず必要というわけでは無さそうですし」
「甘いな、ランティス、出来るだけ戦いを避ける考えは悪くないが……魔族がこれからこの世界を支配するんだ……それに反抗する奴らは必要ないんだよ」
自分でもかなり外道な考えって事は理解しているがクズな人間なら……いや、クズならどんな種族でも消した方がいいだろう。
「ま、あくまで人間共の反応次第だ、もしもの時にそなえて街を包囲しておけ」
「……ジョーカーさんって本当に人間っすか?」
「元人間だ、今は魔族だろ?」
「まあいいっす、一応部隊は展開させておくっす」
「ああ、ランティスは俺と来い」
「了解しました」
俺とランティスは街の門へと近付いて行く。ちなみに城塞都市だ。
何か暇そうにしてる門番が俺たちに気づいて話しかけて来る。
「何だ?旅び……ハッ!魔族!?」
そしてランティスを連れてきた理由は魔族が来た事を伝えるためだ。俺だけだとただの人間に思われる可能性があるからな。
「そうだ、ここを臨時の拠点としたい……施設を開放しろ」
「お、おれたちが魔族の言う事なんか聞くとでも……」
「ならここの連中皆殺しにしてでも街を手に入れるが?そもそもお前に決定権は無いだろうが」
「グッ……」
まあ、門番への脅しはこれくらいで良いだろう。
「ランティス、この街の領主に説得しに行くぞ」
「どこに居るか分かるのですか?」
「何、転移であそこに見える豪華そうな家に入れば十中八九いるだろ」
「……了解です」
というわけで俺たちはその家へ向かって転移をした。
「おわっ!何者だ!?」
「この街の領主だな?」
「そうだが貴様らは……魔族!?」
「単刀直入に言う、この街の施設を開放しろ……じゃなきゃ、この街の連中は皆殺しだ」
「近くには砦がある!援軍を呼べば貴様らなんぞ……」
反抗する気満々だな、殺すか?
いや、もっと脅しを掛けておくか。
「空を見てみろ」
「あ?……なんだ!?」
領主が驚いている……街の人も驚いているだろうな……。
なぜなら俺がこの街の上空に巨大な魔法陣を出現させたからな。
「俺の魔法を使えばここに居る全ての人間を殺す事が出来る、援軍など間に合わんと思うが?」
「魔族ごときが……図に……」
……どうやらここの領主は人間至上主義なようだ……仕方ない。
「もっと自分の命を大切に扱うべきだったな」
「は?何をい……っ!?」
俺は魔剣を能力で暴食形態に変え、領主に向ける。
「恨むんなら無謀にも俺に逆らった自分を恨むんだな」
「ギャアアアアアアアアアアッ!!」
俺は剣にこのクズを喰わせた。
「ジョーカー様、街をどうするんです……?」
「街に直接聞くしかあるまい」
例えば広場に行って脅すとか。
「方法ならいろい……ん?」
そこで目にしたのはとある魔法具。
確か魔王城にもあったな。俺が四天王になった時魔王が宣言する為使ったものだ。
「ランティス、この魔法具、使い方は知っているな?」
「なるほど、これを使うんですね……もちろん、知っていますよ」
俺たちは魔法具の準備をした。
「これで準備は完了です……この水晶に魔力を」
「ああ」
俺は水晶に魔力を込める。
外を確認すると窓際に設置した別の水晶からプロジェクターのように光が出て、空に俺の立体映像が映し出される。ちなみに他に街の様子を見れる水晶も置いてある。ここで街の人たちの反応もチェックできる。
便利な魔道具だ。さて、そろそろ始めるか。
「街の人々よ!聞くがいい!」
「なんだ?」
「さっきの魔法陣と何か関係があるのか?」
街がざわつき始めてるな。まあそんな事は問題ではない。
「この街は我々魔族が統治する事になった!」
「なんだって!?」
「領主様はどうしたんだ!」
「フッ…領主はもうこの世には居ない」
さらに民衆がざわつく。まあ、当初は領主を殺すなんて予定してなかったけどさ。
「もしお前らが反抗的な態度をとる気なら……全員皆殺しだ」
「なっ……!」
「空の魔法陣が見えるか?俺がやろうと思えばお前らの命なんぞ簡単に狩り取れるからな……!」
この脅しが効けばいいがな。
「従うしかないのか……」
「そんな…あっさりと……」
よし、いけそうだ。
さらに成功率を高めるため交換条件的なものを出しておこう。
「我々魔族を受け入れてくれるなら、お前らには何もしない、それに生活は保障される」
「……信じられる……のか?」
「分かった……受け入れよう」
誰だか分からんが一人がそう言った瞬間街の人達も受け入れる事を決めたようだ。
「フッ……賢明な判断だ」
俺は魔法具を止める。
「上手く行きましたね」
「ああ、これでこの街は魔族の手に落ちた……ついでだがな」
「そうですね、本命は砦です」
まあ、これで作戦の成功確率は上がって来るだろう。
あ、そうだ。
「ランティス、ジャックたちに伝えておけ……下手に街の人達を刺激するんじゃないと」
「わかりました」
確かに皆殺しも止むを得ないと言ったが無駄な戦いはやはり避けるべきだからな。
まあ、ジャックの部隊がどんな奴らか把握しきってはいないが、大丈夫だろう。
……ボーギャン隊の奴らが居なくて良かったな。話によるとそいつらは無駄に気性が荒かったらしいからな。この前のクーデターで魔族の膿を取り除けたとか皮肉だな。
ってランティスは元々ボーギャンの部下だったか。まあっこいつは例外だろう。
「いやあ、まさか街を占領するとは……流石っす」
「しかし上空に魔法陣が出現したときは説得に失敗したかと思いました」
クインティーがそう思うのも無理は無いか。まあ、脅すためだったとはいえやろうと思えばいつでも殺せたからな。
「確かに冷や冷やしたっすよ」
「ただの脅しだ、まあそう見えなくもないが」
「しかし魔王様へ良い土産話ができたっすね?」
まあ、確かにそうだな。なんたって魔族の領地が増えたようなもんだからな。
「ニヤニヤ」
「おい何ニヤニヤしている!?」
「いえいえ、おれから見てもジョーカーさんと魔王様はベストカップルっすよ」
「それ、メイに言ったらどう反応すると思う?」
「魔王様の頭から煙が出るっすね」
分かってるじゃないか……。
「まあ今はメイの事はいいだろう、一応酒場も解放されてるはずだ」
「一応宴会でも開くんっすか?」
「そのつもりだがどうするよ?」
「砦を落としてからの方がよくないっすか?」
やっぱりそう思うか?しかし今宴会を開く事によって兵士の士気が高まる気もするんだよなあ。
「景気付けにはいいかと思ったんだがな?」
「なるほど……でもおれは全部終わってからの方が良い気がするっす」
ジャック……チャラ男だと思っていたが意外と真面目だな?
「……クインティーが近くに居るからって真面目な好青年を演じてるわけじゃないだろうな?」
「な、なんでバレてるんっすかあ!?」
「マジかよ、適当に言っただけなんだが当たっちまったよ」
さて、クインティーの反応はっと……。
「ジャック様……別に貴方の好きにしていいと思いますよ?」
真面目そうなクインティーにしては珍しいと思うが……いつもああなのか?
「おお、クインティー、良いのか?」
「ジョーカー様も仰っていたでしょう?景気付けと……これで兵士の士気は上がるでしょう、わたしは参加しませんが」
どうやら普通に真面目の様だ。いや、人間恐怖症なんだっけ?
「まあ、クインティーには後で食べ物を持って行くっす……というわけでジョーカーさん、やるっす、今すぐやるっすよ!」
やはりバカ騒ぎが好きなチャラ男だったか。
「提案した俺が言うのもなんだが羽目を外し過ぎるなよ?明日は砦に攻め入るんだからさ」
「分かってるっすよー!」
大丈夫かよ……。
とりあえず景気付けに宴会を開く事にはした。




